🌪12¦─2─中国軍の尖閣諸島侵攻から始まる台湾有事。その時、日本は、自衛隊は。~No.61 

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 日本国内には、台湾有事や尖閣諸島有事であれ、如何なる理由があったとしてもアメリカ軍に協力して中国軍と戦争をする事に反対する日本人が存在する。
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 日本の国土を守るのは、日本人であってアメリカ人青年ではない。
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 2021年4月21日 MicrosoftNews JBpress「中国の尖閣諸島侵攻から始まる台湾有事
 織田 邦男
 © JBpress 提供 米第7艦隊強襲揚陸艦から離陸するオスプレイ(4月17日太平洋上で、米海軍のサイトより)
 菅義偉内閣総理大臣は3月16日(日本時間17日)、ホワイトハウスジョセフ・バイデン米国大統領と日米首脳会談を行い、共同声明を発出した。
 共同声明の重要なポイントは、覇権主義的な動向を強める中国に、共同して対抗する姿勢を強く打ち出したことである。
 中でも「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことは時宜を得ている。台湾海峡有事は差し迫った危機なのである。
 3月9日、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官は、上院軍事委員会公聴会で、今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言した。
 23日には、次期米インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官は同じく公聴会で、中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、「大半の人が考えているよりもはるかに切迫している」と述べた。
 なぜ今、台湾海峡有事なのか。
 本気の中国、他人事の日本
 これについては、拙稿「北京五輪後に台湾侵攻狙う中国、ソチ五輪後にクリミア併合の二の舞を避けよ」(3月12日掲載、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64426)に書いたのでここでは省略する。
 いずれにしろ共同声明で「威圧の行使を含む国際秩序に合致しない中国の行動について、懸念を共有した」と中国を名指し、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した意味は大きい。
 中国は即座に反応した。
 共同声明に対し「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、「中国の懸念に厳粛に対応し、直ちに中国内政への干渉をやめるよう求める」とする中国外務省報道官談話を発表した。
 加えて「あらゆる必要な措置を取り、国家主権、安全、発展の利益を断固として守る」と報復をも示唆している。
 台湾海峡危機を未然に防止するには、バイデン政権が戦争をも辞さず台湾を守るという覚悟を示す必要があり、今後のバイデン政権の対中姿勢次第であると拙稿にも書いた。今回、日米で台湾海峡有事に言及し、中国に対し力強く牽制したことは、北東アジア情勢の安定にも寄与するに違いない。
 問題は、この共同声明に基づく今後の具体的行動である。日本の政界の反応、メディアの報道ぶりを見ると、台湾海峡有事に対し、どこか他人事のように感ずるのは筆者だけだろうか。
 ピントが外れ、リアリティーが欠如しているとしか思えない報道も多い。軍事的知識の欠如や想像力の貧弱さから来ているのかもしれないが、今後の対応が懸念される。
 日本は「巻き込まれる」のではない
 台湾海峡有事に対する日本人の一般的認識は、中国が台湾に武力侵攻すれば、米軍が参戦し、日本が米軍を支援する。こういう単純な構図である。
 簡単に言えば、米軍の実施する戦争に日本がどう支援するかだと思っているようだ。
 従って、またぞろ日本が米国の戦争に「巻き込まれる」といったデジャブ的報道を垂れ流すメディアもみられる。
 良識的な新聞でも、「重要影響事態」「存立危機事態」など真剣に論評を加えるが、基本的には米軍が実施する戦争を日本が支援するという構図に変わりはない。
 だが、これは大きな誤りである。
 台湾海峡有事は、すなわち日本の有事である。それは米軍の参戦有無には関係がない。
 台湾侵攻作戦の戦闘エリアには、沖縄を含む日本の南西諸島が含まれる。否が応でも日本は戦争に巻き込まれる。
 作戦は尖閣奪取から始まり、日本の初動対応いかんによっては、沖縄の米軍が後方に下がる可能性がある。
 台湾攻略に中国が最も留意することは、可能な限り米軍を参戦させないことである。
 米軍が本気になれば、今でも中国は敵わない。だが米軍が初動で参戦できない状況を作為する、つまり米軍が参戦する暇もなく既成事実を作ってしまえば、後からの参戦は非常に難しい。
 ロシアのクリミア半島併合を見れば分かる。
 他方、沖縄の米空軍戦力が存在している限り、台湾周辺の制空権獲得は難しい。制空権のない現代戦に勝利はない。
 逆に言えば、制空権がとれない限り、中国の台湾侵攻はないだろう。中国は何としても、初動で沖縄の米空軍戦力の無力化を図っておきたい。
 尖閣に地対空ミサイル設置を狙う中国
 米軍とのガチンコ勝負を避け、可能な限り流血の事態を回避しつつ、台湾周辺の制空権をとる作戦はあるか。当然、中国はこれを模索しているはずである。
 考えられるシナリオは、平時の内に海警を使って、尖閣に地対空ミサイル「S-400」を搬入し、尖閣で稼働させるという作戦である。
 S-400は、ロシア連邦で開発された同時多目標交戦能力を持つ超長距離地対空ミサイルシステムである。
 © JBpress 提供 ロシアで開発された超長距離地対空ミサイルシステムS-400のTEL車両(出所:Wikipedia
 空自が保有する地対空ミサイル「PAC3」の2倍の射程を有し、400キロ先の6つの目標に対する同時撃墜能力を有している。
 ステルス機に対する能力も高く、極超音速ミサイルや弾道ミサイルにも対処可能とされ、中国は2014年から導入を開始し、現在実戦配備されている。
 現存する最強の地対空ミサイルといえる。NATO北大西洋条約機構)の一員でもあるトルコが導入を決め、米国のドナルド・トランプ前大統領が激怒して制裁を発動したのもこのミサイルシステムである。
 尖閣から沖縄本島まで約400キロ、台湾までが約170キロである。尖閣久場島はなだらかな丘陵地形であり、山もなく地対空ミサイル配備の好適地である。無人島であるから流血なく確保できる。
 久場島にS-400が配備され、いったん稼働されれば、台湾、沖縄はその射程圏内に入る。嘉手納基地、那覇基地からの軍用機の活動は大きく制約される。
 これを無力化しない限り、嘉手納の米空軍は三沢かグアムに後退せざるをえなくなる。
 台湾侵攻も始まっていない平時であれば、日本が対応しない限り、米軍はこれを破壊するのは困難であろう。
 だが台湾への侵攻作戦が始まった途端、S-400の威力が発揮され、米空軍は、尖閣、台湾に接近することさえ難しくなる。
「平時のうちに尖閣奪取」が号砲
 尖閣諸島は台湾侵攻のために欠かせない戦略的要地である。台湾侵攻の作戦準備として、平時の内に中国軍は尖閣を取りに来るだろう。
 尖閣と台湾は、政治的には切り離せても、安全保障上は切り離すことはできないのだ。
 平時に、海警を使って作戦準備を整えるというところが肝である。
 海警はコーストガードではあるが、中央軍事委員会に直属する武装警察の隷下にあり、海軍と同じ指揮系統で動ける第2の海軍である。2月1日の海警法改正により、自衛行動がとれ、武力行使もできるようになった。
 台湾侵攻の作戦準備活動として、平時に海警がS-400を搬入するのを日本は阻止できるのか。阻止できなければ日米同盟は地に堕ちる可能性がある。
 海警が平時に作戦準備に使われる場合、日本の対応は非常に難しい。海警の行動が純粋な警察活動か、軍事活動か判断できない上に、仮にS-400の搬入だと分かったとしても、これを阻止する法的根拠(任務、権限)がないからだ。
 海保はいつものように領海侵犯として対応し、現在と同じように無線と電光掲示板による警告だけが関の山であろう。
 仮に海上自衛隊海上警備行動が下令されても基本的には海保と法的権限は同じであり、海保以上のことはできない。S-400を破壊することはもちろん、没収も調査さえすることもできない。
 では「明白な危機が切迫している」として「武力攻撃事態」を認定し、防衛出動を下令して自衛隊にこれを破壊させればどうか。
 国会で最優先に議論すべき内容
 法律的には可能であるが、今の日本では小田原評定が続き、「認定行為」自体が政治的に難しいことが予想される。
 中国が海軍を出動させていない段階で、そして物理的な武力攻撃を受けてもいない時点で、自衛隊に流血を伴う武力行使をさせる。政府にその腹はあるか――。
 今回の共同声明を受け、こういったことこそ、国会で堂々と議論してもらいたい。
 巷間言われているように、中国の台湾武力侵攻には、米軍が参戦し、日本は「重要影響事態」か「存立危機事態」を認定して、米軍を支援する。ことはこんな単純な話ではないのである。
「台湾有事が起これば、日本は集団的自衛権の行使も含めて対応を検討する。ただ、米軍が介入する本格的な戦争になれば、中国軍は在日米軍基地や南西諸島も標的にするとみられる。政府高官は『日本有事を意味するので武力攻撃事態と認定し防衛出動することになるだろう』と語る」と某保守メディアでもこうだ。
 こんなシナリオは軍事的にはあり得ない。
 中国もバカではない。核戦争を覚悟してまで米軍とガチンコ勝負をする蓋然性は低いだろう。現実的、合理的、かつ蓋然性の高いシナリオで議論しなければ、有事に必要な処方箋は得られない。
 我が国としては、可能な限り、事態のエスカレートを避けるため、平時にあっては海警には海保が対応し、有事は、海軍には海自が対応するのが正しい。
 海保のソフト・ハード強化が急務
 このシナリオで分かることは、作戦準備期間といったグレーゾーンにあって、海保のハード、ソフトの強化が急務であることだ。
 自民党国防議員連盟は、中国の海警法改正に危機感を抱き、海上保安庁法改正に、そして領域警備法制定に精力的に取り組んできた。
 だが結果的には、国土交通部会の反対で「必要があれば法整備も検討する」という腰砕けになった。
 大山鳴動して鼠一匹も出ないような結果となったのは、いかに台湾海峡危機が他人事であり、リアリティーと想像力が欠如している証左でもある。
 菅首相は日米首脳会談後の記者会見で「防衛力強化への決意」を表明した。これはある意味、対米公約である。
 「防衛力強化」といえば、これまでは兵器購入というハードを中心とした強化であった。だが今回はそれだけであってはならない。
 戦闘機の購入を決めても、それを手にするのは4年後である、護衛艦を購入しても部隊に配備されるのは5年後である。
 前述のように、台湾侵攻は6年以内、いやそれよりも早く起きる可能性があり、今から兵器を購入しても間に合わない。
 「防衛力強化」は台湾海峡有事を抑止するための強化でなければならない。米国が日本に求めているのは、今までのような「負担の分担」ではなく、「抑止力の分担」である。
 初動の対応が抑止の全局を左右する。その初動は日本の役割なのだ。
 「防衛力強化」とは、明日にでも起こりうる台湾海峡有事に対し、日本が初動で主体的に対応できる強化でなければならない。
 それはグレーゾーンにおける、自衛隊、海保、警察の有機的な連携と有効な作戦活動を可能にしなければならない。そのためには、法整備と政府の覚悟、そして国民への説明が大きな比重を占める。
 危機管理の要諦は、起こりうる事態を「まさか」と捉えるのではなく、「もしかして」と捉え、最悪を想定して準備をしておくことだ。
 台湾海峡有事は、「重要影響事態」でもなければ、「存立危機事態」でもない。
 日本の有事そのものであり、グレーゾーンにおける日本の初動対応が戦争抑止の処方箋になり得ることを忘れてはならない。」
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