🏋03:─6─東京五輪、国民が支持を表明しにくい日本。~No.23No.24No.25 

   ・   ・   ・   
 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・     
 2021年6月12日09:31 MicrosoftNews BBC News「東京五輪、国民が支持を表明しにくい日本
 © BBCニュース 提供
 大井真理子BBCニュース
 東京オリンピックの開幕まで40日余りとなった。日本では中止や延期を求める人がなお多い。だが、開催を待ち望んでいる人もいる。
 「一番記憶に残るオリンピックは1984年のロス五輪。日の丸を真ん中に掲げて金メダルを首から下げ涙を流している柔道の山下泰裕選手が誇らしかった。カール・ルイス。神様のように速かった。オリンピック選手は、現実に居る『超人』だった。みんなキラキラしていた。当時、子供だった僕には、オリンピックは、『日常』を『非日常』にしてくれる『超人』たちの最高のエンタメだった。だから僕は基本的に五輪肯定派だ。何故なら素直に『超人』たちの祭典が見たいから」
 私がツイッターで受け取った東京五輪の開催を支持するメッセージの一部だ。しかし記事で引用する場合は匿名で、という依頼付きだった。そしてそのようなリクエストは一人からだけではなかった。
 「東京五輪の開催には賛成です、アスリートの皆さんに5年間の努力を存分に発揮させてあげたいと思います」とコメントをくれた人も、やはり匿名を希望した。
 なぜなのか? 理由はたいてい次のようなものだ。
 「万が一職場や関係者にご迷惑がかかってしまった場合に責任問題にもなりかねない」
 異論が許されず
 東京五輪の中止を求めるオンライン署名サイト「Change.org」の署名は42万筆を突破した。 これは同サイトの日本語版が2012年に開設されて以降で最も多い。
 ボランティアは約8万人のうち、およそ1万人が辞退。新型コロナウイルスの患者を受け入れている病院の窓には、「医療は限界 五輪やめて!」とメッセージが貼りだされた。海外選手の事前合宿の受け入れを辞退する自治体も相次いだ。
 秋までに行われる衆院選を前に、菅義偉内閣の支持率は政権発足直後と比べ半減。国際オリンピック委員会IOC)と東京都の契約上、日本政府には五輪の開催契約を解除する権利がないと気づいた時の国民のいら立ちは明らかだった。
 国内の議論は極めて感情的なものとなった。異なる意見は許されず、開催に前向きな思いをもつ人はそれを表明するのを恐れた。その影響はアスリートにも及んだ。
 白血病から復帰して競泳の東京五輪代表に内定し、多くの人に感動を与えた池江璃花子選手には、出場辞退を求める声がソーシャルメディアで寄せられた。彼女は、「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事」である反面、「それを選手個人に当てるのはとても苦しい」とツイートした。
 またBBCが取材したラグビーの中村知春選手も、「東京オリンピックパラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかってるから。 別に何も考えてない訳じゃない」とツイッターに投稿した。
 「アスリートが五輪に出たいと言えない、やってほしいという声があげられなくなっている」と言うのはジャーナリストの佐々木俊尚氏だ。健全な議論には何が必要かを論じてきた。
 妥協なき議論
 知識の暗記を中心とし、授業でディベートを行わない日本の学校教育も原因の一つとしてあげられる。それが議論の二極化と、妥協を許さない状況を招いていると佐々木氏は言う。
 海外で活躍するテニスの大坂なおみ選手や錦織圭選手、ゴルフの松山英樹選手は、コロナ禍で行われる東京五輪についての個人的見解を述べている。一方で、日本のアスリートの多くは意見を公にすることを避けてきた。その背景には、アスリートを「タレント的な無垢(むく)な存在」として見、「政治性を持たないでほしい」と望む世論があると佐々木氏は語る。
 そして日本政府は、「安全安心に開催できる」という同じフレーズを幾度も繰り返すばかりだ。
 佐々木氏は、「五輪開催に賛成の人、組織委員会自民党は攻撃されるからと、きちんと説明しなくなってしまった。説明しても無駄だろうとなってしまっている」と説明する。
 ツイッターでの発言を名前を出して紹介することを許可してくれた数少ない五輪賛成派の一人である加藤克彦氏は、コミュニケーション不足の問題だと指摘する。
 「政府、組織委員会はかなり厳しい感染対策を講じている。プレイブックに書かれている。問題はそれが広く周知されていない事。だから不安が募る。政府、組織委員会はメディアを総動員して感染対策を日本だけでなく世界中で『宣伝』すること。そうすれば安心安全な五輪である事がわかる」
 佐々木氏はまた、「ゼロリスク」を求める国民性も背景にあると言う。
 「歴史をさかのぼると、原発安全神話というのがありました。リスクはあるんだけれど、エネルギー安定提供が大事だと言うと、少しでも危険があるならやめろという声があがり、絶対に安全と言わないといけない」
 「今回も、多少の感染はあるかもしれないけれどという説明をすると怒りだしてしまう」
 事実とデータ
 それでは、実際に東京五輪が開催された場合、新型コロナウイルスの感染拡大への影響はどうなのか?
 東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師が行ったシミュレーションによると、緊急事態宣言が6月中旬に終了し、国内のワクチンの接種が1日に60万本のペースで進むと仮定した場合、東京五輪が行われないと10月の第3週に東京での1日の感染者数は822人になると見込まれる。
 また、海外から選手や関係者など10万5000人が入国し、このうち半数がワクチンの接種を終えている場合は、同時期の1日の感染者の数が842人になると計算した。
 一方で、大会期間中に応援に出かけるなど人流が2%増えた場合は同時期の感染者数が1046人となり、6%増えた場合は1600人に増加すると想定。人出が増えるのを抑える必要があるとする結果をまとめた。
 一般の国民にも開催に否定的な考えを表明している人は多い。
 田村愛子氏は、「中止にしたところで死ぬ人はいない。今の現状であれば開催して死亡する人はでる。子供達の、運動会は中止でオリンピックはなぜ開催するのだろう、という純粋な疑問が胸に突き刺さる」とツイッターでコメント。
 高橋正和氏は、IOCは「開催は経済の利益だけを考えていて、人間は死んでもかまわない発想。これはオリンピックの精神の真逆」と言う。
 吉村光史氏は「オリンピックは何だか『体育会系産業カルト』みたいになってしまっていて異様。謙虚さも無い。余りにも傲慢(ごうまん)な姿勢には驚くより他にない」とのコメントをツイッターで送ってくれた。
 海外選手たちの来日が始まり、日本国民の反対世論にかかわらず東京五輪は開催される様子だ。
 しかし、なにか間違いが起きた時のコストは大きい。
 そして、2011年の東日本大震災からの「復興のシンボル」になると期待された東京五輪は、それが現実的ではなくなったばかりでなく、近年で最も過熱した感情的な議論の的となってしまった。」
   ・   ・   ・