🎷62:─1─日本を支配する「内輪の論理」。三菱電機。東京五輪。新型コロナ感染症。~No.278No.279No.280 (57) 

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 2021年8月10日 朝日新聞「文化
 内輪に閉じた東京2020五輪
 世界へ開かれた1964年 夢見る時代錯誤
 小熊英二
 東京五輪が閉幕した。1964年の東京五輪との対比で、今回の五輪を歴史的に考えたい。
 菅義偉首相は15歳だった64年東京五輪で、聖火リレー伴走者を務めたという。今年6月9日の党首討論でも、東京五輪で感動した記憶を熱心に語った。
 東京五輪の印象が強いのは菅首相だけではない。読売新聞2011年3月21日掲載の世論調査では、『昭和の時代を象徴すると思う出来事』の1位は『東京オリンピック』だった。2位は『原爆投下』、3位は『バブル景気』。4位は『石油ショック』、5位は『真珠湾攻撃、対米戦始まる』だ。 
 なぜ64年東京五輪は、これほど印象が大きいのか。それはこの五輪が、日本の国際社会復帰を象徴していたからだ。
  
 日本は戦争で世界との国交や貿易関係を失った。52年のサンフランシスコ講和条約、56年の国連加盟を経ても、その影響は続いていた。たとえば外国為替取引は管理され、それを介して貿易や海外渡航も制限されていた。商用や留学など政府が認めた理由がなければ、外国へ行けなかったのである。
 この状況が解消されたのが64年だった。この年4月、日本はIMF国際通貨基金)八条国となり、為替と海外渡航が自由化された。これと同時に日本はOECD経済協力開発機構)への加盟を果たし、『先進国』と認められる形となった。
 つまり日本にとって64年は、戦争で途絶したヒト・モノ・カネの国際移動がようやく修復された年だった。戦争で破壊された生活もやっと復興し、人々の気持ちも未来を向き、外に開かれようとしていた。64年東京五輪の開会式で、NHKのアナウンサーが『世界中の青空を全部東京にもってきてしまったような素晴らしい秋日和でございます』と述べたのは、こうした背景があったのだ。
 今回の東京五輪は、こうした64年の栄光を夢みて招致された。だが、64年と21年では時代も社会状況も違う。五輪そのものも商業主義的になった。選手とスタッフは困難な状況下でも健闘したが、コロナ禍がなかったとしても、64年と同等の印象は残せなかったろう。
 そのうえ今回の五輪では、関係者の『内輪の論理』が失態を招く事例が目についた。たとえば大会エンブレムは、ベルギーから盗作疑惑を指摘され撤回された。国際コンペで決めた国際競技場の建設も撤回された。JOC(日本オリンピック委員会)会長は大会招致をめぐる贈賄疑惑でフランス司法当局の捜査対象となり退任した。さらに大会組織委員会会長や開閉会式演出担当などの辞任や解任もあいついだ。
 それぞれの経緯を見ると、これらは日本の関係者の内輪ならあいまいに済まされていたかもしれない問題だ。しかし情報化とグローバル化が進んだ現代では、事態はすぐ国内外に拡散してしまう。そのため著作権侵害や女性蔑視発言なども、昔より大きな波紋をよびやすい。
 これに対応するには、個々人の意識の向上も大切だ。だがそれだけでは十分ではない。すべての人間が完全無欠ということはありえないからだ。
 そのため現代では、人間は不完全だということを前提に、権利関係、選考基準、決定プロセス、責任の所在などを明確にしておくことが重視されている。これなら問題が起きても原因を特定できるし、国内外を納得させる説明責任を果たしやすい。

 逆に最悪なのは、上層部や関係者の内輪で不透明な決定プロセスをとることだ。これだと問題が起きたとき基準や経緯を対外的に説明できない。また組織上の原因を特定できないので、問題を起こした個人の心得が悪いという以上に発展しない。だから個々人に辞任と謝罪をさせるだけで組織運営は変わらず、同じような問題をくりかえすことになる。これは『内輪の論理』がたどる必然的な帰結だ。
 これは今の政府も同様だ。いつも官邸で内輪で決定し、問題がおきると『飲食店が協力しない』『若者に危機感がない』などと国民の心得を責め、同じような失敗を繰り返している。だが本来なら、国民全員が完全無欠の優等生でなくても機能する制度設計に務めるのが政府の役割のはずだ。21世紀の国際イベントを前世紀の『内輪の論理』で主催するつもりだったなら、時代錯誤というほかない。
 64年の東京五輪は、日本が未来をめざし、外に開かれた瞬間として記憶された。21年の東京五輪は、過去を夢みて始まり、『内輪の論理』が現代に通用しないことを露呈させた。ここから何を学び、未来にどう活(い)かしていくか。それを考えることが『TOKYO2020』の本当の遺産となるはずだ。」
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 9月12号 サンデー毎日「NEWS NAVI 金融 展望
 不正が相次いで発覚の三菱電機
 『社長は交代したが内向き体質』
 『何も変わらない人事。三菱電機の内向きの企業体質を象徴しています』
 厳しく断じるのは、あるメガバンクの幹部。三菱電機が7月28日に公表した社長交代人事を批判したのだ。その人事は杉山武史社長(64)が鉄道車両空調装置の不正検査などの責任を取って辞任し、漆間啓専務(62)が社長に昇格するというもの。
 三菱電機では退任を控えた社長が後任者を推薦することが慣例だった。今回は社外取締役が中心の指名委員会が人選したという。だが、漆間氏は杉山氏の下で経営企画などを担当したいわば側近だ。
 『杉山氏が後継指名した今の人事と変わらないように見えます。指名委員会のある方がとわれかねません』(前出のメガバンクの幹部)
 杉山氏は特別顧問として残る。同氏の前任者で、社長在任中に不正検査が続いていた柵山正樹会長(69)は留任した。
 社長交代につながった不正検査の全容解明はこれからだ。空調装置に関しては1985年ごろから、鉄道車両のブレーキなど空気圧縮機に関しても15年前から続いていた。
 三菱電機は社長交代人事を発表した直後の8月2日、新たな不正を明らかにした。業務用空調装置などを出荷する際、法令業務がある検査に不備があったという。17日には、受配電システム製作所(香川県丸亀市)で製造した配電盤の検査にも不正があったと追加で発表している。
 外部の弁護士と大学教授が中心の調査委員会がこれから調査を本格化し、9月をめどに調査結果や再発防止策を発表する予定だ。漆間氏は社長就任の記者会見でこう語った。
 『過去に不適切行為が発見されてから何度も調査していたが、今回の不正検査問題を見つけられなかった。ものが言えないところがあるのではないかと思う』
 企業風土の刷新は容易ではない。(森岡英樹)」
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 9月1日17:37 MicrosoftNews KYODO 共同通信社「低圧遮断器でも不適切検査 三菱電機、05年ごろから
 三菱電機は1日、福山製作所(広島県福山市)で製造する低圧遮断器の一部に、工場の定期検査で不適切行為があったと発表した。2005年ごろから検査時のサンプルを量産品と異なる部品を使ったり、規定条件と比べて低い電圧で検査したりしていた。鉄道車両用機器などでも不正が発覚しており、品質への信頼が揺らいでいる。
 工場の定期検査は年1~4回行われていた。対象製品は機械装置向けの遮断器9種類で、異常な電気の流れを遮断する目的で使われる。05年から約243万台を出荷。定期検査とは別に、出荷時の検査は適正に行われていたという。」
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 9月1日19:25 MicrosoftNews NNN24三菱電機“工場用ブレーカー”で新たな不正
 © NNN 三菱電機“工場用ブレーカー”で新たな不正
 三菱電機で新たな不正が明らかになりました。今度は工場用のブレーカーで、外部の認証を受けるための監査を不正にくぐり抜けていました。
 新たに不正が発覚したのは、三菱電機広島県にある福山製作所が製造する工場用のブレーカーで「遮断機」と呼ばれています。三菱電機は遮断機を外部の認証機関による監査に合格させるために、監査の際に正規品とは異なる部品を使った製品を用意していました。
 また、監査で製品に電圧をかける際に、本来よりも低い電圧にしてその場しのぎで合格させていたということです。こうした不正は、2005年から行われていたということです。
 三菱電機は製品の出荷を止めたうえで認証機関に報告し、監査をやり直して合格したということで、すでに出荷を再開しています。
 三菱電機では6月以降、長崎、和歌山、香川の工場で不正な検査をしていたことが明らかになっています。これらの問題は第三者による調査委員会が調査を行っていて、原因や再発防止策などはまとまり次第公表する予定です。」
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 内輪の論理とは、閉鎖的仲間内で波風を立てず、外部に知られないように内々で穏便に隠れて問題を処理し、助け合い庇い合う心優しい身内意識である。
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 良品質・高品質で安全・安心・安定のメイド・イン・ジャパン神話は、1990年代頃の日本経済破綻と同時に崩壊した。
 現代日本には、誤魔化しの隠蔽・偽装・粉飾・改竄体質が蔓延している。
 その原因は、不正を糺そうという勇気ある内部告発を嫌う病的な身内意識にある。
 現代の日本人は昔の日本人に比べて自助性がなく、自己再生能力、自己修復能力、自己回復能力、自己調整能力、その他多くの自力突破能力が極端に劣っている。
 つまり、口先で正論を吐き勇ましい事を言っても実際には「逆境や苦境に弱い」、という事である。
 現代の日本は一流国、先進国から三流国並み・途上国並みに落ち、台湾、中国、韓国さらには東南アジア諸国やインド、その他諸国にすら追い抜かれつつある。
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 昔の日本人が偉かったからといって現代の日本人も偉いわけではない。
 昔の日本人と現代の日本人は別人のような日本人である。
 何処が違うかと言えば、昔の日本人は「日本民族」であったが、現代の日本人は「たんなる日本人という人間」である。
 つまり、民族的な歴史・文化・伝統・宗教を持っているかどうかで、昔の日本人は持っていたが、現代の日本人は持っていない。
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 現代日本の各種各業界の後任人事では、引退・辞任する実力者は自分を否定しない大人しい人材か自分より功績を出さない劣った人材を指名し、陰で糸を引く院政を行っている。
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 何時の時代も日本を動かしてきたのが「内輪の論理」で、歴史的な成功例よりも失敗例が多く、代表的失敗例が満州事変、日中戦争ノモンハン事件、太平洋戦争そしてバブル経済破綻、経済の低迷、産業の衰退、日本企業の外国資本への身売りなど、大正時代から平成時代までの全ての局面で見られる。
 日本のダメさは、内向きで、縦割りで閉鎖・硬直・排他そして自分を否定する斬新なイノベーションを嫌い潰す「内輪の論理」である。
 現代日本には、世界を動かすようなイノベーションは起きない。
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 内輪の論理とは、密室の論理で決定過程を隠し責任の所在を曖昧にして、仲間内の既得権益を守る為に前例を前面に押し立てて異論・変革を排除し、過去の成功モデルでタコツボ化・ガラパゴス化し新たな発展を生みだすイノベーションを潰した。
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 マッカーサーは、日本特有の内向きな「内輪の論理」で世界を広く見ようとしない視野狭窄の日本人を「12歳の子供」と表現したが、それは国際人として大人として成長する可能性があるという前向きな好意的な話ではない。 
 新型コロナ蔓延に対するワクチン接種・治療薬承認などの対応では、欧米諸国は平和ボケの日本とは違い深刻な戦争と認識して私権制限の都市封鎖など迅速にして適切な行動を取り目覚ましい成果をあげている。
 つまり、「緊急時においては国家の為には国民を犠牲にする」という事で、欧米諸国の国民は大人の対応として国家の合法的な当然な行動であるとして受け入れた。
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 現代日本は、コレラ・ペスト・天然痘などの感染を抑えた明治時代の後藤新平北里柴三郎ら先人・祖先の歴史的成功例を持ち出しながら自分たちは無為無策の如く対応の失敗を繰り返す惨めさは、一流国ではなく三流国並みであり、先進国ではなく途上国並みであった。
 それが、現代の高学歴な知的エリートや進歩的インテリの偽らず実態である。
 世界が驚嘆し賞賛したバブル経済までの理想国家日本を作り上げた日本人とは、1970年代頃まで第一線で働いた日本人であって、1980年代頃から第一線に立ち始めた日本人ではなく、ましてや2000年以降の、2021年の日本人ではない。
 「戦争を知らない日本人が増えると日本はダメになる」は正しいが、それを口に為て得意顔で説くダメ人間が増えている。
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