🎷88:─1─日本人は日本が世界一危ない国という地政学的リスクが理解できない。~No.367No.368No.369 

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 2022年6月17日 MicrosoftNews 現代ビジネス「日本が「世界一危ない国」になっていた…! 円安より重大な「地政学的リスク」の正体
長谷川 幸洋 
 円安の原因は「国力低下」か
 円安が進行中だ。マスコミは、もっぱら「日本と米国の金利差が理由」と報じている。「日本の国力低下」という見方もある。いずれも、その通りだが、より重大なのは、実は「日本の地政学的リスク」である。いまや、日本は「世界でもっとも危ない国」なのだ。
 日米の金利差については、さんざん報じられているので、繰り返さない。
 国力低下についても「日本経済に根本的な弱さがあるのではないか」という見方が出ている。たとえば、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事は6月14日、会見で「日本の国力に対する見方が円安を加速させているとすれば、経済界としても国としても、かなり深刻に受け止めないといけない」と述べた。
 私は同意するが、櫻田氏を信頼しているわけではない。
 私は「月刊Hanada」2022年3月号の連載で指摘したが、櫻田氏は昨年12月、日本政府が北京冬季五輪の開会式を事実上、ボイコットした際「旗幟鮮明にすることが国益になるとは思わない」と発言した。
 日本をはじめ少なくない国がボイコットするなかで、北京オリンピックの開会式は行われた[Photo by gettyimages]© 現代ビジネス 日本をはじめ少なくない国がボイコットするなかで、北京オリンピックの開会式は行われた[Photo by gettyimages]
テレビ朝日によれば「ここは、かっこよく旗幟鮮明にすればいいという話じゃないと思っています。国益というのは、経済も安全保障も全部ひっくるめての国益ですし、外交というのは非常に長い中長期の影響が及びますので」とまで言っている。
 ところが、その2週間前の会見で、彼はこう述べていたのだ。
 〈日本を取り巻く外交環境を見た際に、中国とは真剣に、言うべきことは言う形で付き合う必要がある。つまり、旗幟鮮明にせずに中国と付き合うのは難しい。中国との付き合いは旗幟鮮明に、何を交渉するか(一方で)価値観や人権問題などは交渉問題ではないとはっきりさせることが重要である〉
まさに正反対だ。会見での発言を、これほど極端にひっくり返した例も珍しい。経済界代表という公人としては、あまりに軽い発言だ。中国に対する認識がまったく甘い。
 中身が見えてこない「新しい資本主義」
 日本の国力低下は、いまに始まった話ではないが、岸田文雄政権になって、一段と加速しそうな気配である。
 岸田政権は6月7日、骨太の方針と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を閣議決定した。新しい資本主義は、岸田首相が昨年の自民党総裁選から掲げてきたキャッチフレーズだが、中身はまったく期待はずれだった。
 © 現代ビジネス 岸田文雄首相[Photo by gettyimages]
 たとえば、新興企業(スタートアップ)に対する支援策について「5年で10倍増を視野に、育成5カ年計画を本年末に策定する」とある。新しい資本主義というからには当然、新興企業が大きな軸になるはずだが、支援計画の策定すら年末という。実際に政策が動き出すのは、いつになることやら。先が思いやられる。
 有識者を集めて会議を作ってはみたが、まさに「笛吹けど踊らず」「会議は踊る」だ。これでは、海外投資家が日本経済の先行きに期待するわけがない。
 こうなったのも、岸田首相自身の基本理念が定まっていないからだ。首相は当初、分配重視を訴えたが、骨太では成長重視に舵を切り替えた。総裁選でぶち上げた金融所得課税の見直しも、株価急落に見舞われると、すぐ引っ込めてしまった。
 一方で、国会では「けっして(金融所得課税の議論が)終わったわけではない」と答弁し、未練を残している。「参院選が終われば、復活させるのではないか。それまでは寝たフリをしているだけだ」という見方もささやかれている。これでは、円は買えない。
 日本を取り巻く「地政学的リスク」
 経済以上に重大なのは「地政学的リスク」である。
 日本はロシア、中国、北朝鮮という、いずれも核を保有する独裁・専制主義国家に周囲を囲まれている。ロシアはウクライナに侵攻し、核で脅している。中国は台湾と日本の尖閣諸島に対する領土的野心を隠していない。北朝鮮はミサイル発射を繰り返し、核実験を再開する可能性もある。
 一昔前まで「地政学的リスク」と言えば、中東の湾岸地域やセルビアボスニア・ヘルツェゴビナなど東欧の一部を指すのが通例だった。ところが、ハッと気がつけば、日本はいまや「世界でもっとも危険な発火地帯」のど真ん中に位置しているのだ。
 © 中国の習近平総書記[Photo by gettyimages] 中国の習近平総書記[Photo by gettyimages]
 ロシアによるウクライナ侵攻と、米国をはじめとする北大西洋条約機構NATO)の対応は、米国の「新たな戦争のかたち」をも予感させる。すなわち「実際に戦うのは現地軍で、米国は後方から支援するだけ」という戦い方である。
 米国が米軍をウクライナに派遣しないのは、ロシアの核を恐れたからだ。
 そうであるなら、台湾有事でも、米国は米軍を派遣しない可能性がある。「ロシアの核は怖いが、中国の核は怖くない」と考える理由はない。しかも、米国は中国に比べて台湾からはるかに遠く、軍事的には圧倒的に不利だ。
 戦闘は現地軍に任せて、米国が後方支援に徹するのは「攻撃的現実主義」と呼ばれる国際関係論の理論モデルでも、説明できる。シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授が提唱した「オフショア・バランシング」理論の概要は次の通りだ。
 〈米国や中国、ロシアのような大国の目標は「生き残り」である。地域で覇権を確立した大国は世界制覇を目指すわけではなく、地域覇権の継続を目指す。米国にとって重要なのは、アジア太平洋と欧州、中東の湾岸地域に対する支配権だ。それらの地域における支配権を守るために、米国はいきなり米軍を派遣するわけではない。まずは、それぞれの地域で従属国に覇権維持の責任を担ってもらい(バック・パッシング=buck-passing)、それが難しくなった局面で初めて、米軍が出ていく〉(「The Tragedy of Great Power Politics」、2014年、邦訳は「大国政治の悲劇」)
 © 現代ビジネス シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授[Photo by gettyimages]
私がこの理論に注目するのは、NATO拡大に強く警鐘を鳴らしてきたミアシャイマー教授の警告が、今回のロシアによるウクライナ侵攻で的中しただけでなく、その後の展開も、まさにオフショア・バランシングが予想した通りになっているからだ。戦っているのはウクライナ軍で、米国は後方支援に徹している。
 米国は台湾有事や尖閣有事でも、同じように動く可能性が高い。戦うのは台湾軍と自衛隊に任せて、米国は後方支援する。つまり、台湾有事や尖閣有事で火だるまになるのは、日本や台湾であって、米国ではない。しかも台湾が落ちれば、日本は直ちに原油シーレーンが危うくなる。これが、日本の「地政学的リスク」だ。
 米国では、もはや常識に等しい
 米国人にとって、こんな話は意外でもなんでもない。
 私は「月刊Hanada」22年2月号の連載で紹介したが、米国のヘッジファンド関係者は「中国が台湾に侵攻したとき『米軍が直接、戦う』と思っている米国人は、ほとんどいませんよ。香港が中国に落ちた時点で『台湾もやがて中国に奪われる』というのが、米国の金融関係者が織り込んでいるメイン・シナリオです」と語っていた。
 当時は、ロシアが侵攻する前だ。それでも「台湾有事は必至」とみられていた。ジョー・バイデン米大統領が昨年8月以来、「米国は台湾を守る」という発言を3度も繰り返したので「米国が守るはずだ」と思っている日本人が多い。だが、それは解釈が逆だ。
 © 現代ビジネス バイデン米大統領[Photo by gettyimages]
 大統領がニュースアンカー(昨年8月のABCと同10月のCNN)と記者(ことし5月の記者会見)から3度も同じ話を質問されるのは、それだけ「バイデンは本気で台湾に軍事介入するのか。まさか」と思われているからだ。米国民の多くは、台湾防衛に米軍が出動するとは思っていない。
 繰り返すが、戦うのは台湾と日本だ。そして、台湾危機は日本危機に直結する。だから「日本が危ない」のである。円安は、そんな日本のリスクを映し出している。岸田政権が本腰を入れて日本防衛に動き出さない限り、中長期的に「日本売り」は続くのではないか。」
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