🚩5¦─6─自国の未来を見限った中国上流層が続々と日本で土地を爆買いしている。〜No.29 

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 2022年10月6日 MicrosoftNews 文春オンライン「資産100億円を持ち込み…自国の未来を見限った中国上流層が続々と日本に逃げる怪
安田 峰俊
 最近、中国取材が面白い。といっても、厳重なゼロコロナ政策が敷かれる中国には、そう簡単には渡航できない。いま私が面白がっているのは、日本国内で、中国から移住してきたばかりの中国人に会うことだ。
 というのも近年、これまで中国社会の中枢にいたはずのエリート層が、習近平体制に見切りをつけて続々と母国を離れる現象が加速しているのだ。
 中国を脱出する行為は「潤」(rùn)と呼ばれ、いまや上流層を中心にちょっとしたブームになっている。ちなみに「潤」という漢字に意味はなく、拼音(中国語の発音を表すアルファベット表記)の「rùn」が英語の「run」に通じることから作られた俗語だ。
 ©iStock.com© 文春オンライン 防護服姿の当局側人員は中国語では「大白」と通称される。写真は2021年1月、コロナ陽性者が確認された上海市内の一部地域で警戒に当たる大白たち。©iStock.com
毎月数十世帯の中国上流層が日本に移住か?
 ここ数年来に日本に移住した中国人について、私が直接・間接に見聞した事例を紹介しよう。具体的な事情を書けない人も多いので「日本社会でいえばどのくらいのランクか」でおおまかに表現しておくが、たとえば
〈・NHK編集委員(→ 前回記事 の王志安)
週刊文春元編集長
朝日新聞の大物記者
早稲田大学元准教授
・億単位の高額納税者
野村證券の元部長〉
 このくらいの地位の人たちが国を離れて逃げてきたのを確認している。
 関西地方の複数の華人系不動産業者に聞いたところ、ここ半年でこうした「潤」系の中国人による住居購入が、1社あたり毎月4~5件成約し続けているという。全国規模で見た場合、おそらく毎月数十世帯の上流層の中国人たちが、日本に居を移していると考えられる。
 「潤」の中心となっているのは修士号・博士号持ちや留学帰りといった高学歴者で、年齢層は40~50代が最多。家庭の資産についても、最低でも数億円は持っている人たち(もちろんもっと大金持ちはたくさんいる)だという。名実ともに中国国家のエリート層だ。
 なかでも姿が目立つのは、政権の機嫌ひとつで財産が消し飛ぶ懸念を深めたお金持ち、カネと不動産の視点から祖国の社会の不透明さや持続可能性の薄さに嫌気がさした金融関係者、言論の自由が狭まり仕事が難しくなったメディア関係者…、といった人々である。
 特にお金持ちの懸念は深刻だ。近年の中国は大手不動産コングロマリットの万達(ワンダ)や中国ITの旗手のアリババといった国家を代表するレベルの大企業ですら、いざ当局に目をつけられると大ダメージを負う時代であり、民間で稼いだ人たちは誰しも戦々恐々である。
 もちろん、一定以上の上流層の中国人は、ずっと前からとっくに資産を海外に移し続けてきた。ただ、昨今の「潤」と従来の資産フライトとの大きな違いは、本人たちが将来的にも中国に戻る考えを捨て、資産のほとんどを持ち出すようになっていることだ。
 日本が中国富裕層の移住先に選ばれる理由は…
 「潤」の行き先として、アジアでの一番人気はシンガポールだ。ただ、国土が狭く閉塞感があることや、資金面のハードルが高いなどのネックもある。そこで次善策として選ばれているのが日本である。
 日本は経済が低調なので投資やビジネスにあまり向かないが、小さな会社を経営できる程度のお金さえあれば在留資格経営管理」を取得可能で、しかも物価が安くて治安がいい。生活に追われない水準の暮らしができるならば、日々のQOLも高く、休日に温泉やスキーやハイキングも楽しめる。
 また、子育て世帯の中国人からは、体育や図工・音楽など狭義の「勉強」以外の教育も重視する日本の公立小学校の環境が、意外と評判がよかったりする。医療水準の高さも魅力だ。
 首都圏や関西圏ならば「ガチ中華」店舗にも事欠かず、異国でも故郷の味にありつける。日本人と中国人は外見も似ているので、欧米圏とは違って、街を歩くだけで「外国人」として露骨な差別をぶつけられることもすくない。
 「中国社会の非合理性に、つくづく愛想が尽きたんです」
 「潤」は今年4月から急増した。理由について、最近関西地方に移住した50代の中国人女性は「上海のロックダウンでこりごりになった人が多い」と話す。彼女は天安門世代の上海人で、若い頃の原体験として「ダメな中国」を知っていることもあり、もともと体制への不信感は強かったようだ。
 「中国社会の非合理性に、つくづく愛想が尽きたんです。あそこまで厳格な封鎖は本当に必要だったのか。数日に一回のPCR検査で逆に『密』になって感染リスクが高まったり、陽性者が送り込まれる集団隔離所が非衛生的でプライバシーもなく、かえって心身を壊しそうな環境だったり。まともじゃありません」
 彼女がやりきれないと感じたのは、こうした施策の根拠を納得のいく形で説明されたり、問題点が後日に客観的に検証されたり、人的・経済的な被害の真相が伝えられたりすることが、現代の中国の体制下ではまるで望めないことだった。
 当時、上海では「この過剰な統制は、やがて台湾に侵攻する際に国際社会から受ける制裁と、それによる物資欠乏に備えたシミュレーションだ」「上海市民は捨て石にされた」といった噂も乱れ飛んだという。極限状態にありがちなデマだが、市民の強い不信感を読み取れる話ではある。彼女は続ける。
 「もともと、習近平政権が2期目に入った5年前から雲行きのあやしさを感じて、日本に少しずつ財産を流していたんです。いつでも拠点を移せるようにはしていましたが、今回の一件が、出国を決める最後のひと押しになりました」
 一般市民はそれでも党や習近平に信頼感を持っている人が多い。ただ、富裕層や知識層を中心に、上海のみならず北京や深圳など他の大都市からも脱出の動きが加速した。単なるロックダウン避けが目的ではなく、その根底にあるのは、あんな政策に平気でゴーを出せる硬直した体制に対する懸念だった。
 「国家自身の自浄作用を期待しにくい。これがなにより怖い」
 「習政権の3期目突入で、体制の硬直化は加速すると思う。不動産バブルの崩壊も経済成長の鈍化も深刻ですが、問題を柔軟に解決できるような、国家自身の自浄作用を期待しにくい。これがなにより怖い」
 「民間企業の自由な経済活動に、政府から無駄なクチバシがやたらに入る。それにもかかわらず、例えば上海のロックダウン中には、物資を横流しするような怪しげな企業がいくつも生まれた。いずれも背景に党の高官がいると言う話だった。社会に公平性や透明性がなさすぎる」
 「5年後か10年後かはわからないが、習近平は老いて権力を失えば『清算』されるはずだ。社会主義国家の強力な独裁者が、安定的に次代への権力移行をおこなえる例は、実子に継承させる以外ではほとんど見られない。やがて習が老いれば、国家の滅亡とまではいかなくとも、相当の混乱が起きることは確実だ。中国の先行きは危うい」
 私が会った「潤」の当事者たちの中国の将来に対する見方は、いずれも驚くほど悲観的だ。母国に見切りをつけた人たちなので当然でもあるが、彼らは常に体制を批判してメシを食っている民主活動家などではない。半年〜数年前まで中国社会の中枢にいた人たちの口から、こうしたセリフが次々に飛び出していることは、やはり驚く。
 よほどの人脈がないと知り合えない中国人エリートが都内で「けっこうヒマ」に
 日本の立場から見て、この「潤」組の中国人たちの価値は言うまでもない。華人系不動産業者の話では、数億円の豪邸やショッピングビルをポンと買い「1家族だけで100億円くらい資産を持ちこむ」ような富豪が、何家族も日本に移住しているようなのだ。近年なかなか聞かれない、景気のいい話である。
 いっぽう、「情報」という面でも興味深い。仮に中国国内で会うとすれば、よほどの人脈を持っていないと知り合うこともできず、たとえ会っても機微に触れる話題はほとんど喋ってくれない立場の人たちが、いまや日本国内で大勢ぶらぶらしているのだ。
 彼らは中国に帰るつもりがほとんどないため、中国国内のしがらみからは既に自由だ。しかも、移住した異国での日々は「けっこうヒマ」である。当然、話をすればいろんなことを教えてもらえる。
 習近平は庶民層の人心を得ており、中国の一般人の体制への信頼度はまだまだ高い。とはいえ、国家のなかでいちばん目端がききそうな層の人たちからは、まったく違う話が漏れ聞こえてくる。コロナ禍のなかで海外との門戸を閉じた中国社会の内部では、実に興味深い現象が進行中である。
 (安田 峰俊)
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