🕍7:─1─北海道ニセコ"外国人支配"の実態。~No13 

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 全ての元凶は、少子高齢化による日本民族の人口激減である。
 日本人と言っても、日本国民と日本民族は違う。
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 2024年3月10日 YAHOO!JAPANニュース 週プレNEWS「【現地ルポ】ここは本当に日本か!? 北海道ニセコ"外国人支配"の実態
 幻想的な夜のニセコひらふ地区の大通り
 北海道「ニセコ」は倶知安町ニセコ町蘭越町の一帯の総称である。パウダースノーのスキー場として有名なここは、今やリッチなインバウンド客ばかりの"外国人天国"である。そのリアルな実態をルポライター安田峰俊氏が体当たりでルポした!
 【写真】北海道「ニセコ」の強気すぎる価格設定
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■どこもかしこも英語だらけ
 かつて訪日観光客の主役だった中国人は、中国の景気や日中関係の悪化から存在感が薄れたが、その穴を埋めるように欧米人や香港人が日本に殺到している。
 外国人向けの〝観光地価格〟も生まれた。最近は東京・豊洲のすし店で、1杯6980円の海鮮丼(通称「インバウン丼」)が売られていることが報じられた。円安と日本の物価安から、これを高くは感じない外国人も多いのだ。
 現在、日本には街全体にインバウンド価格が広がる地域も存在する。北海道の巨大スノーリゾート、ニセコだ。主峰のニセコアンヌプリを取り囲んで5つのスキー場が広がり、雪質は世界的に「JAPOW」(日本のパウダースノー)の名で知られるほど良好。周囲には温泉もある。
 現地を知る人に聞くと、日本とは思えない光景が数多く見られるという。早速、行ってみることにした。
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 1万円のシャンパンと6000円のウイスキー、さらに大量に積まれた2000円の高級イチゴの箱......。それらをウインタースポーツウエア姿の欧米人観光客が無造作に買い物カゴに放り込む。1月23日夜、北海道のコンビニチェーン「セイコーマートニセコひらふ店で見た光景だ。
 ニセコ東急グラン・ヒラフスキー場前に立地する同店は、冬季は来客の9割が外国人となり、グループ店舗内で最大規模の売り上げを誇るインバウンド拠点へと変貌する。
 店内には、欧米人が好む大容量のアイスや各種の外国食品が並ぶ。中でも人気は、ブリティッシュブレッド。英語圏で好まれる麦芽入りパンで、朝食や間食に人気らしい。値段は日本で売られている食パンの約3.5倍ほどだ。
 コンビニ近くの空き地には、コンテナ店舗が集まる屋台村があった。使い捨ての紙食器に盛られたカツ丼が3000円、天丼「特上」が7000円と、強気すぎる価格設定だ。
 スキー場に向かう「ひらふ坂」を歩いた。ナイター営業のゲレンデのカクテル光線と、周囲の豪奢な建物のライトアップで、辺りは幻想的な光景が広がっていた。すれ違う人たちの会話も、街の看板もほぼ英語である。
 坂のそばの不動産屋の窓には、別荘を売る物件広告(もちろんすべて英語表記)が窓に大量に出ていた。200㎡で3億円強がこの店の相場らしい。スマホで撮影しようとしたところ、華人系の店員から「撮っちゃダメ!」と、やはり英語で叱られた......。
■普通の日本人が楽しむには過酷すぎる
 そんな街に日本人が滞在するのはけっこうツラい。
 スキー場に近い倶知安町内の宿は、カプセルホテルに毛が生えたくらいの部屋で風呂とトイレは共同だ。なのに、1泊朝食付きで1万3000円とかなり高い。
 個室はドア代わりの防火カーテンで仕切られ、カギはない。筆者がベッドに寝転がっていると、部屋を間違えた中東系の男性が、いきなりカーテンを開いて入ってくることさえあった。
 宿の近所にあるスーパーマーケットをのぞくと、ここでも9200円の生ウニや、高級シャンパンがズラリと並ぶ。
 近隣在住だという日本人男性(50代)に話しかけてみると「そんなのは地元の人は買わないよ」と、当たり前すぎる返事が来た。
 実は地元のコンビニや格安スーパーは、いかついインバウンド商品とは別に、日本人の住民向けのカップ酒や惣菜を定価で販売している。「数㎞離れた駅前に飲みに行こうと思う」と話した私に、彼は言う。
 「冬は外国人客がアプリ経由で配車を取り合うから、タクシーは1時間待ちもザラ。運転代行サービスもあるけど1業者しかないから使いづらい。今から飲みに行くのはやめたほうがいいよ」
 仕方なく、おにぎりと見切り品のサラダを350円で買い、ニセコ第1夜の夕食にした。
 ただ、翌日は困った。前夜の宿は満室で、ほかのホテルは1泊5万円以上。現地で有名なニセコHANAZONOスキーリゾート前のパーク ハイアットなら、安くても1泊20万円くらいする。滞在1週間で3500万円という高級ホテルコンドミニアムもあるそうだが、まさに雲の上の話である。
 スキー場から約40㎞先に素泊まり1泊8000円の民宿を見つけ、山道をクルマで向かったところ、寒波に巻き込まれて遭難しかけた。民宿付近に商店はなく、吹雪で買い出しにも行けない。滞在2日目の晩餐は民宿の受付に余っていたカップうどんになった。
 だが、せっかく来たからにはスキーは試しておこう。滞在3日目、猛吹雪のニセコを避けて同じく外国人に人気のルスツリゾートに行くと、「5時間券」がネット割引でも8500円(終日滑れる1日券は9700円)。レンタルスキー代も合わせれば、財布に厳しい。今日の食事はセイコーマートの鮭おにぎり(203円)にしよう......。
 「ここは最高の天国さ! なんでも安いし、僕の故郷よりも雪質がいいんだぜ!」
 ルスツで出会ったアラスカ出身だという中年アメリカ人スノーボーダーはそう顔をほころばせた。
 山頂行きのゴンドラで相乗りする人たちはアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド......と、まるで英語圏各国の見本市だ。さらに山麓部の初級者ゲレンデでは、雪に慣れない中国系の人たちが中国語や広東語で叫声を上げている。
 リフトやゲレンデハウスの設備はバブル期から変わらない日本のスキー場だが、中身は完全に海外。日本人には食堂のおばちゃん以外、ほとんど出会わなかった。
■勢いが衰えない海外からの投資
 「中国のIT企業経営者で、1泊200万円くらいのリッツカールトンのスイートに泊まる人が、私の〝パパ〟。彼が冬に日本に来たときは、待ち合わせ場所の成田からそのままニセコに連れていかれます」
 そう話すのは、外国人富裕層を相手に〝愛人業〟を行なっているという日本人女性の山岸美悠さん(仮名、25歳)だ。ニセコのインバウンドの「真の主役」は、こうした富豪たちである。
 「クラブでお酒を片手に盛り上がっている人と話したら、超有名外資系金融の偉い人だったりする。ニセコはそういう街です」(山岸さん)
 かつて長野オリンピック会場だった志賀高原をはじめ、国際的に名を知られた日本のスキー場はほかにもある。
 だが、高級ホテルや別荘地、ミシュランガイドで星を獲得するレベルのレストラン、温泉を用いた高級スパなどのラグジュアリーな施設と最高の雪質を備え、英語環境も整備されたスノーリゾートはニセコだけだ。
 しかも、国際線が発着する新千歳空港からはバスで1時間半程度の好立地である。最近は、それでも時間が惜しいと新千歳からのヘリコプター便の運航を求める声もあるという。
 ニセコのこうした状況はいつ始まったのだろうか。
 「2010年頃まではオーストラリアなどからの小規模な投資が多かったんですが、ここ十数年で香港やシンガポールなど華人系の大規模投資が増えました。数百億~1000億円規模のリゾートホテル開発の話も珍しくありませんよ」
 ニセコ在住のオーストラリア人で、開発事業の土地設計に携わるアンドリュー・スレター氏は、流暢な日本語でそう話す。
 ニセコはかつてバブル期ににぎわったが、スキーブームの終焉で低迷。だが、オーストラリアなど南半球の人たちの間で、夏季(この地域は日本の季節と逆になる)のスキー旅行先として話題になる。その情報が、やがてほかの英語圏諸国や香港などの外国人にも知られるようになった。
 大きく流れを変えたのが、12年に香港の合和実業(ホープウェル)グループが進出し、ニセコひらふ地区にラグジュアリーホテル「シャレーアイビーヒラフ」を建設したことだ。
 合和実業はもともと、中国広東省の大都市である広州と深圳を結ぶ広深公路など高速道路の建設・運営を手がけていた巨大財閥である。
 同社の成功を皮切りに、大規模な投資ラッシュが始まった。地元で別荘関連の開発ビジネスに携わる華人系の外国人男性、アレン氏(仮名)は言う。
 「欧州のプロリーグのサッカー選手や、世界的IT企業の経営層といった億万長者が、こぞって土地や別荘を買っています。中国IT最大手『アリババ』の創業者のジャック・マーの別荘も、ニセコモイワの近くにあるそうですよ」
 現在、ニセコの五大スキー場のうちで、日系資本は東急不動産HDが携わる「ニセコ東急グラン・ヒラフ」と、北海道の中央バス観光開発が関わる「ニセコアンヌプリ国際」のふたつ。
 「ニセコHANAZONO」は、香港系のPCPDグループ、「ニセコビレッジ」がマレーシアのYTLコーポレーション、「ニセコモイワ」がシンガポールのチャータード・グループの運営下にある。
 中小規模の海外企業も多数進出中だ。ニセコエリアのリゾートがある倶知安町ニセコ町の人口は、合計2万人余り。だが、両町に拠点を置く外国法人は1000社を超え、地方の市町村としてはケタ違いに多い。
 海外勢の投資に陰りは見られないのか。アレン氏はこう言う。
 「政治的事情で送金が難しくなったこともあり、中国大陸系の資本はコロナ禍を境に動かなくなりました。土地を買ったまま塩漬けの場所もある。ただ、それ以外の所、例えば香港の資本はコロナ中に凍結していたプロジェクトを再開しました。勢いは相変わらずですよ」
 英語中心のリゾート地であるニセコで、中国大陸の存在感は意外と薄い。ニセコの基本的な図式は、香港人シンガポール人が投資で「ハコ」を整備し、金持ちの欧米人を迎え入れるという形である。
■日本人もかなえられる〝ニセコ・ドリーム〟
 ところで、〝外国人天国〟のニセコは、日本人にはうまみがない場所なのか、というとそうでもないようだ。
 ニセコ地域の地価上昇率は全国有数で、2010年頃は1坪50万円程度だったというニセコひらふ地区の一等地の地価は、今や1坪300万円以上となった。30年度に北海道新幹線の開通が予定される倶知安駅周辺も、地価はコロナ前と比較して7~15倍ともいう高騰ぶりだ。マンション建設など日本企業の動きも活発である。
 インバウンド景気で、地域の一部のコンビニや牛丼チェーンの時給は1700~1900円に達し、地元への恩恵は大きい。高級ホテルやコンドミニアムが造られるたび、清掃会社や賃貸管理会社など関連する日本企業の仕事や雇用も増えていく。
 加えて、最近は投資の場で日本人が再起し始めた。
 「日本の若いニューリッチ層の人たちが、ニセコの別荘を買っているんです」
 北海道小樽市に本社を置く不動産会社「日本信達」社長の石井秀幸氏はそう話す。彼自身、もとはロシア相手のカニ貿易会社を経営していたが、インバウンドの不動産需要に目をつけ、ニセコ富良野の物件を扱う現在の業種に転換したという、〝ニセコ・ドリーム〟の当事者だ。
 「(ニセコの)高級コンドミニアムの利回りは1~2%程度。東京のマンションなら平均4%くらいですから、資産収入だけ見ればいまいち。ただ、1億で買えば2億で売り抜けられるので、その魅力は大きいんです」
 石井氏はこう断言する。
 「少なくとも今後10~20年以内は、日本国内に〝次のニセコ〟が登場することはないと感じています。これだけ外国人富裕層向けのサービスがそろった土地は、簡単にはつくれないですよ」
 先に登場した在日オーストラリア人のスレター氏を含め、取材した人たちの意見は異口同音だった。
 バブル期の日本人が造ったスキー場をベースに、香港人らの華人系資本が流入してつくり上げた異形の高級インバウンドリゾート、ニセコ。そのひとり勝ちは、まだまだ止まらないのかもしれない。
 取材・文・撮影/安田峰俊
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