⏱38:ー2・Cー太陽光発電などの再生可能エネルギーは自然破壊である。~No.98 

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 2024年6月24日17:17 YAHOO!JAPANニュース 夕刊三重「太陽光パネル「規制して」 〝業者は野放し状態〟町民訴え 三重・多気
 町議会の意見交換会で声
 太陽光発電パネルについてなどの意見が寄せられた意見交換会で話す坂井議長(中央奥)=多気町朝柄の勢和公民館で
 三重県多気多気町議会は22日、多気町朝柄の勢和公民館で、「2024(令和6)年度町民と議会との意見交換会」を開催した。町民約15人が参加し、太陽光発電パネル設置の制度化や空き家対策などを求める声が寄せられた。
 この日は、町議会から坂井信久議長と西村茂副議長、吉田勝氏、志村和浩氏、木戸口勉幸氏、藤田清隆氏、前川勝氏の7人が参加した。
 町民からは、太陽光発電パネルに関して「パネルに囲まれて生活道路も造れなくなっている。(業者と交わした)覚書も効果がなく、(草刈りなどで)連絡を取ろうにも転売されていて誰に連絡したらいいのかも分からない。条例化で規制するなどしてほしい。議会で(野放しになっている現状を)止めてほしい」などと切実な声が上がった。
 また、現在の登録物件が9件の空き家バンクについて「物件自体が少なく、移り住みたいという人の要望に応えられない状態が続いている」と指摘。相続に関しても「空き家や畑のその後を話し合わないまま当事者が鬼籍に入り、荒れ果てていっている。行政などが間に入り、事前に本人や家族と相談できる体制をつくれないだろうか」などの意見が寄せられた。
 他にも、耕作放棄地を家庭菜園として貸し出す仕組みづくりや、町の地域防災計画が実情に沿っておらず不十分などの意見があった。坂井議長は「寄せられた意見を全て町に伝える」と回答した。
 29日午後1時からも、相可のBANKYO文化会館(町民文化会館)で意見交換会が開かれる。当日は坂井議長と西村副議長、吉田氏、志村氏の他、松木豊年氏、隆宝政見氏、深水美和子氏が出席する予定。
 事前申し込みは不要。
 問い合わせは同議会事務局TEL 0598(38)1120 へ。
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 6月24日12:32 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「釧路湿原の大量メガソーラーに土地買取で対抗、原野商法で取得した土地「手放したい」人々も
 釧路湿原釧路町)に広がるソーラーパネル(写真提供:釧路自然保護協会)
 日本最大のラムサール条約登録湿地、釧路湿原太陽光発電施設の進出が続く。絶滅危惧種で天然記念物のタンチョウやキタサンショウウオが住む湿原の乾燥化に拍車がかかるとの懸念が高まる。
 【写真】タンチョウの生息地にも押し寄せる太陽光発電施設
 国、北海道、市町村、環境団体でつくる協議会は希少生物の生息地を避けるよう事業者に呼びかけ、釧路市は条例づくりに着手した。だが押し寄せる太陽光パネルの波に歯止めがかからない。そんななか、環境団体が土地の買い取りを進めている。
■地元の環境団体や専門家が乱開発から守ってきた
 「釧路湿原は、1972年に出版された田中角栄氏の『日本列島改造論』で開発候補地点とされ、将来のあるべき姿をめぐって地元で議論になった。海岸から6キロ以上離れた湿原地帯は守ろうということで合意し、国立公園を目指す運動に発展しました。環境省は背中を押され、1987年に国立公園が誕生。湿原を守りたいという地域の人たちの声が、今の太陽光発電を問題視する市民運動につながっています」
 こう指摘するのは、元環境省自然環境局長でIUCN(国際自然保護連合)日本委員会会長の渡邉綱男さん(68歳)。原生的な自然が残る約2.6万ヘクタールの湿原を保全するため、地元の環境団体や専門家は熱心な活動を続けてきた。
 その1つ、NPO法人・トラストサルン釧路は、市民が自然環境の保護などを目的に土地を購入し管理するトラスト運動に取り組み、これまでに59カ所、約607ヘクタールの土地を取得した。「湿原保護基金」への寄付を募り、土地を取得している。
 サルンはアイヌ民族の言葉で湿原を意味する。釧路湿原が国立公園になった翌年の1988年に発足した。国立公園区域は湿原の中央部やわずかな丘陵地に限られる。
 このため、国立公園区域外の周辺丘陵地や南部湿原を対象に買い取りを進めてきた。丘陵地は湿原に水を供給する水源地域であり、南部湿原は市街地拡大が心配されていた。
 地道に続けてきた活動が、昨年あたりから脚光を浴びている。数年前から釧路湿原に増殖するメガソーラーを押しとどめる手段として注目されているのだ。
■メガソーラーの建設予定地や適地を次々に取得
 トラストサルン釧路が湿原の水源地域とともに土地の買い取りのターゲットにしてきたのは、南部の湿原地帯。開発が抑制されている市街化調整区域になっているが、太陽光発電施設が次々に作られている。建築基準法上の建物ではないため設置できるからだ。
 南部湿原一帯には、環境省レッドリスト絶滅危惧種のキタサンショウウオ、タンチョウ、猛禽類のチュウヒの生息が確認されている。キタサンショウウオ釧路市指定、タンチョウは国指定の天然記念物。チュウヒは激減しており、全国で「135つがい」(日本野鳥の会による推定繁殖つがい数)しかいない。
 トラストサルン釧路はここで2023年9月、あわせて約13ヘクタールの2カ所の土地を購入した。「私たちNPOの活動を知った所有者の方が連絡をくださり、活動を理解して土地の取得交渉に応じてくださった。土地の取得後にわかったのですが、取得した土地はメガソーラーの建設予定地の一部だったようです」と黒澤信道理事長(67歳)は明かした。
 この土地取得は、毎日新聞が2023年11月30日付で大きく報じた。記事によると、元の地権者は発電事業地として買い取りたいという話を持ち掛けられ、間に入った不動産業者と売買交渉を一任する書類を交わしたものの、期限を過ぎても進展がなかったことから、同NPOに連絡したという。
 このケース以外にも、地権者からの連絡が増えている。黒澤理事長は「昨年1年間だけで、10件ありました。うち4件は買い取り、6件は寄贈を受けました。ほとんどが、原野商法が盛んなころに買った土地についての相談でした」と話す。
 原野商法とは、1970年代後半~80年代に盛んだった「将来、高値で売れる」とのセールス文句で山林や原野を売り込む不動産ビジネスの方法。詐欺罪に問われたり、宅建業法の免許取り消しなどの行政処分を受けたりした事例も多かった。
 黒澤理事長が「宅地ではなく原野なのに図面だけを見せて売ったのだろうか。あるいは、将来このような宅地になる、と説明して売ったのか」と首を傾げる例もある。トラストサルン釧路が2012年に取得した南部湿原の20ヘクタールの土地の近くには、インターネット上で入手できる地番図で見ると、道路用地のように見える線に沿って100坪(330㎡)程度の区画が区切られ、宅地のように見える場所がある。実際には道路も区画もなく、ただ湿原が続いているのだという。
■自らの金で買い取りを行うキタサンショウウオの研究者
 釧路市指定の天然記念物、キタサンショウウオは、体長が約11センチと小さく、湿原の中のごく狭い範囲で一生を過ごす。4年前、環境省レッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。
 NPO法人・環境把握推進ネットワークPEG理事長の照井滋晴さん(41歳)は、釧路教育大学在学中からキタサンショウウオの研究を続けてきた。釧路市文化財保護条例に基づく釧路市立博物館による生息状況の調査に協力。その結果は、照井さんら関係者を慌てさせた。
 南部湿原のキタサンショウウオの生息適地と太陽光発電事業の予定地が重なり合っていることがわかったからだ。予定地は、資源エネルギー庁公表のFIT制度(再生可能エネルギー特別措置法に基づき有利な価格で再エネにより発電した電気を売れる制度)の認定情報をチェックすればわかる。
 2023年12月、照井さんは南部湿原の土地2カ所、計4627㎡を購入した。「近くにメガソーラーの建設予定地があり、比較的まとまった大きさの土地だったので。所有者さんがさまざまな費用を払っても損をしない価格帯で、自分の金で購入しました」という。
 この2カ所にキタサンショウウオが生息しているかどうか、まだ調査できていないが、「良い湿地が残っており、どのような生物が生息しているか調査を進めたい」と照井さんは考えている。
 照井さんに、どうやって取得可能な土地を見つけたのか尋ねると、「不動産会社が出している情報を見ました」という。照井さんは同様の方法で2023年3月にもNPO法人の会計から2カ所の土地を購入し、2024年4月、トラストサルン釧路に寄贈している。
原野商法で取得した土地を手放したい、という地権者
 不動産会社のハウスドゥ! 釧路中央店(株式会社アースハウス)の店長、佐伯友哉さん(31歳)は、2年ほど前に入社し、不動産の仕事を始めるにあたってさまざまな人々に話を聞き回った。親戚の人を訪ねた時、経済価値のない原野を所有しているがどうにかしたい、という相談を受けた。
 「価値がないことはわかっていましたが、売り出してみようと、ダメ元で売地として並べました。そうしたら、『ほかの不動産屋さんで断られたけど、扱ってもらえませんか』といった土地所有者からの連絡が入るようになりました」(佐伯さん)。通常、原野など経済価値の乏しい土地は扱わない不動産屋が多い。
 原野商法の舞台の1つとなった釧路湿原。約40年前に土地を購入した人、あるいは土地を購入した親から相続した土地を手放したい、と思う人は多いようだ。照井さんが最近、取得した土地の元持ち主も、そのような人たちだった。
 原野商法で湿原の土地を買った人たちのうち、「土地を手放したい」と思う人と、「固定資産税もかからないし、このまま推移を見たい」という人の割合はどのくらいなのだろうか。佐伯さんは、「いまは、半々ではないか」と見ている。
■不要な土地だが、環境価値のある土地をどうするか
 所有者不明土地や不要土地などの問題に詳しい東京財団の吉原祥子研究員によると、全国で「不要な土地を手放したい」という人は多い。
 その“証拠”として吉原さんが挙げたのが、「相続土地国庫帰属制度」への相談件数の多さ。登記手続きが済んだ土地で、不要なものを国が引き取る制度で、2023年4月にスタートしたが、2024年3月までに相談件数が2万3000件を超えた。
 国に土地を受け取ってもらうにはさまざまな要件があり、土地管理費を含む負担金を納めなければならない。実際に国が受け取ったのは2024年5月末時点で460件だが、高い関心を呼んでいる。
 不要土地を抱える人たちは、身近な市町村にまず相談することが多い。トラストサルン釧路によると、2012年に取得した湿原の場合、所有者が最初に釧路市役所に電話をかけ、「市が買い取ったり、寄贈を受けたりはできないが、湿原の土地の買い取りをしている環境団体がある」と聞いて連絡してきたという。
 なぜ市町村は不要土地を受け取らないのだろうか。「管理コストと管理責任が半永久的に続いていくからです。受け取るということは、行政目的があるから、受け取って管理責任を負担していくわけです。使い道のない土地をもらえば、火災、不法投棄、土砂災害が起きた時、管理責任を問われることになる。人もお金もないなかで、個人の財産にかかわることに積極的に首は突っ込まない」。吉原さんはこのように説明する。
 しかし、中長期的には、土地の管理や利用を個人や財産を継いだ親族にまかせている現状を変えなくてはいけない。吉原さんをはじめ土地問題にかかわる人々はそう考える。吉原さんは「自然環境保全のために土地の買い取りを進める民間の団体と自治体が何らかの形で協力、連携して活動するなどの方法が有効ではないか」と指摘している。
 釧路市には、2023年7月に施行された「自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」がある。また、市と釧路湿原自然再生協議会(国、北海道、釧路市釧路町など5市町村、民間団体、個人で構成)はそれぞれ、ホームページで希少生物の生息適地を明示し、そこへの設置を避けるよう発電事業者に呼びかけてきた。
 しかし、市内の太陽光発電施設は2014年6月には96施設だったが、2023年12月には631施設と6.6倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは22カ所。太陽光発電施設の進出に歯止めがかからない。市と市議会は現在、ガイドラインの条例への格上げを検討中だ。
 河野 博子 :ジャーナリスト
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 5月17日 YAHOO!JAPANニュース HBCニュース北海道「絶滅危惧種も生息する北海道・釧路湿原に大量のソーラーパネル?地元自治体からの保全の“お願い”も、事業者には強い規制かけられない現状
 貴重な生物が暮らす北海道の釧路湿原に今、大量のソーラーパネルが立ち並んでいます。
 なぜ、こんなことに?釧路湿原の未来はどうなるのでしょうか?
 視聴者からの疑問や悩みを調査するHBCの「もんすけ調査隊」にこんな疑問が寄せられました。
 依頼者(ポンタさん・40代・釧路市
 「釧路湿原に、大量のソーラーパネルが設置されていますが、自然は大丈夫なのでしょうか?」
 実は今、熊本県阿蘇山では、斜面にソーラーパネルが立ち並んだり、奈良県の古墳では、周りをソーラーパネルが埋め尽くしたりするなど、環境に優しいはずのソーラーパネルが、自然を破壊し、景観を損ねていると問題になっています。
 世界の湿地を保護する「ラムサール条約」にも登録されている釧路湿原は、国の特別天然記念物のタンチョウをはじめ、多くの貴重な野生生物が生息しており、4つの市町村にまたがる日本最大の湿原です。
 その釧路湿原は今、どのようになっているのでしょうか?
 調査員
 「ありました!多くのソーラーパネルが並んでいます」
 やってきたのは、北海道釧路市の隣にあるマチ、釧路町
 釧路湿原には、見渡す限りのソーラーパネルが設置されており、およそ360万平方メートルにも及ぶ広大な土地は、まるでソーラーパネルの畑のようです。
 これだけ多くのソーラーパネルを設置して、自然環境に影響はないのでしょうか?
 50年に渡り、釧路湿原保全と再生に取り組んでいる釧路自然保護協会の神田会長に聞きました。
 釧路自然保護協会 神田房行会長
 「ソーラーパネル設置業者と話したことはあるが、大元は外国の資本が主で、お金がもうかればいいというようなスタンスが見えているので、ある種の怒りも覚える」
 釧路湿原は日照時間が長く、土地が安くて平坦なので工事費用も抑えられます。
 さらに、住宅街が近いため、送電網も整備されているので、ソーラーパネルの設置に最適だといいます。
 そして、太陽光発電で作られた電気の多くは売電され、札幌などの大都市を始め、本州にも送られているのです。
 今、釧路湿原周辺の市町村には、多くの事業者から問い合わせが殺到しており、もし、その問い合わせのあった場所にソーラーパネルが設置された場合、2年後の釧路湿原は、このような姿になると神田さんらはシミュレーションしています。
 釧路自然保護協会 神田房行会長
 「今一番問題なのはキタサンショウウオ。生息地と太陽光パネルの開発予定地がほとんど重なっている」
 ソーラーパネルの設置予定地には、環境省レッドリスト絶滅危惧種に指定されているキタサンショウウオの生息地や、特別天然記念物のタンチョウの営巣地や餌場があり、貴重な生物が絶滅するのではないかと神田会長らは危惧しています。
 釧路自然保護協会 神田房行会長
 「再生可能エネルギーを推進することは大賛成だが、立派な自然があるのに、壊してまで太陽光発電所を作るのは、いかがなものかと」
 さらに、野生生物への被害は釧路湿原周辺にも広がっていると指摘する人も。
 日本野鳥の会 釧路支部 黒澤信道支部
 「どんどん工事が進んでいるところがあるので、どうやったら止められるのかなと。私たちが見たところ、レッドリストに載っている『オオジシギ』や『チュウヒ』が影響を受けている。工事以降確認できていない」
 黒澤さんは「工事が野鳥に影響を及ぼしている」と話します。
 日本野鳥の会釧路支部 黒澤信道支部
 「土盛りをして作ってしまうと、餌場にもならないし、営巣地にもならない。飛びながら餌を探す鳥は、目隠しになってしまう」
 一方、太陽光発電所の事業者によると…。
 太陽光発電所の事業者
 「建建設前に環境影響評価を実施し、建設後も環境影響に関する調査を定期的に継続しておりますが、いずれも環境に影響は出ていないとの結果が出ております」
 さらに釧路町によると…。
 釧路町環境生活課 大中公史課長
 「聞いた話では、キタサンショウウオなんかは適地へ移植をして、生態系を極力維持する姿勢を見せてもらったら、なおさら町としても、法規制以外のものは、なかなかできないのが実態」
 実は、事業者に強い規制をかけられない現状があるといいます。
 釧路町環境生活課 大中公史課長
 「自然公園法の中で十分に規制や保全と明記されているので、法律の中でできるものはできる、できないものについてはできないという認識」
 国立公園でもある釧路湿原は、自然公園法によって規定されていますが、実は保護レベルによって大きく3段階に分かれており、民有地と公有地が混在しています。
 つまり、普通地域の民有地では、必要な手続きを行えば法律的にソーラーパネルの設置が可能なのです。
 法律で許可しているものを条例で規制することはできません。さらに…。
 釧路町環境生活課 大中公史課長
 「国もゼロカーボンを進めている中で、進めるべきものと保全・調整すべきものが必要」
 国は温室効果ガス削減の取り組みを進め、2050年には実質ゼロを目指しています。
 そのため釧路町でも、役場の駐車場にソーラーパネルを設置したり、家庭での再エネ機器の導入に補助金を出したりと、ゼロカーボンシティの実現に取り組んでいる。
 その一方で、HBCの取材後の5月15日、釧路町ではソーラーパネルを設置して欲しくない場所を示した地図を、“町からのお願い”としてHPに公表しました。
 釧路町環境生活課 大中公史課長
 「ただこれも“お願いベース”にしかならないのが実態」
 実はこの手法、別の自治体では意外と効果を発揮しているといいます。
 鶴居村むらづくり推進係 和田彰係長
 「2022年1月から鶴居村の太陽光の条例を制定。太陽光パネルを設置したい事業者が、村の窓口に来たときに『村として設置を控えて欲しい』と言えるようになった」
 2年前に条例を制定し、太陽光発電所を設置して欲しくないエリアを公表した鶴居村では、工事の変更に応じる事業者も少なくないといいます。
 もちろん素直に話を聞いてくれる事業者だけではありません。
 釧路市環境管理係 佐々木敦史総括係長
 「国が太陽光パネルの設置について、アクセルを踏み続けて推進してきたので、規制というブレーキも、しっかり実効性のある法令等の整備や仕組みを作ってほしい」
 再生可能エネルギーの推進について、今一度立ち止まり、進め方を考え直す必要があるのではないでしょうか。
 北海道放送(株)
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 6月7日 MicrosoftStartニュース テレビユー福島「メガソーラー工事現場で泥水流失 県が中止指示も翌日撤回、その経緯は…福島
 © テレビユー福島
 福島市で開発が進む太陽光発電所で新たな問題です。6月2日、大雨で周辺の道路に泥水が流出し、福島県が一旦、工事の中止を指示していたものの、その後、撤回していたことが新たにわかりました。(※県は6日朝のTUFの取材に対し「中止の指示を検討していた」と説明していましたが、6日午後「中止を指示し、その後撤回した」と訂正しました。)
 阿部真奈記者「先日の雨で大量の泥水が流失した現場です。いまは対策としてこのように土のうが置かれています」
 道路に積み上げられた大量の土のう。周辺では、作業員が側溝から土砂などをかきだしています。
 福島市の先達山で開発が進む大規模な太陽光発電所=メガソーラーをめぐっては、景観の悪化などが、指摘されてきましたが、新たな問題が浮上しました。
 広い範囲で大雨が降った6月2日。この現場から大量の泥水が県道に流出しました。この流出について、県は5日、調節池に水を集める水路が、ふさがったことが原因とする結果を公表しました。
 この泥水の流出をめぐり、県が工事の中止を指示しましたが、直後に一転して撤回していたことが新たにわかりました。
 中止を指示したのは、県の出先機関で、森林の保全などを担当する県北農林事務所。中止の指示は4日に出されました。ところが、その後、本庁と協議した結果、「計画に違反する内容はない」などとして、中止は撤回されたということです。
 一方で、住民の間では、不安が広がっています。
 流出現場近くに住む人「この前の2日の雨でこれでしょ。行ってみたらやっぱりものすごい(泥水)こっちから」
 気象庁によりますと、2日に現場周辺で観測された降水量は30.5ミリ。今後はさらに強い雨も予想されます。
 流出現場近くに住む人「大雨降ったり、70ミリ、100ミリ…100ミリなんて降ったらとんでもないな、(住宅地まで)流れるね」
 住民の不安が尽きない先達山のメガソーラー。今後について県は「災害発生時の速やかな報告と適切な開発を指導していく」としています。
 工事中止を翌日撤回 経緯は
 泥水の流出をめぐる一連の経緯をまとめました。
 流出があったのは、福島県内の広い範囲で雨が降った6月2日のことです。これを受けて、県の農林水産部と出先機関で森林保護などを担当する県北農林事務所が、現地を調査し、聞き取りも行われました。
 そして、4日になって、農林事務所が、工事の中止を指示しました。元々の計画では、水が流れないように対策することになっていましたが、現に泥水が流出したため、計画に違反していると判断したわけです。
 ところが、中止の指示は1日経った5日、つまり直後になって、撤回されました。県によりますと、事業者側はすでに応急措置として水路を掘り直していて、対策を進め、そして、その後の雨でも流出は確認されませんでした。
 農林水産部と事務所が再度協議した結果、「流出への対策をしているので、明確な違反はなかった」と最終的に判断し、中止を指示しても「意味がない」として、撤回したということです。
 2日の降水量は、30ミリほどで、これからの季節はもっと強い雨も想定されます。今後同じようなことがないよう、行政にはきちんと監督する責任があります。
 関連するビデオ: 「こんな程度の雨でこんなことが起きていいのか…」メガソーラーの建設進む山で泥水が県道に流出【福島】 (福島中央テレビNEWS)
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 2023年6月2日 北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻
 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変
 河野 博子 : ジャーナリスト
 湿原に目立って増えた太陽光発電施設。右のソーラーパネル群から「外環状道路」を挟んだ向こう側にも建設が予定されている(提供:釧路市民がドローンで撮影)
 43年前に日本初のラムサール条約湿地として登録され、自然環境の再生・保全が進められてきた釧路湿原。そこに大小さまざまな太陽光発電施設が出現し「このままでは、湿原がソーラーパネルの海になってしまう」と環境団体や専門家が危惧している。半信半疑で現地を訪れると、太陽光発電の拡大圧を受け、市民団体や自治体が対抗策を探っていた。
太陽光発電施設が7年で5.5倍へ急増
 釧路自然保護協会をはじめ地元9団体が3月17日付けで「要望書」を、釧路湿原自然再生協議会(市民団体、専門家、国、道、市町村などで構成)が4月18日付けで「提言」を釧路市に提出した。いすれも太陽光発電施設の建設ラッシュを憂い、対策を求めている。
 釧路湿原といえば、総面積2.6万ヘクタールの日本最大の湿原で、1980年にラムサール条約湿地として登録され、国指定の特別天然記念物タンチョウをはじめ貴重な動植物が生息していることで知られる。湿原は、かつて「役に立たない土地」として扱われた。現在は、洪水調整機能や炭素吸収機能を含め、重要な場所として注目されている。
 その湿原の代表格である釧路湿原太陽光発電施設の乱立とは、本当だろうか。関東地方のメガソーラー問題を取材してきた私は「心配しすぎではないか」とさえ思った。しかし行ってみると、太陽光発電の存在は際立っていた。空港から釧路市内へのバスの車窓からもあちこちにソーラーパネルを散見し、釧路外環状道路などの高速道路を車で走ると、ソーラーパネル群が光って見えた。
 資源エネルギー庁のデータをもとに釧路市がまとめた「太陽光発電施設の推移」によると、2014年6月の時点で同市内の太陽光発電施設は96施設だったが、2021年6月には527施設へと5.5倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは1か所から21カ所へと急増している。
 特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。
 釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった。
 発電施設付近でタンチョウの営巣を確認
 市街化調整区域の湿原に並ぶソーラーパネルの近くに行ってみた。釧路市鶴野にある発電所は、大阪の発電事業者が3年前に運転を開始し出力は約2000kW近くある。パネルが並ぶ南端から見ると、土砂を入れて整地したうえでパネルを設置したとわかる。
 釧路市鶴野のメガソーラー。パネルが並んだ南側には湿原が広がっていた(撮影:河野博子)
 NPO法人「トラストサルン釧路」の副理事長でタンチョウの研究者、松本文雄さんによると、この発電所の付近はNGOによる調査でタンチョウの営巣が確認されてきた場所。また、日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤信道さん(66歳)によると、タカの仲間で環境省レッドリストで絶滅危惧IB類のチュウヒも繁殖していた。
 「野鳥観察仲間が繁殖を確認していた。チュウヒはネズミなど湿原の小動物を食べるが、こうしたエサ動物がいなくなるし、用心深い鳥なので、もう巣を作る状況ではないと思う」と黒澤さんは残念そうだ。
 釧路市山花の太陽光発電施設の場合、盛り土をした上にソーラーパネルが設置された(撮影:河野博子)
 このメガソーラーから西に8キロ、市街化調整区域の釧路市山花にある太陽光発電施設を見た。法律で発電設備、発電事業者、保守点検責任者の連絡先、運転開始年月日などを書いた看板の設置が定められているが見当たらない。周囲の湿原に比べて高さ2メートルほどの盛り土をし、パネルが設置されている。
 この発電施設付近で昨年春、タンチョウの営巣が確認された。タンチョウは樹木の上に巣を作るコウノトリなどと異なり、湿原の中にヨシなどで巣を作り卵を抱く。
 釧路市山花の太陽光施設のすぐそばにタンチョウの営巣地を見つけたのは、NPO法人・環境把握推進ネットワーク-PEG理事長の照井滋晴さん(40歳)。実はタンチョウの調査ではなく、両生類のキタサンショウウオの調査をしていて、たまたま見つけた。
 (写真上)ヨシやスゲを使って円い台形状の巣を作り、卵を抱くタンチョウ(写真下)ヨシに抱きつき、メスが近づいてくるのを待つキタサンショウウオのオス。左側はこれより前に産み付けられた卵のうで、光を当てると青白く輝き「湿原のサファイア」と呼ばれる(提供:照井滋晴さん)
 キタサンショウウオは、釧路市指定の天然記念物。3年前に環境省レッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。
 昨年1月には種の保存法に基づき、販売目的の捕獲が厳罰化されるなど保護策が強化された。体長11センチと小さく湿原の中で生まれ、動いてもせいぜい100mという狭い範囲で生涯を過ごす。
 照井さんは釧路教育大学在学中から研究を続ける。「可愛らしいということもあるが、そもそも1954年まで北海道にいることすら知られていなかった。生態や生息状況はわからないことだらけで、研究をやめられなくなった」と語る。
 キタサンショウウオの生息適地で建設ラッシュ
 釧路市文化財保護条例に基づき研究・保護活動を行う釧路市立博物館は、照井さんはじめ京都大学などの研究者とともに、これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。
 市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオ保全に協力して」と呼びかけている。
 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った。
 キタサンショウウオの生息適地が広がり、実際に生息が確認された場所も多い釧路市南部の市街化調整区域。そこはまた太陽光発電事業者がパネルを貼りたい場所であり、建設ラッシュが起きている。
 出力50kW未満の小規模な太陽光発電施設の場合、研究者や市の関係者が知らないうちに出現したケースも多い。今年4月に運転開始した太陽光発電施設の場合、道を挟んで反対側と同様の湿原だったが、あっという間に整地されてパネルが並んだ。
 こうしたソーラーパネルの「拡大圧」に、どう対抗するのか。キタサンショウウオの研究と保全活動を続ける照井さんに聞くと、意外な言葉が返ってきた。「基本的に太陽光の事業って止まらないと僕は思う。事業者は合法的にやられていて別に悪いことをしているわけではない。再生可能エネルギー自体、推進されているわけだし」
 小さな土地の買い取り運動を準備中の照井滋晴さん(撮影:河野博子)
 誰も損をしない方法はないのだろうか。照井さんは考え、キタサンショウウオが生息し、すぐそばまで太陽光発電施設が迫る小さな土地を買い取ったらどうだろうか、と思いついた。昔、自然保護や空港建設反対運動の際の戦術、「一坪地主」に似ているかもしれない。
 「インターネットで調べてみたところ、太陽光発電用地とか資材置き場にどうですかと、100坪くらいの土地が何か所も売りに出ていた。キタサンショウウオの生息地も何か所か見つかった。かつて原野商法により売られた土地もあるので、土地を買い取る活動を進めれば安く売りたいとか、寄付したいと思う人もいるかもしれない」と照井さん。
 今年3月には、2カ所の土地(合計1400㎡強)を計百数十万円で購入した。照井さんが代表を務めるNPO法人は、調査研究活動のほか環境アセスメント調査の仕事もしており、購入費は法人の資金から捻出した。35年前から土地を買い取り、自然保護地を作って観察会を開く活動を続けるNPO法人「トラストサルン釧路」などの団体にも相談して、今後、小さな土地の買い取りを進めるという。
 国立公園区域内にもメガソーラー
 国立公園区域外の湿原での太陽光発電建設ラッシュを見てきたが、メガソーラーは国立公園区域内にもある。釧路町の町有地に建つ「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」は大林組のグループ会社が建て、2017年4月に運転開始した。このメガソーラーの事業者は自然環境や野鳥などへの影響を調査しているが「外部に公表していない」(大林クリーンエナジー)。
 前出の日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤さんは建設が始まる前の2014年、調査を担当した研究者から相談を受けたため事業地に来てみた。国営草地化事業により牧草地にされた後、使われず放置されていた場所で、すでに湿原ではなかった。
黒澤さんはその事業地を歩き、タンチョウの羽がごっそり落ちていたのを見つけた。「タンチョウは換羽時期、つばさの羽が抜けるシーズンは安全な場所に退避し身を隠すんです。そういう場所になっていたのでしょう」
 国立公園区域内のメガソーラーの前で建設前に歩いた事業地の様子を振り返る黒澤さん(撮影:河野博子)
 「事業地を休息やエサ探しに利用していたタンチョウは見られなくなった。でもノビタキなどの小さな草原性の鳥は、それほど減っていないものもあったと聞いている。それはソーラーパネルを設置する時の工法と関係している」と黒澤さんは指摘する。
 盛り土をして地盤を固めるのではなく鉄パイプを刺す工法を取ったことで、周辺の自然環境への悪影響が減ったという。「太陽光発電施設をどうしても建てたいという事業者には、環境や生態系に影響が少ない工法をとってもらうことも一つの手になる」と黒澤さんは考える。
 釧路市は条例化を視野にガイドライン公表へ
 釧路湿原太陽光発電の問題は昨年12月以来、毎日新聞(ウェブ版)や北海道新聞などが取り上げて波紋を広げた。鶴居村が「美しい景観等と太陽光発電事業との共生に関する条例」を昨年1月に制定するなど釧路湿原釧路川流域5市町村は動き出していた。釧路市の蝦名大也市長は今年3月、市議会で「条例化を視野にガイドラインを作る」と表明した。
 釧路市は6月中旬に始まる市議会定例会でガイドラインを公表し、その後、条例化の検討に入る。「まずはガイドライン釧路湿原という豊かな自然環境を守っていくということを明確に打ち出す」(市環境保全課)としている。
 国の関係省庁、関連自治体、専門家、市民団体で構成する「釧路湿原自然再生協議会」は今年秋、設立20年を迎える。釧路川の蛇行復元事業などにより、自然環境の回復が進む。協議会会長の中村太士・北海道大学農学研究院教授は「日本最大の淡水魚イトウの生息が確認され、自然産卵の野生サケが増えた」と振り返る。
 ようやく自然が回復してきた今、浮上した太陽光発電施設の乱立問題。中村会長は「生物にとって重要な場所を明らかにして、市の条例でこういう場所は建設を抑制する、こういう場所は建設方法について市や関係者と協議する、というように具体的に地図の上で見える化する必要がある。景観が損なわれ観光に悪影響を及ぼすという懸念も大きい」と指摘している。
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 河野 博子 ジャーナリスト
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 6月14日 MicrosoftStartニュース ダイヤモンド・オンライン「農地の半数が太陽光パネルになる?絶望シナリオを避けるには「国営農業」しかない!
 鈴木貴博
 © ダイヤモンド・オンライン
 農家の高齢化が進み、日本の農業の未来が危ぶまれています。農地が太陽光パネルに変わったことで、将来的には食糧危機も起きる可能性があるのです。絶望的な未来を避けるには、禁じ手である「国営農業」が有効かもしれません。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博
 気候変動の影響で
 “美味しい米”は年々変化している
 いまから1年ほど前のこと、コンビニなどでおなじみの「八代目儀兵衛」の役員の方とお話しをする機会がありました。
 その当時、たまたま私の定宿のヒルトン系列のホテルが朝食で八代目儀兵衛のごはんを提供し始めました。それがとても美味しかったことと、「米の目利き」という仕事がなぜ成立するのか興味があったのでお話を伺ったのです。
 私が理解したことは、美味しいお米の産地やブランドは年々変化しているということです。背景には気候変動の影響が大きいと思われます。八代目儀兵衛は米の卸問屋が祖業ですから、そのことを極めて具体的に把握されています。
 私もグルメに関心は高いので、役得とばかりに私の嗜好をお話ししたうえで、それに合ったコメを教えてもらいました。ドンピシャでした。個人的な嗜好なのでブランド名は伏せますが、美味しいコメにはいろいろあることを改めて理解しました。
 さて、ここからが本題です。農家の高齢化が進み、日本の農業の未来が危ぶまれています。コンビニでも気軽に手に入るおにぎりや食卓のコメが、輸入品になってしまう日も来るかもしれません。
 兼業農家が離農
 →太陽光パネルがズラリ
 実は私の実家も兼業農家でした。祖母から父の代まで細々と農地だった場所は、今は空き家と耕作放棄地になっています。つい先日、それをどうするかを考えるために帰省しました。
 帰省して驚きました。帰省するまでは漠然と、「空き地は太陽光発電か何かで活用するかな?」と思っていたのですが、帰省してみた光景はまさにその通りでした。
 私の故郷で10年前には農地だった場所が、今ではまとまった形で太陽光発電施設になっています。
 車で走ってみるとわかるのですが、国道沿いにひろびろとした農地があって、途中である一角が急に広い太陽光発電設備になるとい光景が延々と続いているのです。そこから容易に想像がつくのは、
 「こことあそことあのあたりは離農したのだろう」ということです。
 農地を太陽光発電所にするためには、農地転用の認可が必要です。一般的には耕作放棄地を農地以外に転用することは簡単ではなかったのですが、最近の脱炭素、グリーン電力重視のご時世で、以前よりも農地転用がやりやすくなってきているのでしょう。目の前に広がる太陽光発電設備を見ると、そのことが確信できます。
 戦後の農地改革で、日本では多くの農業従事者が自分の農地をもてるようになりました。実は私の実家は農地を差し出した側で、子どもの頃、車で自宅の周辺を走るとよく祖母が、「ここもあそこも、昔はぜんぶうちの田んぼだったんだよ」と恨み半分で教えてくれたものでした。
 農地改革の精神を守るために制定されたのが農地法で、この法律によってふたたび大地主が農地を集約する動きが起きないようになりました。このことが実は、副作用として長年、農業の大規模化を妨げてきたのでもありました。
 高齢化+気候災害で国際的な農作物価格が上昇
 「食糧安保に重要な農業」が大ピンチ
 ここにひとつ、現在、農業の未来を手づまりにしている要因があるのですが、まずは状況を整理していきたいと思います。
 農林水産省によれば現在、自営農家の平均年齢は68.4歳で、農業人口の86%を65歳以上が占めるということです。言い換えるとこのままだと15年後には今の86%が80歳を超えるわけで、必然的に離農世帯が増加します。
 その影響はというと、今107万戸ある農家の数は、2040年には30万戸前後、2050年には17万戸まで減少します。それまでに日本の人口も16%減りますが、農業生産は半減すると予測されます。
 直近の日本の食料自給率はカロリーベースで38%でG7で最も低い状況ですが、今から25年後には20%以下に落ち込むことになるわけです。
 脱炭素の電力供給増という視点では好ましい足元の離農状況も、食料安保で考えると危機的な問題です。
 日本ではあまり報道されていませんが、今ちょうど、ブラジル南部の農業地域で大規模な水害が起きていて、結果として農作物や鶏肉などの国際価格がこの夏にかけて上昇しそうな状況になっています。
 今回の事態だけでなく、気候災害による国際的な農作物価格の上昇はこの先、世界的な大問題になっていくはずです。
 では、日本の農業はどうすべきでしょうか。高齢化による離農が問題なら、論理的には法人化がひとつの解決になると考えられるかもしれません。
 私の友人が大手商社で農業ビジネスを担当しているので話を聞いてみると、農業の法人化に長年取り組んできてわかったことは、海外の方がずっと儲かるということでした。
 日本の農地では大規模法人化しても儲けが薄く、結果としてブランド野菜や果実など高付加価値農業にしか興味がわかないというのです。
 さて、ここまでの状況から、私の専門である経済の未来予測の観点で日本の農業がどうなるのか、状況をまとめていきましょう。
 日本の農業で起こるであろう
 3つの予測
 【予測1】 高齢化が確実に進む
 未来予測で一番確実なのは人口予測です。農業については確実にこれからの10年で大幅な労働人口減少が起きます。
 そういった離農する高齢者は、人生100年時代ですから、離農した後も生計をたてる方法が必要です。手っ取り早いのは農地を発電所に転換することです。つまり今起きている、離農して田畑が太陽光発電に変わるという現象は、今後、確実に加速するということです。
 【予測2】 残った農業は高付加価値化に向かう
 当然ですが、この状況を止めるために国も対策を考えることになります。現状でも農地法が改正されて農業法人がこれまでよりも大規模化できる道筋は進みました。
 それはいいことなのですが、前述した理由から、結果として農業は高付加価値化に向かうことになります。産業構造全体として苺やメロンなど高付加価値で輸出できるブランド農作物に力が入れられます。
 結果として日本の農業は価値の高い農作物を輸出して、そのお金で麦やトウモロコシなどコモディティの農作物を海外から買う形に変わっていきます。
 これは産業構造としては成立しますが、食料安保の視点では脆弱性が増すことを意味します。
 【予測3】 気候変動で世界の農業のリスクは増大する
 さて、ここでもうひとつ確実に当たる未来予測の要因が加わります。地球の平均気温は2050年頃には予測通り、産業革命当時から比較して1.5度上昇するでしょう。これは今行っている脱炭素施策がすべてうまくいった場合の数字です。
 つまり、欧州を中心に脱炭素政策の巻き戻しが始まっている政治環境を考えると、1.5度上昇の時期は前倒しで2040年代にもそうなることが確実だとも予測できます。
 問題はそうなることで、これまでと同じようには農作物が栽培できなくなるということです。
 冒頭、おいしいコメの産地が年々変化しているという話をしました。いい話をすると、北海道のコメは年々美味しくなってきています。一方で、地球の平均気温が暑くなってくると南に行けば行くほど、米を栽培するためには品種改良が必要になります。
 この問題は日本よりも先に、アジアの穀倉地帯を直撃します。容易に想像できることは、2040年代には食料危機が世界のどこかで現実的な社会問題になるという事態です。
 では、そうならないためのよりよい未来は設計できないでしょうか?
 施策はいろいろありえますし、実際に農水省もいろいろと手を考えています。
 ただ危惧すべき点もあります。6月12日に国会を通過した「食料・農業・農村基本法」では政府はついに「自給率」を最大目標から外したことが野党から批判されました。
 手詰まりの未来が予測される状況下ですから、食糧安保の基本を国内生産から輸入に広げる政府の意図は理解はできます。
 しかし輸入すらできなくなる気候変動のリスクを考えれば、日本にとってもこれまで議論されなかったような異次元の解決策が求められるタイミングではないでしょうか 。
 経済評論家の第三者的立場で、これまで禁じ手とされてきた農業の国営化を軸とした3つの戦略施策を提言してみます。
(1)国営農業の育成
 想定される悪い未来を前提に考えると、要するに米に代表される「儲からないけれども食糧安保に重要な農業」を誰かが大規模にやっていかなければならないのです。
 皮肉抜きに、利益が出ない事業を大規模に行うのは、この国の得意技です。
 農業の国営化はこれまで悪手だとされてきました。
 農業は基本的に海外の農作物から国内の農家を守る必要があります。圧倒的にコストが有利な海外の大規模農業の生産物に対抗する手段として、どの国も所得補償と価格保証を農業政策の軸に置いて、外圧と戦ってきた歴史があります。
 ただ、この従来政策には問題があります。所得補償と価格保証をあてにして「農業をやろう」という人材がこれまでは出てきていた。それに限界が来て、人材が農業に流入しなくなっているという現状に対する対策を考えなければならないというのが新しい現実です。
 そこで米に限定して、他の農業と切り離す形で、国営農業政策を海外に認めてもらうような考え方はありえないでしょうか。
 国が農業をやってもコスト的に海外のコメには勝てない。それでも、コスト度外視で政府が赤字でもコメを作って自給率の不足分を補う。小売価格は国内の農家が農業を続けようと考える水準に設定する。それが成立できたら未来の前提は変わります。
 分割民営化の流れと逆行する施策ではありますが、かつての三公社五現業と比肩する一大事業体として、国営農業を本格的に立ち上げる以外に、自給率を上げる方法はないといったん考えて話を進めたいと思います。
(2)離農する農家が農地を手放しやすくする
 国営農業を立ち上げるにあたっての最大かつ喫緊の課題は、私のような離農家族が平らな農地を太陽光発電所にしてしまうのをいかに止めるかです。
 これは結構難題であると同時に、政府ならば解決できる課題でもあります。
 それは農業を止めた農家が、農地転用して太陽光発電を始めたほうが儲かるという構造を断ち切ればいいのです。
 経済の視点で単純化すれば、自前で太陽光発電をして得られるよりも農地を国にリースした方が収入が増えるようにすればいいはずです。
 農家が太陽光発電を自前で始めるためには、借金をして初期投資が必要になります。途中で災害が起きてパネルが破損するようなリスクもありますし、昨今では銅線が盗まれて事業が立ち行かなくなるケースもあります。
 それよりも毎年、一定額が国からリース料として支払われるなら、その方が農家にとっては楽です。農家が国営農業体に対して不動産賃貸を始めるように政府が促すのです。
 リスクは国がすべて追うことにして、場合によっては営農型太陽光発電施設のように、農業をしながら太陽光発電も同時に行うような形で国が農地を使うこともできるようになるとします。要するにわかりやすく簡単に儲かるスキームを作れば、農家もその話に乗りやすくなるのです。
(3)グリーン電力ビジネスを農水省で手がける
 一見、成立しそうな(1)と(2)の施策ですが、大きな問題があります。脱炭素を目指してグリーン電力を増やすという国の施策に逆行するかもしれないのです。
 その問題を起こさないためには農水省自体がグリーン電力を手がけることでマイナスにならないやり方を考える必要があります。
 先ほど述べた営農型太陽光発電もそのひとつですが、農水省には外局に林野庁があり、そこでは膨大な国有林保有しています。これはかつての五現業のひとつに位置付けられる事業です。
 歴史的経緯や現在の政策をいったんガラガラポンすることができる前提で大胆にお話ししますと、農地を太陽光発電に転用するぐらいなら、国有林太陽光発電に利用したほうがいいという考え方はありえます。
 もちろん、今、日本のどこかで行われているように、勝手に山林をはげ山にしてしまって、びっしりと太陽光パネルを敷き詰めるようなやり方だと、いつ災害がおきるかわかりません。ですから、そのような「経済優先のやり方」は絶対にやめるべきです。
 そうではなく、国有林発電所にするのであれば、経済的には最適ではない形で、木々を一定量残したうえでの発電施設化を進めるべきです。環境破壊にならない範囲で、太陽光パネル風力発電所を山林のところどころに少しずつ敷設していくのです。
 このような経済合理的でない開発は民間企業では採算にあいません。
 一方で農水省全体で考えると、自給能力を上げ、グリーン発電能力も上げ、乱開発による森林伐採も抑制し、民間では不採算な事業を公共事業として行うという可能性が生まれるのではないでしょうか。
 さて、今回の記事はあくまでイチ当事者による問題提起です。
 とはいえ地球温暖化食料安保に問題が生じることが確実に予測される未来と、安易に進む農地転用による太陽光発電が増加しているという現状については、トータルで政府が取り組むべき課題であることは間違いありません。
 提案した掟破りのやり方がいいかどうかはともかく、米の未来についての議論を加速する時期に来ているのではないでしょうか。
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