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2024年6月26日6:25 YAHOO!JAPANニュース デイリー新潮「政治家の「パワハラ」は「ブラック霞が関」を強化する 追及パフォーマンスの副作用とは
変わらない「ブラック霞が関」状態
官僚の仕事量を増やし、残業が避けられない原因の一つが、国会対応の業務である。その実態とは――
6月11日に放送された「クローズアップ現代」のタイトルは、「悲鳴をあげる“官僚”たち 日本の中枢で今なにが?」。霞が関の官僚たちのブラックすぎる労働環境についてのレポートを見て、そのキツさに衝撃を受けた方もいれば、「まだこんな状態なのか」とあきれた方もいることだろう。
【写真を見る】「378時間の残業!!!」驚愕のブラック職場 ⇒ 夜中なのに驚きの状態〈実際の写真を見る〉
番組に出演していた元厚生労働省官僚の千正康裕(せんしょうやすひろ)さんが、官僚たちの置かれた苛酷すぎる状況を詳述した著書『ブラック霞が関』を発表したのは2020年のこと。それから4年近くがたち、民間企業が「働き方改革」を進める中、指導する立場の官庁では相変わらず残業を強いる状況が改善されていないようだ。
官僚の仕事量を増やし、残業が避けられない原因の一つが、国会対応の業務である。その実態を同書から見てみよう(以下、『ブラック霞が関』から抜粋、再構成しました)。
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国会審議前日の夕方から夜にかけて、質問者の国会議員から省庁に対して質問内容が通告される。自分の部署が担当する内容に関する質問であれば、そこから急いで答弁メモを作成し、関係部署とも調整を済ませ、上司の決裁をとり、必要な資料を整えて、翌日早朝の大臣の出勤に間に合わせる。国会本番の前に大臣と官僚の間で行われる答弁方針を決める勉強会(「答弁レク」という)に使うからだ。当然、国会質問が頻繁に当たる部署もあれば、ほとんど当たらない部署もある。
国会審議が当たる部署というのは、世間の注目度が高い重要政策を担当している部署である
忙しくても、自分がやっている仕事が社会の役に立つ意義のあるものだと思えば、乗り越えられるし、プロジェクトが終わった時には、達成感と成長の実感を持てるものだ。実際に、ニーズの高い法律改正のような仕事をしていて精神を病んで休職に追い込まれるケースは少ない。一番きついのが、国会対応、野党合同ヒアリングなどである。
先ほど説明した通り、国会審議は、ぶっつけ本番のアドリブではない。質問者の問題意識を答弁する役所側に事前に伝え、それに対する方針を官僚と大臣が議論して、どのように答えるのかを決めて本番に臨むのだ。
そう聞くと、「なんだ、出来レースの茶番なのか」「大臣は官僚のメモを読むだけか」と思う方もいるかもしれない。しかし、そうではない。どんな優秀な大臣でも、幅広い役所の隅々まで細かいことを把握するのは不可能だ。事前に質問者の細かい問題意識を理解した上で、それに対する具体的な答えを準備しないと、全てが「ご指摘の点については、実態を把握した上で検討してみたいと思います」というような抽象的なやりとりになってしまい、議論が前に進まないのだ。
事前に質問者の国会議員の問題意識を官僚が聞き取って、過去の経緯や各方面への影響なども考慮しながら、役所としての方針を答弁メモに落とし込んでいく。そのメモの内容をベースに、大臣と議論をして官僚が作った答弁書を、大臣の指示で前向きに書き換えたりしている。そうやって大臣が理解した上で方針を指示して、修正した最終版の答弁書を持って大臣は国会で答弁しているのだ。
国会質問によって政策を動かしていくためには、この大臣と官僚の議論が実はとても大事だ。この過程で大臣が理解した上で方針が決まり、政策が前に進んでいくからだ。
揚げ足取りや政府の失点を狙うのではなく、質問の機会を通じて政策を前に進めようとする国会議員は、野党議員であってもこの事前の通告を丁寧に行う。こうした野党議員の指摘を受けて政策を見直すことも、決して珍しいことではない。質問の背景には実際に困っている国民がいるので、大臣も「痛いところを突かれた」と思うと、部下の官僚に対応を指示するのだ。
前日夜の質問通告が国会待機と深夜残業の元凶
質問内容を質問者の議員が省庁に事前に伝えることを「質問通告」という。「通告されていないので、すぐに答えられない」と総理や大臣が答弁している姿をテレビで見た方もいるかもしれない。この質問通告のタイミングは与野党の申合せで原則2日前の正午までに行うこととされているが、その期限が守られることはほとんどなく、前日の夕方から夜にかけて通告されることが多い。内閣人事局が全省庁を対象に行った「国会に関する業務の調査・第3回目 (調査結果)」(2018年12月28日)によると、質問通告がすべて出そろった時刻の平均は、前日の20時19分である。
国民の負託を受けた国会議員からの質問になるべく丁寧に答えようと準備するのは当たり前だが、事前通告が前日の夕方から夜にかけてなされる限り、深夜から明け方までの対応が必要になり、官僚の睡眠時間は削られ続ける。中には、役所が気づいていない鋭い質問によって政策が動くこともあるが、単なる揚げ足取りのような質問もあるし、そもそも「待機児童対策について」とか「新型コロナウイルス感染症について」など、項目しか通告してこない国会議員もいる。
そういう項目だけの通告の場合、あわせて「問合せ不可」という指示を役所にしてくることが多い。具体的に何を議論したいのか、質問者の議員に確認することもできない。そうなると様々な質問を想定して大量の想定問答を徹夜で作成することになる。何が精神的にきついかというと、こういう作業のせいで本来やらなければいけない政策を考える仕事が進まなくなることだ。
夕方から朝まで寝ずに国会答弁を作成した後、日中は本番でどんな質問が出ても対応できるように官僚は国会に同席する。夕方、役所に戻ってくると、フラフラだ。しかし、元々やらなければいけない仕事は何一つ進んでいない。そういう日々を続けると、自分の時間を国民のために使えている実感がなくなり、どんどん疲弊してくる。
野党合同ヒアリングで答えられない官僚
[07:00 仕事開始][27:20 退庁]ブラック労働は今や霞が関の標準だ。相次ぐ休職や退職、採用難が官僚たちをさらに追いつめる。国会対応のための不毛な残業、乱立する会議、煩雑な手続き、旧態依然の「紙文化」……この負のスパイラルを止めなければ、最終的に被害を受けるのは国家、国民だ。官僚が本当に能力を発揮できるようにするにはどうすればいいのか。元厚生労働省キャリアが具体策を提言する 『ブラック霞が関』
国会以外にも、国会議員が官僚に説明を求める場面はたくさん存在する。個別の国会議員が説明を求める「議員レク」、文書で資料を求める「資料要求」、そして各政党の会議への出席依頼だ。これらも、国会議員や各政党が政策を議論するための説明だから、民主主義のプロセスとして大切な仕事だ。とはいえ、不祥事や政権を追及するようなテーマの時の野党合同ヒアリングは、精神的にかなりきつい。
2000年代半ばからこうした会議はテレビカメラ入りで行われるのが通例となり、テレビで放映されるようになった。最近はインターネットでも動画配信される。議論が国民から見えるようになったのはよいことだが、テレビが入るとなると追及する議員側も厳しく追及する姿勢を見せたいという事情もあり、時にはパワハラに近いような追及も見られる。
もちろん、野党が必要とする回答や情報を政府が出さないから、より追及が激しくなるというケースもあると思うし、政府は説明責任を果たすべきとも思う。ただ、官僚の判断で勝手に野党に新しい回答をすることは許されていない。善し悪しはさておき、政権の立場からすれば、追及のネタを提供するなと考えるのは当然だろう。従って野党に新しい回答や情報を提供するためには、大臣など役所にいる政治家の幹部の了解が必要となる。
つまり、野党合同ヒアリングに出席している官僚は、ゼロ回答をしなければならない前提で追及の矢面に立つことになるので、要領を得ない説明を繰り返すことになる。
野党が不祥事などを追及する会議に、回答の権限を与えられていない官僚を出席させて、「厳しく追及している姿を国民に見せる」以上の意味があるのかは疑問である。回答する権限のある政治家の幹部が説明すべきだろう。政策がテーマなら詳しい官僚が出て行って説明すればよいが、森友学園、加計学園、桜を見る会の問題などは政権の姿勢を追及する話なのだから政治家同士で議論すべきと思う。
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官僚を問い詰める姿は「絵」になる。また官僚、官公庁をチェックするのも政治家の役割である。しかし官僚を疲弊させることは、決して国益につながるものではないことを少なくとも政治家は肝に銘じるべきではないか。
デイリー新潮編集部
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6月25日5:02 YAHOO!JAPANニュース THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)「平均月収40万円「エリート官僚」の危機…「もう、無理。」と悲鳴!50人に1人が長期離脱の衝撃事実
人事院は国家公務員の最新の動向についてまとめた、令和5年度『公務員白書』を公表しました。そこからは、なんとも悲惨なエリートたちの現状を読み解くことができます。みていきましょう。
【ランキング】都道府県別「公務員の平均給与」…3位「神奈川」2位「静岡」1位は?
民間準拠の国家公務員の給与…基本給月33万円、充実の手当てでトータル40万円超え人事院が発表した『令和5年度公務員白書』では、「職員一人一人が躍動でき、Well-beingが実現される公務を目指して」として、昨年1年間の動きについて報告しています。
さらに国家公務員の置かれている現況について記されています。いくつかピックアップしてみていきましょう。
そのまえに、国家公務員とはどのような職業か、確認していきましょう。ひとくちに国家公務員といっても様々な職種がありますが、わたしたちが国家公務員と聞いて真っ先にイメージするのは行政事務。中央省庁や出先機関に勤務し、それぞれの行政分野の事業等が円滑に運営されるように事務処理を担当します。
そんな国家公務員になるには採用試験に合格する必要があります。採用試験は総合職、一般職、専門職、経験者採用があり、試験区分によって受験資格や試験内容などが異なります。試験合格後、勤務希望の省庁の選考を受け、その選考を通れば採用が決定します。
そんな採用試験の春の結果が先月発表されました。申込者数h2万4,240人で、前の年度より2,079人、率にして7.9%減。現行の試験制度になった2012年度以降、最少となりました。大学別にみていくと、トップは「東京大学」で189名。「京都大学」120名、「立命館大学」84名、「東北大学」73名、「早稲田大学」72名と続きます。
この結果でいわれているのが「東大合格者の減少」。そもそも志願者が減っているのが合格者減の要因で、東大生の官僚離れが鮮明になっています。一方で女性の採用者は増加傾向にあります。
話は白書に戻り、国家公務員の現状をみていきます。
国家公務員の最新給与事情
まずが給与について。国家公務員の給与は民間準拠が基本で、民間給与との比較は、人事院が実施する「国家公務員給与等実態調査」と「職種別民間給与実態調査」に基づいて行われています。
全職員(平均年齢42.3歳)の平均給与をみていくと、基本給にあたる俸給は平均33万4,218円。地域手当てや扶養手当、住居手当などを含めて平均月41万2,747円。また行政職俸給表(一)適用職員に限ると、平均俸給が32万2,487円。手当てなどを含めて40万4,015円。
これを民間企業と比べると「民間企業(大企業)>国家公務員>民間企業(中小)」。サラリーマンの7割を占めるといわれている中小企業勤務よりも平均給与が上回っていることから、「国家公務員は高給取り」というイメージがついていますが、それはほんのひと握り。大企業を下回る給与が平均です。
「心を壊す国家公務員」じわりじわりと増加も、労働環境改善は難しい現状
国家公務員の生涯設計
平均月収40万円ほどの国家公務員ですが、、現在65歳定年に向けて段階的に引き上げられている段階。そんななか、令和4年度の定年退職者は5,834人。そのうち給与法適用社員は5,610人でした。また勤務延長した職員は1,529人で、そのうち給与法適用社員は1,527人でした。
また定年の段階的な引き上げにより導入された再任用制度は、令和4年度をもって廃止。令和4年度に旧再任用制度で再任用された職員は1万8,487人(給与法適用職員17,805人、行政執行法人職員682人)でした。これまでの給与法適用職員の再任用の実施状況をみていくと、短時間勤務が中心。民間企業の再雇用ではフルタイム勤務者の割合が優勢で、時短勤務が多いのは国家公務員の特徴といえるでしょう。
国家公務員の労働環境
前出のとおり、昨今は官僚離れがいわれていますが、その要因のひとつとされているのが、国家公務員の労働環境。「ブラック職場」と揶揄され、深夜になっても電気が煌々とついている霞が関・官庁街の様子はたびたびニュースでも紹介され、「官僚はエリート職なのに割が合わない」というイメージが定着してしまいました。
白書によると、職員の勤務時間は、原則として1日7時間45分、週38時間45分を原則としながらも、「公務のため臨時又は緊急の必要がある場合には、超過勤務を命ずることができる」としています。
超過勤務の状況につ いて、令和4年の年間総超過勤務時間数は全府省平均で220時間。組織区分別に見ると、本府省では397時間、本府省以外では179時間でした。また、超過勤務時間が年360時間以下の職員の割合をみると80.3%でした。 また、国家公務員の超過勤務については、命ずることがで きる上限を設定してものの、大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処 理することを要する業務に従事する職員に対しては、上限を超えて超過勤務を命ずることができるとしています。このいずれの上限も超えたのは、全体で7.7%。本府省で15.3%でした。
このような労働環境下、肉体的にはもちろんのこと、精神的にも疲労。精神疾患を患い、長期離脱の場合も。令和4年度に限ると、精神および行動の障害による長期病休者数は5,389人。全職員の1.92%。つまり50人に1人は精神・行動障害を抱え、長期入院が必要になっています。
さらに時間軸でみていくと、2018年度1.39%→2019年度1.51%→2020年度1.41%、2021年度1.70%と、じわりじわりと右肩上がりなのが分かります。また精神・行動障害を抱える職員の割合を年齢別にみていくと、19歳以下では2.45%、20代が2.61%、30代が2.01%、40代が1.76%、50代が1.765%、60代が0.74%。特に若年層で割合が多く、また増加率も高くなっています。
精神・行動障害の増加については、民間でもいわれていることではあります。要因は職場だけでなく、ライフスタイルの変化に伴う孤独感の増大や環境ストレスなども挙げられていますが、だからこそ働き方改革を推し進めることが重要といわれています。
しかし官僚の間では働き方改革は遅々として進まないという悲鳴が聞こえてきます。
――国会があると、深夜対応せざるを得ない
――国会が変わらないと、私たちの働き方も変わらない
国会の変革。なんとも大きな難問です。ただここを変えていかなければ、国家公務員50人に1人が精神・行動障害という現状を変えられそうもありません。
[参照]
人事院『2024年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表』
人事院『令和5年度公務員白書』
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6月12日17:02 YAHOO!JAPANニュース ダイヤモンド・オンライン「東大生が「キャリア官僚」を見放した当然の理由…霞が関の「エクセル方眼紙」が笑い事じゃないワケ
東大生の「キャリア官僚離れ」が加速している。過酷な労働環境などが伝えられる中、高学歴エリートにとって魅力の少ない選択肢となってしまったのかもしれない。この問題を解決するにはどうすればいいのか。経営学の視点で考えてみた。(やさしいビジネススクール学長 中川功一)
【この記事の図を見る】
● エリートの「キャリア官僚離れ」が加速 東大出身者は過去最少
先日、人事院から2024年春の国家公務員採用(総合職)の結果が公表された。
出身大学別の人数では、東大生が最も多く189人。だが、これは過去最少で、全体の10%を割り込んだ。
そもそも、国会公務員総合職の試験を受けてキャリア官僚を目指す人自体が減っている。24年春は、国家公務員総合職試験の申込者数が過去最少だった。高学歴の人々にとって、キャリア官僚が魅力の少ない選択肢になりつつある。
どうして、このようなことになったのか。ここからどうやって改革していけばよいのか。経営学者として分析、解説をしてみたい。
● 働き方改革が進む中 「変わらなかった」官僚の働き方
キャリア官僚が選ばれなくなった理由――。それについては、わざわざ語るまでもないほどに自明かもしれない。
過酷な労働環境、低賃金、働き甲斐のなさ。どんな側面をとっても、わが国のエリート人材にとって魅力的な部分がない。
だがそれは、キャリア官僚という仕事がそのように「変わってしまった」からなのではなく、むしろ民間企業がよい職場づくりに励んで変わり続けていく中で、国家公務員の働き方だけが「変わらなかった」ことの帰結である。
2000年代ならば、霞が関で夜中の2時3時まで働いて、タクシー券を使って家に帰るといった生活は、「それだけ社会から必要とされている重責な仕事」を任されている証だと感じていた人も多いように思う。終電で帰れる人を「おまえの仕事は楽でいいね」とばかりに、皮肉るような文化さえ、高学歴社会の中にはあった。
官僚に、広告代理店に、グローバルメーカーに、外資コンサルに就職し、それぞれの仕事の厳しさを競い合っていたのだ。
だが、00年代も半ばころから、空気は変わり始める。
長時間働くというのは非効率であるとの考え方が広がり、優秀さとは限られた時間にスマートに仕事をこなすことだと考えられるようになった。
賃金水準もこの頃から民間と公務員で差がつきはじめ、それはエリート層で顕著になっていった。
仕事もプライベートも輝いているというのがあるべき姿とされ、国会対策で政治家のために夜まで張りついているなどという姿は、決して格好良くは見られなくなってきた。
このまま、キャリア官僚の働き方が変わらなければ、国家の中枢から優秀な人材がいなくなるかもしれない。
国家公務員が機能しないということは、税金の払い損になりかねないということだ。私たちの社会インフラが正しく編成されなくなるリスクをはらんでいるわけで、これは誰にとっても他人事ではない。
● 中央省庁の改革に 必要な「仕組み」とは何か
では、どうしたらいいか。
この問題は、実は極めて単純な経営学の問題である。
風土や文化の問題ではない。人材の能力の問題でもないし、わが国の性根が腐っているとかそういう話でもない。
「組織の中に、変えていくための仕組みが入っているかどうか」というだけの話だ。
近年、組織のあり方を批判される組織に共通項を見いだすとすれば、いずれも自らをドラスティックに変えていく仕組みを内部に有していないことである。
先述した問題はもちろん中央省庁も把握している。なのに変われない、変わるスピードが遅いというのは、「変革するための仕組み」に問題があると考えるのが妥当だろう。
では、どんな仕組みが求められるのか。
例えば、1980年代には変革の基本モデルとして、ロバート・バーゲルマンによる「戦略変更モデル」が提唱されている。バーゲルマンは、米インテルがどのように戦略を転換したのかを分析した。
バーゲルマンによれば、「ボトムアップとトップダウンの2種類の改革メカニズムを社内に導入しておくこと」が重要だという。
ボトムアップ側では、現場での自律的な行動変容のトライアンドエラーが許容されることが大切となる。それが大きな変革の文脈(戦略文脈)を生み出していくことで、組織全体の改革へと結実していく。組織の根本的な考え方(戦略コンセプト)の転換につながる。
一方、トップダウン側では、トップから「こういうふうに変わっていこう」とする命令や発言が行われ、それに沿って組織のルールが変革される(構造文脈)ことで、現場の変異が促されていく。
この2つのライン(ボトムアップ型とトップダウン型)が相互作用を生み出す中で、組織はとどまることなく変化を続けていくことができるようになる。
● 時代の変化は早い 変革にもスピード感が必須
私の知る限りではあるが、日本の中央官庁には自らの改革機構を備えてはいるが、ボトムアップもトップダウンも、非常に鈍重に動いているようである(ワークグループを作って検討、吟味して実施をして……時には1年がかりで、ちょっとずつ変える)。
かつて本田宗一郎はアイデアを思いついては朝令暮改も辞さずに生産ラインを作り変えたという。
組織に全く落ち着きはなかったというが、そのスピードで進化を続ける事業組織と、毎年1歩ずつの改革を重ねる組織では、どちらのほうが競争力を保持し得るかと言えば、答えは明白なはずだ。
そしてまた、あらゆるものごとが日進月歩な世界で、そんなスピードではやり方を改める頃にはもう時代は次のステージに進んでしまっているだろう。
AIが論じられるその隣で、ワードか一太郎かだとか、印鑑だとか、エクセル方眼紙だとかが真面目に議論されている滑稽さを笑っている余裕は、もう私たちにはない。
中川功一
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4月11日18:51 YAHOO!JAPANニュース THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)「「もはや勝ち組とは言えない…」国家公務員の給与に見える、日本の悲哀
省庁に総合職として勤める国家公務員、通称キャリア官僚はエリートの象徴と言える存在です。しかし現在、「富と名声」を得られる職業ではない様子。国民の生活を担う国家公務員の給与と生活はどのような実情にあるのでしょうか。
【ランキング】143職種「平均年収」…第1位の驚愕の給与
「キャリア官僚」ハードさに比例しない給与額
人事院が発表している『令和5年 国家公務員給与等実態調査の結果概要』によると、行政事務を行う職員の平均給与月額は41万2,747円(平均年齢42.3歳)。残業代は含まれていません。
一方、厚生労働省は『令和5年 賃金構造基本統計調査』にて、正社員・正職員の賃金を月額33万6,300円(平均年齢42.7歳)と公表しています。
国家公務員の給与は、世間一般の給与と比べれば高い水準であることはわかります。しかし彼らはやはり、東京大学をはじめとした有名難関大学を卒業していることがほとんどです。コンサルや商社といった大企業で支払われる給与と比べると、「高給取り」とは言い難いでしょう。
例えば三菱商事の平均年収(2023年3月期)は、有価証券報告書から「1,939万3,985円(平均年齢42.9歳)」であることがわかっています(なお、有価証券報告書からわかる年収には残業代が含まれており、ボーナスも含まれていることが多いと言われます)。
国家公務員の平均年収はそれほどにはなりません。まず残業を考慮しなければ、年間4.45ヵ月分の給与がボーナスとして支給されるため、41万円×16.45ヵ月で約674万円。さらに月に50時間の残業をつけられた場合、月給41万円であれば基礎賃金は2,560円であるので、約16万円の残業代を得ることになります。毎月得たとしてプラス192万円となり、「866万円」と算出されます。
ここで残業時間を50時間としたのは、それ以上働いても「50時間分しか払ってもらえない」といった声が聞かれたためです。
実際には、さらに長い間働いている方も多いでしょう。コロナ禍では「超過勤務時間が月200時間以上となった職員のいる府省庁の数が16にものぼる」との答弁書が閣議決定され、大きな問題となりました。内閣官房と経済産業省では300時間以上となった職員もいたということです。
しかし、株式会社ワーク・ライフバランスが実施した「コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査」には、「超過勤務した分を申し出たが支払うことはできないと言われた」「テレワークは国際会議等の理由があれば残業がつくが、基本的に認められないと言われた」「3割支給されている程度で前と全く変わっていません。噂では、予算がないからとのことですが、予算がないなら残業させないでほしい」といった回答がみられます。
重い責務を背負い、身を粉にして働いている官僚が、働いた時間に応じた残業代をもらえないのでは、国家の運営に支障が出ても当然と言えるかもしれません。
優秀な学生が「国家公務員を目指さない」日本の悲哀
「大金を稼ぎたいなら民間の企業に就職したほうがよい」ことが明白であるなか、それでも国家公務員となった職員たちには、国民の生活へ貢献することへの使命感があるに違いありません。
人事院が2021年度、就職活動を終えた東京大や京都大など15大学の4年生と大学院2年生に実施した意識調査では、国家公務員の仕事のイメージについて「周囲の人に誇れる職業」との回答が7割以上となりました。
その使命感に沿える就労環境の整備が求められます。同調査で国家公務員以外を選択した学生はが職業として国家公務員を選ばなかった理由は、「採用試験の勉強や準備が大変」が約8割。「業務内容をこなすことが大変そう」「業務内容に魅力を感じなかった」「超過勤務や深夜・早朝に及ぶ勤務が多そう」といった業務内容や勤務環境に関する項目が6割前後でした。
現状では「そもそも目指す時点でハードルが高い」上に、「働き始めてからも困難が多い」ため志望者が減少傾向にあるのです。
2023年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者数は2,027人で倍率は7.1倍。申込者は1万4,372人と昨年度より1,000人近く減少し、10年前の3分の2程度となりました。
2021年の国家公務員採用試験では、倍率「7.8倍」と当時の過去最低を記録したことに対し当時の加藤勝信官房長官が「危機感を持っている」と発言し、減少の要因として「長時間勤務の実態などがある」と指摘したことが話題になりました。
そこで人事院は『令和5年 人事院勧告・報告について』の中で、さまざまな改善策を挙げています。
まず基本的な考え方として挙げられているのは、「公務組織を支える多様で有為な人材の確保のための一体的な取組」「職員個々の成長を通じた組織パフォーマンスの向上施策」「多様なワークスタイル・ライフスタイル実現とWell-beingの土台となる環境整備」の三点です。
人材確保のためには給与上昇や非常勤職員制度の運用についての検討、受験のしやすいオンライン方式を活用した採用試験の実施の検討といった取り組みが挙げられています。
負のイメージの払拭には時間がかかるかもしれません。ですが改革を経て、国家公務員が“優秀な人材”にとって魅力のある職業とならなければ、日本の未来がますます暗くなることは想像に難くありません。
THE GOLD ONLINE編集部
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