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2020年6月号 正論「読書の時間
潮匡人 この本を見よ
『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』 江崎道朗 著 育鵬社
著者の紹介は無用だろう。本誌『SEIRON時評』を連載中で、昨年『第20回正論新風賞』を受けた。現在、拓殖大学大学院客員教授も務める。
本書のタイトル『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』。なぜ、そう言えるのか。その証拠が、日本外務省アメリカ局の極秘文書『米国共産党調書』であう。
この調書は、1939(昭和10)年に、若杉要総領事が率いる在ニューヨーク日本帝国総領事館により作成され、1941(昭和16)年に外務省アメリカ局第一課により上梓された。
米国共産党の組織と活動全般を詳細に報告した調書には、旧ソ連の『コミンテルンが米国共産党を操り、ハリウッドやマスコミから労働組合、教会、ユダヤ人、黒人まであらゆるコミュニティで反日世論を煽った手口』(帯ネーム)が描かれている。
興味深い一例を挙げよう。米国共産党には『非合法の部門』があり、『秘密の戦闘部隊』も抱えていた。そうした《『秘密工作員』はいざという時に攪乱工作、つまり破壊工作を担当するテロリストであり、文字通り日常的にも共産党との関係を隠し、組合活動からも遠ざかる場合がある、秘密党員ということだ》。
著者は本文の最後を《日本国内における『秘密工作』と対峙すべきなのである》と締める。
貴重な史料であるにもかあわらず、その存在を知る者は少ない。
《戦後、若杉要と報告書『米国共産党調書』の存在はあたかも存在していなかったように無視されてきた。/かくして『戦前の日本のインテリジェンスはダメだった』とか、『日本人にインテリジェンス活動は不向きだ』といった誤解がまかり通るようになってしまった》──そうした『誤解』を解く上でも、本書刊行の意義は大きい。
調書は、旧ソ連が『ナチス・ドイツと組んでしまった以上、米国共産党による内部穿孔(せんこう)工作もいずれ失速していく』と予測していた。その《予測通り、米国共産党はユダヤ系の支持を失い、党員を減らしただけでなく、米国共産党主導の平和団体の活動も低迷していく。/1939年時点の、この日本外務省の分析・予測はほぼ当たった》。
《米国共産党とコミンテルンに関する調査・分析において、当時の日本外務省の能力は世界でもトップクラスであったと言えよう》
その外務省の予測どおり、米国共産党は『日本を対象として反日宣伝工作を仕掛けてくることになる』。
本書が明かしたソ連の知米工作史は、知られざる昭和史でもある」
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知米派の松岡洋右は、対米工作として黒人人権組織に接近していた。
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日本側は、東京のアメリカ大使館とアメリカ・国務省の暗号電文を解読していた。
対米和平交渉を成功させたい一心の近衛文麿首相は、極秘情報であるアメリカの外交暗号電報を解読している事を、グルー駐日大使に打ち明けていた。
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日本は縦割り行政で、各省庁は秘密主義で、お互いに機密情報を開示して共有する事を嫌っていた。
その為、外務省、陸軍省、海軍省は相手に知られないように隠密行動を取っていた。
さらに、陸軍省と陸軍参謀本部、海軍省と海軍軍令部、軍政と軍令は情報を開示しなかった。
が、日本の中枢には、アメリカに機密情報を流している協力者が潜んでいた。
ソ連のスパイであるゾルゲも、元朝日新聞記者尾崎秀実を通じて国家機密をソ連に流していた。
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ローマ・カトリック教会も、日本人信者から情報を集めていた。
さらに、200万人にたっする朝鮮人と数万人の中国人が日本国内を自由に移動していた。
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戦前の日本の失敗は、日本式暗号は絶対に解読されないという過信であった。
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戦前の日本は、現代の日本に比べて数段もインテリジェンスが優れていた。
日本外務省も日本陸軍・日本海軍も、情報を集めていた。
特に、日本陸軍は中野学校を新設して諜報員を養成し各地に派遣していた。
日本陸軍は、ソ連・共産主義包囲網として満州・内モンゴル・中央アジア・トルコにいたるムスリム回廊建設を行い、最終地点がナチス・ドイツではなくポーランドであった。
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戦前の帝国大学ではマルクス主義が蔓延し、優秀な学生ほど社会主義的統制経済と人民平等の社会構造改造を真剣に議論し、大学を好成績で卒業して革新官僚となった。
帝国大学に派遣されていた陸海軍の優秀な将校と達も、マルクス主義に感化され統制派を形成し、大陸戦争を指導した。
彼らの一部は、敗戦後日本共産党や日本社会党に入党し、ソ連や中国共産党よりの政治活動を続けた。
その風潮が、大正から昭和前期、さらには敗戦後はGHQに協力して各大学を支配した。
現代の反米派、親中派・媚中派、反天皇反日的日本人達はこうして増殖した。
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