🕍9:─1─外資系ファンドによる植民地化が進み貧しくなり続けている日本の現状。騙されやすい日本人。~No15 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 2024年5月7日 YAHOO!JAPANニュース WANI BOOKS NewsCrunch「外資系ファンドによる植民地化が進み貧しくなり続けている日本の現状
 日本の労働者の賃金は30年間上がらなかったあいだに、大企業は輸出系企業を中心に、政府お墨付きの税制優遇で内部留保を溜めこみ、それでも余るぶんは外資系ファンドへと流れていった。情報戦略アナリスト・山岡鉄秀氏は、我々有権者が「国を守る」という意識で政治家や官僚へのチェックを続けるべきだと警鐘を鳴らす。
 ※本記事は、山岡鉄秀:著『シン・鎖国論 日本の消滅を防ぎ、真の独立国となるための緊急提言』(方丈社:刊)より一部を抜粋編集したものです。
◇大企業の実質的オーナーが外資系ファンド
 日本人の給与レベルは、この30年で全く上がらなかったどころか、実質賃金では下がっています。1997年を100とすると2016年時点で89.7ポイント。なんと、1割以上の減少です。ちなみに同期間のアメリカは115.3、スウェーデンは138.4ポイントでした。
 国の名目GDP(自国通貨建て)の比較でも、30年前に比べて日本が1.2倍だったのに対し、アメリカが4.2倍、ドイツは2.9倍に伸びていました。
 なぜ、日本だけがこんなことになっているのか? 問題の基本構造は、はっきり見えているのではないでしょうか。
 日本政府、いや財務省は、一般庶民や中小・零細企業の犠牲などは考慮せずに消費税率を上げ、バーターとして法人税などを減税したり、消費税を還付する仕組みで大企業を強力に支援してきたわけですが、その大企業のかなりの数が、すでに実質、日本の企業ではなくなってきているのです。大株主が外資系ファンドになってしまっているという意味です。
 特に、法人税などの減税は、会計上、当期純利益を増やします。もちろん、株主配当は企業の経営環境を総合的に見て判断され、株主総会での承認を得なければいけないわけですが、企業の実質的オーナーである外資系ファンドが「当期利益を最大化するための経営判断をせよ」「設備投資よりも株主への還元を優先せよ」と圧力をかけてきたら、経営者は従わざるを得ません。
 経常利益は増えても、従業員の給与を増やせないわけです。
 日本国民である社員(従業員)が一生懸命、真面目に働いて企業のために貢献しても、そこで得られた利益が給与の増額として社員に還元されたり、企業の存続・発展のために必要な設備投資に使われたりすることはなく、剰余金の多くが外資系ファンドに株主配当として流出している仕組みを変えられない限り、日本人は今後ますます貧しくなります。これはまさに、ある種、植民地のような構造であるとも言えます。
GAFAの税逃れとアメリカのご都合主義
 GAFAとは、言わずと知れた「グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン」のことです。ほとんどの人が、これらグローバルに展開するアメリカ企業に毎日お世話になっているのではないでしょうか。
 あれだけ稼いでいるのだから利益も莫大で、納税額もスゴいのだろうと思っている方が多いかもしれません。彼らが日本にほとんど税金を納めていないことは、案外知られていないようです。
 タックス・ヘイブンという言葉を聞いたことがあるかと思います。租税回避地、つまり税金が極端に安い国や地域のことです。
 誰もがすぐに思い浮かべるのは、数年前に「パナマ文書」などでも話題になったパナマや、ケイマン諸島バミューダ諸島などかもしれませんが、アイスランドシンガポールルクセンブルク、オランダ、スイス、アイルランド、香港などもそうです。
 グローバル企業が、こうしたところに本社や本拠地を置き、各国にある支社から利益を本社に吸い上げる形にしておけば、大幅に法人税を節税できます。GAFAも、この手法で世界各国に支払うべき税金を大幅に節約しています。
 原則、日本でビジネスをして収益を上げている会社は、日本で法人税を払わなくてはいけません。しかし、東京国税局は2009年、法人税が適切に支払われていないとして、アマゾンに対して約140億円ほどの追徴課税処分を行いました。
 アマゾンは、日本での販売業務を「アマゾンジャパン」と「アマゾンジャパン・ロジスティクス」の2社で主に行っているのですが、その2社はアマゾン本社から販売業務を委託されているだけで、利益のほとんどはアメリカ本社に吸い上げられているため、日本法人はほとんど利益を出していない形になっています。
 東京国税局の言い分に対して、アマゾンの日本法人は「本社はアメリカに納税しているから二重課税になる」と意義を訴え、日米の二国間で協議した結果、結局、日本側が全面的に譲歩する形になりました。
 これには日本とアメリカのあいだで結ばれている「租税条約」が深く関わっていて、条文上は平等なのだけれど、力関係が反映されることになり、実際に運用される場合には両国間の協議でほぼ決められるため、実質的には不平等条約だと言われています。
 アマゾンの場合、クレジットの決済機能をアイルランドのダブリンに置いたり、ヨーロッパでの収益はルクセンブルクで処理するような仕組みにしています。いずれもタックス・ヘイブンであり、当然、世界各国から「税金を払ってくれ」と非難を浴びることになります。
 それでも、グループ全体の納税額の半分は本社のあるアメリカに対して納めているため、合衆国政府は各国との二国間協議になった場合は、アマゾンをバックアップして保護するというわけです。GAFAによる節税で、世界各国は合計で24~30兆円ほどの税金を失っているという見方もあります。
インボイス制度の導入で泣いている国民
 巨額な利益を上げていながら納税額が少ないというのは、GAFAだけに限った話ではありません。富裕層ほど税金を払わないで済むというのは、日本においても厳然たる事実で、その境目はだいたい年収1億円以上のところにあるようです。
 日本の所得税法では、高額所得者の名目上の最高税率は50%ですが、有価証券配当所得に対しては驚くほどの優遇があり、どんなに収入があっても所得税、住民税を合わせて一律20%でいいということになっています(分離課税)。富裕層ほど、所得における配当収入の比率が高くなるので、どんどん優遇されていきます。
 インボイス制度導入によって見込まれている税収増が、年間2480億円しかないと聞くと、日本政府は制度導入に伴って職を失う人、廃業を考える人、実質収入を減らして苦境に陥る人への想像力など、まるでないのだと思わざるを得ません。
 財務省は恐ろしい役所で、消費税こそが日本経済を浮上させない根本要因であるとわかっているにもかかわらず、真逆の政策を取り、2023年10月からインボイス制度を導入してしまいました。
 インボイス制度は、これまで消費税納入を免除されてきた年商1000万円以下の小規模事業者や個人事業主は、消費者からの預かり金である消費税をポケットに入れていたからけしからんという発想です。
 しかし、財務省の前身である大蔵省は、消費税は預かり金ではなく価格の一部だと明言しています。また、法的には消費税は間接税と定義されていません。
 それにもかかわらずインボイス制度を導入すれば、増税分を自分が泣く形で負担することによって収入減になったり、値下げを強いられたり、廃業を選択する小規模事業者・個人事業主が続出します。その動きはすでに始まっています。
 これほどの悪政、愚策を連発しているというのに、困ったことに政府は自らの過ちを省みようともしません。しかし、この政権を選んでいるのは日本国民です。政治に無関心であったり、政治家や官僚へのチェックを怠って任せきりでいると、とんでもないことになるのです。比喩でなく、国を滅ぼしかねません。
 日本政府は自ら人口を減少させる政策を取りながら、減少分を外国人の移民で手っ取り早く補おうとしています。じつに愚かな所業です。取り返しのつかないことになる前に、我々有権者が立ち上がってこの流れを止めなければ、遠からず日本は、三流国家に転落し、やがて日本人の国ですらなくなってしまうでしょう。
 山岡 鉄秀
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 5月7日 YAHOO!JAPANニュース WANI BOOKS NewsCrunch「日本衰退の元凶はグローバリズムよりも消費税!? 経団連増税を望むのはなぜか
 山岡 鉄秀
 岸田首相が2023年にぶち上げたジャパン・ウィークス構想は、日本の個人金融資産を外国に流出させる金融政策。そして日本衰退の元凶は、グローバリズムよりも消費税だった。
 トップ ビジネス・社会 日本衰退の元凶はグローバリズムよりも消費税!? 経団連増税を望むのはなぜか
 岸田首相が2023年にぶち上げたジャパン・ウィークス構想は、日本の個人金融資産にアメリカのハゲタカファンドの魔手を入れさせる金融政策だ。そう訴える情報戦略アナリスト・山岡鉄秀氏によると、日本衰退の元凶はグローバリズムよりも消費税だと言います。経団連が消費税率アップにこだわるのは、輸出大企業にとっては巨額の輸出戻し税の還付があるからです。
 ※本記事は、山岡鉄秀:著『シン・鎖国論 -日本の消滅を防ぎ、真の独立国となるための緊急提言-』(方丈社:刊)より一部を抜粋編集したものです。
 岸田政権により日本国民のお金が世界に流出
 21世紀に入ってからの日本の国力衰退は明らかです。このまま溶けて消えてしまうのではないかとさえ思えます。日本は、安全保障を米国に委ね、経済に専念することによって繁栄しようとしてきました。平和国家だ、経済大国だと、うまくやってきたはずだったのに、もはや誰の目にも衰退が明らかです。
 経済至上主義をうたっていた国の経済が駄目になると、本当に惨めなものです。しかし、この期におよんで岸田首相は外国まで出かけて、「日本を売ります。皆さんで買ってください」と懇願しているのです。
 2023年9月21日、訪米中の岸田首相は、企業経営者や金融関係者らで構成する「ニューヨーク経済クラブ」主催の会合で講演し、日本への積極的な投資を呼びかけました。
 2000兆円を超える個人金融資産を活用した日本の資産運用ビジネスの発展は、法の支配や市場経済といった普遍的価値を共有する日米間において、投資の流れとウィン-ウィンの関係を強固にし、世界経済に大いに貢献するもの。
 世界の投資家に賛同いただくため、この秋に、世界の投資家を日本に招聘する「ジャパン・ウィークス」を展開する。皆さんにも、ぜひ参加いただきたい」(産経新聞9月22日掲載講演全文より)
 なんと、割安の日本企業が外国資本に買い漁られている状況下で、今度は2000兆円を超える日本人の個人金融資産の運用に、外国の資産運用会社を参入させたいというのです。
 明らかに日本人の個人金融資産に手を付けたい海外勢に迎合しています。これが世界経済に大いに貢献すると言っていますが、日本国民の金が世界に流出することを意味します。
 彼がすべきことは、日本経済と日本人の生活向上への貢献のはずです。
▲ブリンケン国務長官と岸田首相(2023/11) 出典:U.S. Department of State / Wikimedia Commons
 消費税を10%に引き上げた財務省の言い分は?
 は当初、日本経済が衰退した原因はグローバル化にあると考えていました。しかし、どうやら日本の敗因はそれだけではないようです。実はそれ以外に、日本人自身が自らの首を絞める罠をかけていたのです。それが消費税です。なんのことはない、日本人は自滅していたのです。
 消費税が導入されたのは1989年。平成元年の竹下登内閣のときでした。私たちは、消費税というのは間接税だと教わりました。累進性のある直接税に対して、所得水準には関係なく、広く浅く課税する間接税は有効な税制で、直接税と間接税の比率(直間比率)が重要であるようなことを聞いた覚えがあります。
 しかしその後、不思議に思ったのは、バブルが崩壊してデフレ基調になってからも、国が消費税を上げ続けたことです。そのあとに、上がりかけた景気が腰折れして、デフレが酷くなるのですが、止めようとしません。
 日本経済は内需主体で、GDPの約6割が日本国内の個人消費によるものです。したがって、景気が悪いときに消費税を上げて消費が低迷すれば、デフレを脱却できなくなります。
 そんなことは素人にもわかっているのに、2019年10月、とうとう消費税は10%にまで引き上げられました。これについての財務省の言い分はこうです。
 「社会保障制度の財源は、保険料や税金だけでなく、多くの借金に頼っており、子や孫などの将来世代に負担を先送りしています。安定的な財源を確保し、社会保障制度を次世代に引き継ぎ、全世代型に転換する必要があります。
 こうした背景の下、消費税率は10%に引き上げられました。消費税率の引き上げ分は、すべての世代を対象とする社会保障のために使われます」
 しかし、これは本当なのでしょうか? じつは、政府が言うことはくるくる変わってきています。財務省から出されているパンフレットでは、「消費税とは、消費一般に広く公平に課税する間接税です」と明記されていますが、過去の大蔵省時代には、消費税は間接税ではなくて直接税だと言っていたのです。いったいどういうことでしょうか?
 消費税は間接税であるという大前提が崩れた
 消費税が導入された1989年に存在していた「サラリーマン新党」という政党が、政府を相手に裁判を起こしたことがあります。「消費税は消費者が負担する税金なのに、年商が一定額以下の事業者が免税となるのは、預かり金をピンハネする行為(益税)だ」と訴えたのです。
 判決は1990年3月26日には東京地裁で、同11月26日に大阪地裁でそれぞれ出されました。判決はいずれも原告の敗訴で、免税は益税(ピンハネ)ではない、というものでした。この裁判における大蔵省(当時)の反論が驚きで、消費者が負担する消費税は「物価の一部に過ぎない」というのです。
 物価というものは、最終的には市場における需給で決まるものだから、消費税は個別の物品に課せられているものではなく、事業者が一年間に作り出した付加価値に一定の税率をかけて払うものである。そうなると、消費税は事業者の観点からは、実質的に直接税ということになります。
 直接税であれば、たとえば所得税でも、年間の収入がこの額までは無税という、免税点というものがありますから、小規模事業者に対する免税は預かり金のピンハネにはあたらない、というのが大蔵省の主張を汲んだ判決の主文でした。ここで、消費税は間接税であるという大前提が崩れたわけですが、付加価値に課税するとはどういう意味でしょう?
 もともと日本の消費税は、欧州の「付加価値税(VAT:Value-added tax)」を下敷きとして作られた税制なのですが、付加価値とはなんでしょうか。一般的な感覚で考えると、たとえば木材を買って、それを加工して美術品とか道具にすれば付加価値を加えたことになります。木材を1000円で仕入れ、それを美術品にして5000円で売った場合、4000円の付加価値を創造したことになるわけです。
 ところが、消費税の課税対象である付加価値とは、「利益と人件費の合計」だというのです。人件費というのは会計学的には経費(固定費)です。
 ちなみに法人税は、粗利(売上総利益)から人件費を含む全ての経費を引き去って、もし利益が残ったら、その利益に対して課せられるものです。従って、赤字であれば、当然ながら法人税は払わなくて済みます。
 しかし、消費税の場合、利益と人件費の合計に課税するということは、法人がたとえ赤字でも払わなくてはならないということになります。たとえ赤字の事業者であっても、消費税率が上がるほど税負担が増えるということで、ひじょうに過酷な税金だということになります。
増税は消費者や中小企業にはキツい イメージ:builderB / PIXTA
 輸出戻し税に溺れた経団連の詐術
 消費税は、実際に正しく社会保障目的税として使われているのでしょうか? 調べてみると奇妙なことに、消費税によって得られた税収とほぼ同じくらいの規模で、法人税が減額されているのです。
 もう一つ、「輸出戻し税」に関しても疑問があります。海外の消費者に日本の消費税を払ってもらうわけにいかないので、輸出品に対しては消費税を課税しないというのが国際ルールなのですが、輸出業者は、自分が仕入れる際には消費税を払っているので、その分が「損」になってしまいます。
 その税負担分を税務署が輸出業者に還付する仕組みを、俗に「輸出戻し税」と言います。
 輸出戻し税は、輸出大企業にとっては巨額なものになります。この輸出戻し税が、実質的な輸出補助金になっています。
 また、全てとは言いませんが、規模の大きい企業が取引先の下請けなどから仕入れをする際、「消費税の一部をディスカウントしてよ」なとど単価を買い叩くケースがあり、そうしたケースでは「実際は負担していない消費税分」も含めて、戻し税によって補助されていることになります。消費税率が高くなればなるほど、大企業にとっては有利になるわけです。
 一方、実質的な税金とも言える社会保険料は、国会で具体的な議論もされないまま、毎年確実に上がり、国民負担率も上昇する一途です。そもそも、日本の消費税は社会保障目的税として、4つの目的(1.年金 2.医療 3.介護 4.少子化対策)にしか使わないとされていますが、税の使用先を決めている国は、日本以外にはありません。
 年金・医療・介護は、保険制度として賄うべきであって、収入が大きく変動する税によって運営されるべきではないからです。
 経団連は常々、消費税アップを推す意思表示をします。早く19%まで上げたらいいのに……などとまで言います。マクロ経済学的な理論から言っても、実際に何度も景気の腰折れという痛い目に遭った経験則から言っても、消費税増税は景気を悪化させることがわかりきっているのに、なぜ、経団連がそれを容認するどころか、わざわざ望むのか。理由は先述のとおりです。
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 4月16日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「「国民は騙すもの」…森永卓郎氏×鈴木宣弘東京大学大学院特任教授の覚悟の対談で語られた「役人たちの行動原理」
 左から鈴木宣弘氏、熊谷美帆アナ、垣花正アナ※この日、森永氏は生放送で収録に参加
 【ニッポン放送垣花正 あなたとハッピー」(月曜日~木曜日8時~11時)2024年3月19日放送より】レギュラーコメンテーターの森永卓郎(経済評論家)氏と、この日のゲスト東京大学大学院鈴木宣弘特任教授が、好評発売中の二人の対談『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社+α新書)について、国民が知らない「不都合な真実」を本音で語り合った。
 【画像】死刑囚が「アイマスク」をするヤバすぎる理由
 ※この記事はニッポン放送の許諾を得て番組内容を掲載したものです。
 前編【森永卓郎氏×鈴木宣弘東京大学大学院特任教授の覚悟の対談! 止まらない食料危機と財務省の不適切すぎる関係】より続く
 財務当局が備蓄をさせない
 森永卓郎
 鈴木 台湾有事がどういう確率で起こるかわかりませんけども、日本がこんなふうに武器だけ揃えて攻めていくぞというような姿勢を示す、経済制裁するぞみたいな姿勢を示しただけで、たとえば隣国が海上封鎖、シーレーンを封鎖するというようなことが簡単に起こりうるわけです。それをやられてしまったら、もうすべてそこで終わってしまうわけですよね。戦うどころの騒ぎじゃないと。だから今、国内の生産をね、もっともっと増強しなきゃいけないわけですよね。だけど、中国はですね、有事に備えて、今14億人の人口が1年半食べられるだけの備蓄をするということで、国内生産の増強と世界中からまた穀物を買い占めてるんです。
 垣花 中国って変な国だってイメージもあるけど意外と真っ当ですね。
 鈴木 そういうところは真っ当ですよ。まず命を守るには食料だと。
 垣花 日本はどうなんですか? 
 鈴木 備蓄が1.5ヶ月分しかないんですよ。だから輸入を止められたらおしまいなわけですよ。だからもっと生産を増強しないと。日本の米の生産力って今、800万tぐらいしか生産してないけども、日本の水田を全部使えばいい。1200万t以上作れるんですよ。潜在生産力はあるんですよ。増産して政府の責任で備蓄すればいいじゃないかと言うと、「そんな金どこにあるんだ馬鹿たれ」と、財政当局に言われておしまいになっちゃうんですよ。だから馬鹿たれはどっちだ? と、命を守るのは一番は食料じゃないかと。そこにね、数兆円かけても、増産して備蓄するぐらいのことをやっとくほうが役に立たないミサイルを買うよりも先にやるべきことじゃないかって話なんです。
 国民は騙すもの
 鈴木 農水省は農家を救うために予算をつけようとして財務省に頼むわけですよ。ところが財務省さんはお金を握ってるから(立場が)強いですよね。いろんな注文をつけてきて、使いづらい予算にしてしまう。書類ばっかり多くて使いづらいものにして、現場に下ろすと、もうこんなもん無理ですっていうことで、結局お金が国に戻ってくるような、そういう意地悪だと思われるようなことをしてるんじゃないかと、農水省の方々が常々言ってます。
 いい政策をやってみんなを助けるという入省したころの志がどっかにぶっ飛んじゃうわけですよ。これは財務省だけじゃないですけど、役所に入ると、みんな自分の利害関係がある人たちを儲けさせるために、国民をうまく騙して、情報を隠して、都合のいい情報だけ出してね、そしてそういう(利害関係のある)人たちが利益を得られるところだけ予算を増やしていくと。たとえば消費税増税というのは、大きな企業はそれを負担しないで法人税を払わなくて負担を増やさなくていいわけだから。企業が儲かれば、自分たちも出世できて天下りもできると。これは財務省に限らないけど、役所に5年10年いるとだんだん、とにかく情報は隠すもの、国民は騙すもの、そして利害関係者を儲けさせて出世して(そこに)天下りすると。こういう行動原理に陥りやすい。
 命を守る分野に資本主義を持ち込んではいけない
 鈴木 赤字になった農家を、アメリカなんか100%補填してますよ。ヨーロッパは、今いろいろまた環境対策で、予算減らされそうとしてみんな国民怒ってるけども農家も。だけども基本的にはスイスとかフランスも、所得の農業所得の100%が税金なんですよ、ほとんど公共事業公益事業になってるんですよ。命を守る産業は国民がみんなで支えるというのが世界の常識ですよ。そこに金を出さないというこの日本の財政政策が、農水省が悪いっていうよりも、金を握っているところが、どんどん(予算を)切ってきちゃうわけですよ。この期に及んで農水予算を、農家を救う予算を減らすことがどんどん進められている。
 森永 命を守るっていう意味では、たとえば病院とかクリニックって、お医者さんは株式会社をやっちゃいけないんですよ、原則。それは何でかっていうと、資本家っていうのは利益を優先するので、命に関わるところで利益を優先すると酷い目にあうんですね。農業も実はまったく同じで、食べることっていうのが命につながってるわけです。そこに企業の論理、利益を増やすぞっていう論理を持ち込むとですね、たとえば収穫後の作物に農薬をぶっかけてみたりですね、あるいは遺伝子組み換えした作物に強力な除草剤を使って、耐性ができるような遺伝子組み換え作物にして、雑草は全部消えるから、畑やってて一番大変なのは雑草なんですけれども、ただそんな農薬を大量にぶっかけた食い物を食って大丈夫なんですかっていう視点がなくなるんですよね。
 垣花 医療が株式会社になってはいけないのと同じで、我々の生活の基本となる食べ物を作ってる皆さんに、「農業って儲からないんですよね」みたいな指摘をする人がいますが、その儲かる儲からないという視点はあんまり持ち込んじゃいけないジャンルだってことなんですかね。
 消費者に危険な情報が入らないようにする
 森永 だからアメリカやヨーロッパはちゃんと所得保障をしているから、100%近い自給率を誇ってるわけです。
 鈴木 そういうふうに取り組まなきゃいけないところを、逆にもう企業に全部任せて、儲けらればいいじゃないかということを今進めようとしてる。それこそ今、森永さんが言われたような、安全性の問題でもさらにリスクのあるものを。今、食品表示もどんどん消されてきてますから、遺伝子組み換えではないという食品表示ができなくなってきたり。表示でわかっちゃうとみんなが選ぶじゃないですか。だからそういう情報が消費者に入ってこないようにする。遺伝子組み換えでない食品は選べません。ゲノム編集の食品の表示もなしです。それから無添加という食品表示も厳密でないから駄目ですと、コオロギパウダーを混ぜてもコオロギと書かなくていいですみたいなね。
 もっと言うとね、国内製造っていう表示があるじゃないですか。国内製造というと原料は輸入品という意味なわけです。みんながそれに気づいてきたので、今度は何て言ってるかというと、国産の原料を使った加工食品を国内製造と書けと。つまり、全部表示を国内製造に統一しちゃって、国産の原料を使ってる食品を選べないようにするわけです。輸入か国産の材料かを表示が区別できないようにして、全部食べさせてしまう。もうとにかく表示を変えてでも、企業がさらに食の安全性をおろそかにし、命を蝕んででも儲けられるような、そういう流れを制度的にもどんどん作ろうとしてるわけです。
 国を当てにするのはもうやめて自分で備える
 森永 私は、とりあえずみんなが農業をやることだと思っているんです。私ずっとこの五、六年、畑やってきたじゃないですか。自分で作った作物を食べると、うん、大地の味がするんですよ。工場生産に近いやつは、無色透明っていうか、何の引っかかりもないんですね。そっちにみんな慣れつつあるんですけど、そうじゃないんじゃないかなって。
 今、プランターでサツマイモを作れるんです。だから、ちょっと自分でやってみようぜって。結構な量が取れるみたいなんですよ。私もやることにしたんですけど、畑あるのにプランター(笑)。
 鈴木 やっぱりそこからいくべきだと思います。国の政策は当てにならないので自分たちでやる。地元でがんばってる農家さんを支えるように、まず買う。自分も家庭菜園、プランターもいいし、耕作放棄地が周りにできているんだったら、ちょっとそれ貸してください、私がやりますから、と。まさに森永さんの本で私が共感したマイクロ農業、周辺との地産地消を進めて、ローカル自給権を自分たちで作っていく。そこで安全安心なものを支え合う構図をつくる。
 垣花 すると、農家の皆さんに対するリスペクトも生まれ、そういう意識が広がるってことですよね。
 鈴木 宣弘(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)/森永 卓郎(経済アナリスト)
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