🎷63:─2─平和憲法・自衛隊法84条4と失敗した「アフガン脱出作戦」。~No.282 

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   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   

 佐瀬昌盛自衛隊法84条4では、海外で邦人輸送できるのは〈安全に実施することができると認められたとき〉との要件が定められ、今回は米軍のコントロール下にあるカブール空港の中でした活動できなかった。もともと自国民が危険にさらされているから自衛隊を派遣するのに、安全な場所でしか行動できないというのは矛盾しています。政治家はこのような現実を直視して法改正を検討すべきですが、今の菅首相や政権与党は喉元過ぎれば熱さを忘れる。そうした危機意識の欠如が、救出作戦が難航した理由だと思います」
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 2021年9月9日号 週刊新潮「備えあっても憂いあり!?
 アフガン『幻の脱出作戦』
 タリバンが首都を制圧したアフガニスタンでは、各国の救出作戦が展開された。
 自国民のみならず現地協力者も含めて脱出させた国が多い中で、日本は助けを求める人々を連れ帰ることができなかった。決して能力や準備が不足していたわけではなかったのだが──。
 ここで紹介するのは、2015年12月に群馬県と埼玉県で行われた『在外邦人等輸送訓練』の模様である。同訓練は1999年から始まっているが、15年の公開訓練はとりわけ関係者の注目を集めた。
 『この年、新しく導入されたオーストラリア製の「輸送防護車」が初めてお披露目されたのですが。海外に取り残された邦人を空港まで輸送する車両で、16億円で計8両が調達されました』(自衛隊OB)
 購入のきっかけは、13年1月に起きた『アルジェリア人質事件』。当時、自衛隊による人質救出作戦を検討されたものの、『法的に不可能』として断念。結果的に現地の日本人10名が犠牲となった。
 事件後の同年11月、自衛隊法が改正される。それまで航空機や船だけを想定していた『在外邦人等輸送』任務で、車両を使った陸上輸送も可能となったのである。
 法律を作ったからには、実行に向けて訓練するのが自衛隊だ。15年の訓練シナリオでは、政情不安に陥った架空の国が舞台。日本大使館に集まった人々に防弾チョッキを着せ、輸送防護車で空港へ。パスポートを調べて身体検査をした後、輸送機に乗せる。
 今次のアフガン危機で実施されるはずだった任務を、すでに正確に想定し準備していたことがわかる。ただし、今回は〝想定外〟のことが起きた。先の自衛隊OBが嘆く。
 『在外邦人輸送には、外務大臣から防衛大臣への要請が必要で、外務省からの要請は23日。あまりにも遅すぎだし、現地情勢を把握するべき日本大使館のスタッフが、17日には全員脱出してしまっていた』
 しかも自衛隊は法律上、『安全に実施することができる』場所しか輸送を行ってはいけないという。ああ、何たる平和ボケ。備えは万全、憂いは深し──。」
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 8月29日08時41分 JIJI.com 時事ドットコムニュース「時事ドットコムニュース>政治>自衛隊、退避作戦に法的制約 安全確保できず、空港くぎ付け―ア…
 自衛隊、退避作戦に法的制約 安全確保できず、空港くぎ付け―アフガン
 アフガニスタンの首都カブールの空港周辺で爆発が起き、対応に追われる防衛省=27日午前、東京都新宿区
 日本政府によるアフガニスタンからの邦人や大使館の現地スタッフの退避作戦は、事実上の活動期限である27日を過ぎ、継続は困難な状況となってきた。自爆テロによる治安悪化などの影響で、最大500人と想定する退避希望者の多くはアフガン国内に残されたまま。派遣の根拠である自衛隊法に活動を制約され、自衛官は首都カブールの空港から一歩も外に出られなかった。
 米、空港から撤収開始 新たなテロに最大級の警戒―アフガン
 政府は当初、退避希望者の空港までの移動手段について、「各自で確保していただくしか仕方ない」(岸信夫防衛相)としていた。しかし、イスラム主義組織タリバンが24日にアフガン人の出国を認めない考えを表明したことを受け、方針を転換。26日には空港へ向かうバスを20台以上用意したものの、空港ゲート付近で自爆テロが発生したため、移動を断念した。
 今回、自衛隊員の任務は自衛隊法84条の4に基づく「輸送」で、空港内での邦人らの誘導と空自機による退避が中心。同法は輸送を「安全に実施することができると認めるとき」に限定しており、米軍が安全をコントロールできる空港内でのみ活動することとした。自衛官が市中に退避希望者を迎えに行き、警護して連れてくることはできなかった。
 2016年施行の安全保障関連法で、新たに在外邦人らの救出や警護を認める「保護」(自衛隊法84条の3)が可能となり、より強い武器使用権限も与えられた。しかし、派遣先となる受け入れ国の同意や現地の治安が維持されていることが要件で、タリバンが支配するアフガンでの適用は見送った。
 要件をめぐっては、24日の自民党国防部会などの合同会議で「安定していないからこそ(保護の)ニーズがある」として、緩和を求める声が上がった。防衛省内からも「今回の件をきっかけに議論を始めてほしい」と法改正に期待する声も出ている。
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 8月25日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「自衛隊によるアフガニスタンからの「邦人輸送」、実は「大きな問題」があった
 緊迫続くアフガニスタンからの邦人輸送
 8月17日、カブールで記者会見を行うタリバン[Photo by gettyimages]
 政府は、イスラム原理主義タリバンが全権を掌握したアフガニスタンに残る日本人や現地スタッフを国外に退避させるため、航空自衛隊のC2輸送機1機とC130輸送機2機を首都カブールの空港へ向けて派遣した。
 【写真】もうすぐ、日本人が「絶滅危惧種」になる日がやってくる
 2013年に起きたアルジェリアのテロ事件を受けて自衛隊法が改正され、陸上輸送が可能となったが、今回は空港外での移動支援は実施しない。
 空港外のゲートに国外脱出を希望する群衆が押し寄せ、タリバンが威嚇発砲する事態に陥る中、現地の日本人や現地スタッフが空港にたどり着くまで輸送機は待機を続けることになる。
 空港の安全確保は米軍に依存しているが、米軍の駐留はバイデン米大統領が撤収を命じるまでの限られた期間でしかなく、空輸の成否は予断を許さない。
 在アフガニスタン日本大使館の職員12人は英軍の輸送機に同乗して国外へ脱出済み。国際機関で働く日本人職員や大使館などで働いていた現地スタッフは取り残された。19日にあった自民党外交部会では彼らを残したことに批判の声が相次いだ。
 この日の部会で、防衛省側は「自衛隊派遣の根拠法となり得る自衛隊法84条の3『在外邦人等の保護措置』、84条の4『在外邦人等の輸送』とも日本人が1人でもいないと派遣は不可能」と説明し、消極的な姿勢を示していた。
 しかし、アフガニスタン問題をオンラインで議論する主要7カ国(G7)首脳会議が24日に迫り、各国が軍隊を派遣している状況から「日本だけ何もしなくてよいのか」との焦りや「他国に頼ると後回しにされる」などの懸念が浮上。菅義偉首相が22日になって急きょ、自衛隊機派遣を決めた。
 C2輸送機の定員は110人、C130輸送機は92人なので相当な人数の現地スタッフやその家族も同乗させることができる。外国人を輸送すれば、初めてだ。
 これまでとは、危険性が異なる
 アフガニスタンへ派遣されたC130輸送機の同型機(防衛省提供)
 だが、今回は過去に実施した邦人輸送とは難易度が違う。
 そもそも邦人輸送とは、危険が差し迫った外国にいる日本人を自衛隊が艦艇や航空機で安全な国や地域へ輸送することで、政府専用機を導入したことがきっかけとなり、1994年11月の自衛隊法改正で初めて規定が盛り込まれた。
 過去には以下の通り、4回の実施例がある。
 (1) 自衛隊イラク派遣に際し、現地の治安が悪化し、2004年4月15日、陸上自衛隊が派遣されていた南部サマワで取材をしていた報道機関の日本人10人をC130輸送機でクウェートまで輸送した。
 (2) 2013年1月16日、アフリカ北部のアルジェリア日揮の石油プラントが武装勢力に襲撃され、日本人が巻き込まれて死亡。日本政府は政府専用機を派遣して、日本人の遺体9体とその家族ら日本人7人を日本に輸送した。
 (3) 2016年7月1日、バングラデシュの首都ダッカのレストランが襲撃を受け、日本人が死亡。政府は政府専用機を派遣して、日本人7人の遺体とその家族を日本に輸送した。
 (4) アフリカの南スーダンにおける大統領派と副大統領派の戦闘激化を受け、2016年7月14日、航空自衛隊の輸送機を派遣して大使館職員4人を首都ジュバからジブチまで輸送した。
 過去には、さほどの危険がない中でも実施されている。利用されたのはすべて航空機だが、2013年に起きたアルジェリアのテロを受けて自衛隊法が改正され、車両による陸上輸送が追加された。
 しかし、いずれの国も自国の治安は軍や警察が担う。自衛隊を派遣して日本人を陸上輸送しようにも相手国が自衛隊の受け入れを認めなければ、実施するのは不可能に近い。
 空港や港湾は入国するまでは外国なので、航空機や艦艇は比較的容易に派遣できるが、一歩、外へと踏み出せば相手国の領域になる。今回、陸上輸送を実施するとなれば、タリバン側の同意が必要との見方があり、政府は現実的ではないと判断したもようだ。
 陸上輸送が除外された理由
 陸上輸送に使われる陸上自衛隊高機動車陸上自衛隊のホームページより)
 アフガンへの輸送機派遣は、自衛隊法84条の4「在外邦人等の輸送」が根拠法令だ。「当該輸送を安全に実施することができると認めるとき」とのただし書きがあり、緊迫する現地情勢を受けて武器を持った陸上自衛隊中央即応連隊の隊員約100人も同乗している。空港までやって来た日本人らを輸送機に安全に誘導するのが任務だ。
 ただし、彼らが武器使用できるのは、自分自身や自己の管理下に入った人を守るためか、機体の防護やハイジャックなど機内で起きた緊急事態に限定される。仮に空港へ向かう日本人が襲撃されたとしても空港外に出て武器を使うことはできない。
 安倍晋三政権が安全保障関連法の一部として追加した自衛隊法84条の3ならば、「在外邦人等の保護措置」を認めている。この規定にも現地が安全であること、武器使用にあたり当該国の同意が必要なことなど、混沌とするアフガン情勢下では確認が困難な条件が含まれる。派遣した自衛隊を危険にさらすことにもなり、政府は現実的ではないと判断した。
 ただ、自衛隊は陸上輸送を想定して特殊車両を購入し、国内外で邦人輸送訓練を繰り返している。
 2016年2月16日、タイで開かれた東南アジア最大級の訓練「コブラ・ゴールド」で陸上自衛隊は窓に防弾ガラスを張った高機動車を持ち込み、「大地震が発生、政情不安に陥った国に取り残された日本人らを避難させる」との想定で訓練を実施した。
 避難する日本人を載せた高機動車が小銃で武装した隊員の乗った車両に守られ、深緑色の車列が猛スピードでタイ空軍基地内を走り抜けた。
 前年の2015年12月17日には豪州から購入したばかりの「輸送防護車」を使って、相馬原演習場(群馬県)で「政変で治安が悪化した国で日本大使館に集まった邦人を避難させる」という想定の訓練が行われた。
 民間人役の自衛官15人を輸送防護車に乗せ、空港へ向かう途中、群衆に取り囲まれたり、爆弾による攻撃を受けたりした。群衆に威嚇射撃をするのか、相手に向けて撃ってもよいのか、隊員らは瞬時に難しい判断を迫られた。
 自衛隊が武器を使えば、相手との間で銃撃戦になり、任務の危険度は格段に増す。自衛隊は何をどこまですべきなのか。明確な指針を打ち立てられないまま、今回のアフガニスタン派遣を迎え、陸上輸送は除外された。
 自衛隊機による邦人輸送には空振りもある。
 1998年5月、インドネシアの政情不安を受けてC130輸送機6機が現地へ向けて派遣されたが、退避を希望する日本人は民間機などで脱出し、邦人輸送は実施されなかった。前年の1997年7月にもカンボジアへC130輸送機が派遣されたが、やはり邦人輸送は実施されないで終わっている。
 だが、現在のアフガニスタンには日本人が取り残され、出国を希望する現地スタッフがいるのは確実だ。
 現地の治安情勢は予断を許さない。タリバン戦闘員は空港に続く道路に検問所を設け、「どこへ行くんだ」「家へ戻れ」と銃を向けて脅している。空輸すべき日本人らの空港までの移動が「自助」となり、安全に自衛隊機までたどり着けるのか見通せない。
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 基本的に、日本国・自衛隊が海外の日本人を救出・輸送する理想的条件とは、日米安保条約に基づく強力なアメリカ軍の保護下で、次がイギリス・オーストラリア・フランス・インドその他の知日友好国の支配下である。
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 昭和二十九年法律第百六十五号
 自衛隊
 (在外邦人等の保護措置)
 第八十四条の三 防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出その他の当該邦人の生命又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下「保護措置」という。)を行うことの依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、次の各号のいずれにも該当すると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。
 一 当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たつており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。第九十五条の二第一項において同じ。)が行われることがないと認められること。
 二 自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国(国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従つて当該外国において施政を行う機関がある場合にあつては、当該機関)の同意があること。
 三 予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれること。
 2 内閣総理大臣は、前項の規定による外務大臣防衛大臣の協議の結果を踏まえて、同項各号のいずれにも該当すると認める場合に限り、同項の承認をするものとする。
 3 防衛大臣は、第一項の規定により保護措置を行わせる場合において、外務大臣から同項の緊急事態に際して生命又は身体に危害が加えられるおそれがある外国人として保護することを依頼された者その他の当該保護措置と併せて保護を行うことが適当と認められる者(第九十四条の五第一項において「その他の保護対象者」という。)の生命又は身体の保護のための措置を部隊等に行わせることができる。
 (在外邦人等の輸送)
 第八十四条の四 防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命若しくは身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者、当該外国との連絡調整その他の当該輸送の実施に伴い必要となる措置をとらせるため当該輸送の職務に従事する自衛官に同行させる必要があると認められる者又は当該邦人若しくは当該外国人の家族その他の関係者で当該邦人若しくは当該外国人に早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者を同乗させることができる。
 2 前項の輸送は、第百条の五第二項の規定により保有する航空機により行うものとする。ただし、当該輸送に際して使用する空港施設の状況、当該輸送の対象となる邦人の数その他の事情によりこれによることが困難であると認められるときは、次に掲げる航空機又は船舶により行うことができる。
 一 輸送の用に主として供するための航空機(第百条の五第二項の規定により保有するものを除く。)
 二 前項の輸送に適する船舶
 三 前号に掲げる船舶に搭載された回転翼航空機で第一号に掲げる航空機以外のもの(当該船舶と陸地との間の輸送に用いる場合におけるものに限る。)
 3 第一項の輸送は、前項に規定する航空機又は船舶のほか、特に必要があると認められるときは、当該輸送に適する車両(当該輸送のために借り受けて使用するものを含む。第九十四条の六において同じ。)により行うことができる。
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