🎺28:─4─ミッドウェー海戦敗北の原因は作戦目標を一つに絞らなかったから。~No.141 

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 2021年9月9日号 週刊新潮「夏裘冬扇  片山杜秀
 真珠湾を忘れるな!
 ミッドウェー海戦日本海軍は、なぜ虎の子の空母4隻を失い、敗北を喫したのか。第一航空艦隊参謀として空母『赤城』に乗り組んでいた源田実中佐(のち大佐)は、戦後の自民党参議院議員時代に、敗因を次のように整理している。
 真珠湾作戦が成功した最大の原因は、目的が明快だったから。真珠湾の米艦隊撃滅。航空艦隊はその1点に集中できた。ところが、ミッドウェー作戦で4隻の空母に与えられた任務は三つもあった。①ミッドウェー島の敵航空戦力を空襲で壊滅させ、上陸作戦を有利に導くこと。②航空艦隊の後に続く、地上部隊を載せた輸送船団と、それに付属する戦艦群に対する、空からの攻撃を防ぐこと。③敵空母群が出撃してきたら決戦して撃破すること。
 これらの優先順位も定かではない。島を空襲している間に敵艦載機に攻撃されたら?敵艦載機が後続の輸送船団をいきなり襲ったら?敵空母群との決戦が先行し、島を空襲し損ねたら?あちら立てればこちら立たず。空母と飛行機が2倍か3倍あれば分担も可能だが、ひとつの任務に集中するのがせいぜいの戦力で、三つ全部に対処しろと言うのだから、手に負えなくなってしまう。ごまかしごまかしやってみて、結果オーライに賭けるしかない。そこで必勝の信念が叫ばれるのだが、信念が真に強固になるのは、目標がひとつでぶれないときだ。任務が別の方角を向いた複数になれば、人は必ず迷う。迷いは敗北をもたらす。
 源田は例え話をする。『迷うことのなくということが、任務遂行を容易にする重要な因子である。われわれが書きものをするときに、字を忘れ、いい加減なうろ覚えで書くときには、書いた字に勢いがない。中途半端な気持ちで振ったバットからはヒットは生まれない』
 ミッドウェー海戦の結果は、どっちつかずの『いい加減』と『中途半端』のせい。源田の弁である。だが、もちろん彼は、目的をひとつに絞ればいつも勝てるなどとは言わない。任務は『受令者の能力と識量に応じたものでなければならない』。真珠湾攻撃は無謀な一念を通そうとしたのではない。遂行しうる一事にのみ集中して計画したら成功したのだ。源田こそ真珠湾作戦の立案者だった。ゆえに尊敬され、自民党にも迎えられたのだろう。源田は『孫子』を引く。『善く戦う者とは勝ち易きに於いて勝つ者なり』
 目的を達成可能な1点に絞ったとき、はじめて勝ち易くなる。勝ち易いとは、初手をしくじっても、二の手、三の手も直ぐ繰り出せる状態をいう。真珠湾なら、第一次攻撃にもしもしくじれば、第二次、第三次とただちに追加攻撃を行える情況だ。目的はあくまでひとつ、その実現手段が幾つも担保されているのが、勝ち易いということである。
 はて、この夏の日本はどうだったろう?任務が多過ぎたのではないか。①人流を促さざるを得ない五輪はあくまで遂行。②人流の多寡(たか)に比例する傾向のある疫病罹患者はつとめて減らしたい。③人流の抑制すれば回らなくなる経済はなるたけ回したい。相矛盾の極致。第一航空艦隊司令長官、南雲忠一も顔を歪めるだろうミッションである。
 それに対し、実現手段の方は、ほとんどワクチン一本槍であったのではないか。ワクチンが間に合わぬとき、当てにした効果を得られぬときの備えがなさすぎた。いかにして医療態勢を拡充し、人々にお金を配るか。後手に回った夏であった。目的が多で手段が一。完全に倒錯(とうさく)していた。
 なぜこの国はミッドウェーやガダルカナルインパールを繰り返すのだろう?リメンバー・パールハーバー!」
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