🎷108:─3─日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか。~No.427 

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 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。
   ・   ・   {東山道美濃国・百姓の次男・栗山正博}・   
 バブル崩壊後、日本企業は、メディアや経済アナリスト、エコノミクスに騙され、高給の日本人正社員を雇い続ける事は経営を圧迫するリスクとして大リストラをおこなって、経費削減として低給の非正規・契約社員派遣社員に切り換え、若く有望な日本人青年を操り人形的な無能な人間に改造した。
 その結果、日本人の生産性は低下して、日本経済は衰退していった。
 つまり、日本企業は若者が主体的となって社運を賭けた一か八かの破壊的イノベーションを望んではいなかった。
 大学は、一流企業への就職率を高めて入学者数を増やす事を最優先とし、財界・企業が求める指示待ち人間を大量生産して卒業させる事で独自性を失い、世界における学力・研究力・競争力などの学業レベルを低下させ魅力を失った。
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 選択と集中とは、改良リノベーションであって破壊的イノベーションではあかった。
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 現代日本では、忠臣蔵の武士道的価値観は有害である。
 つまり、現代の日本人には武士道はない。
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 2023年12月6日 MicrosoftStartニュース プレジデントオンライン「日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか…半数以上が「どうでもいい仕事」に押しつぶされる残念な現実
 渋谷 和宏
 出所=『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』
 © PRESIDENT Online
 なぜ日本の会社員は「やる気」を失ったのか。経済ジャーナリストの渋谷和宏さんは「『どうでもいい仕事』が蔓延しているからだ。それは経営陣や上司の属人的な欠陥や無能ぶりに起因するのではなく、誤ったマネジメントに深く根差している」という――。
 ※本稿は、渋谷和宏『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。
 「どうでもいい仕事」に押しつぶされる会社
 初めに独自アンケートの結果を紹介しましょう。社員のやる気をくじくような「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」がどこまで日本企業にまん延しているのか、全国に住む20歳以上、49歳以下の会社員150人を対象にインターネットを使って調べた結果です。結論を言えば、「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」のまん延ぶりは想像以上でした。(図表1)
 まず「あなたの会社・職場には『無駄に思える仕事』『意味のない仕事』がありますか?」と質問したところ、「はい」と回答した人は79人で52.67%に達しました。過半数の会社員が「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」があると答えているのです。それらはどんな仕事なのでしょうか。「あなたの会社・職場には『無駄に思える仕事』『意味の無い仕事』がありますか?」という質問に「はい」と答えた人たちに複数回答で聞いたところ、以下の結果になりました。(図表2)
 「無駄な会議・打ち合わせ」 51人、64.56%
 「無意味な書類提出」 35人、44.30%
 「無意味な社内ルールの順守」 32人、40.51%
 「意義が不明な慣例となっている業務」 24人、30.38%
 「過剰な上司などへの報告」 23人、29.11%
 「煩雑な手続き」 22人、27.85%
 「直接関わりのない部署・役職への根回しや調整」 21人、26.58%
 「上司や経営陣による思い付きの指示」 20人、25.32%
 これらの項目を見て、「うちの会社にもあるな」と思い当たった読者は少なくないと思います。私自身、40年近い企業への取材経験を通して、上記のような事例を数多く見聞きしてきました。そもそも上記の無駄な仕事の内容は私がかつて取材した事例をもとにアンケートの選択肢として並べたものです。
 「会議の報告内容を検討する会議」も存在する
 「無駄な会議・打ち合わせ」で言えば、中堅の専門商社で部長を務める社員の証言を思い出します。彼は毎週、5件ほどの会議に出席し、そのほとんどがダラダラ続く無駄な報告会だと苦笑していたのです。彼は言いました。
 「なかには2時間近くかかる会議もあるんです。そこでは出席者各自が担当するプロジェクトの進捗(しんちょく)報告を行い、その場で質問や意見をやりとりするのですが、会議で決めることや相談・確認すべきことがあいまいで、いったい何のために開いているのか実はよくわかりません。おそらく担当役員が、所管するプロジェクトの進捗状況を知って安心したいだけなんだろうと思います。我々にとっては長時間会議が負担となり、本来の仕事に集中できなくさせてしまう非効率の根源でしかありません」
 大手出版社の営業担当者が「毎週、会議でどのように報告するかを検討するための会議を開いている」と打ち明けてくれたこともありました。冗談みたいな話ですが、検討会議を毎週開催する上司は大真面目で、数人の部下たちと時にダメ出しを交えながら会議での報告内容をすり合わせるのだそうです。
 費やされる時間は毎回およそ1時間だそうですから、仮に5人が参加すれば毎週5時間もの貴重な時間が奪われてしまう計算になります。それらの時間を本来の仕事に振り向ければ労働生産性は確実に上がるはずですが……。
 「無意味な社内ルール」に苦しめられる
 「無意味な書類提出」「無意味な社内ルールの順守」「意義が不明な慣例となっている業務」などの項目にぴんと来た読者もいらっしゃるでしょう。
 「毎日、営業日報を提出させられる。何のためなのかわからない」(機械部品メーカーの営業担当者)
 「研修を受けたらその都度、学びや気づきについて記したレポートを提出させられる。忙しいので、そんなことに割く時間が本当にもったいないと思う」(中堅流通業の若手社員)
 「管理部門が送りつけてくる『特集などの編集に使用した資料はいつまで保管しているのか』といったどうでもいいようなアンケートに毎週のように答えさせられ、肝心の雑誌編集に投入したい時間を奪われてしまう」(大手出版社の雑誌編集長)
 「訪問先への直行、訪問先からの直帰は禁止、いったん出社・帰社しなければならないルールですが、正直、意味がわからない」(中堅の専門商社の営業担当者)
 これらはすべて私の取材ノートからの抜粋です。
 アンケートでは「あなたは『無駄・無意味な仕事』をやらされていますか?」とも尋ねてみました。結果は「はい」が66人で44%でした。5人に2人以上が「無駄・無意味な仕事」をやらされていると考えているのです。しかも20代の若手会社員に限ってみると、56%と割合は高くなります。(図表3)
 無駄・無意味な仕事は発言力に乏しい若手社員に押し付けられがちであるという実情がわかります。
 1日の4分の1が「無駄な仕事」になっている
 さらに懸念されるのは、「無駄・無意味な仕事」に費やされる時間の長さです。「無駄・無意味な仕事」をやらされていると考える66人に、「あなたは『無駄・無意味な仕事』に、1日のうち何時間程度を費やさせられていると感じていますか?」と聞いたところ、回答は以下のとおりでした。(図表4)
 「1時間未満」 24人、36.36%
 「1時間以上、2時間未満」 31人、46.97%
 「2時間以上、3時間未満」 6人、9.09%
 「3時間以上、4時間未満」 1人、1.52%
 「4時間以上、5時間未満」 1人、1.52%
 「5時間以上」 1人、1.52%
 「わからない」 3.03%
 回答数が最も多かったのは「1時間以上、2時間未満」で31人、46.97%にのぼりました。1日に8時間働くとして、最大でその4分の1の仕事を「無駄・無意味」だと感じている社員が半数近くにのぼるのです。
 深刻なのはそれだけではありません。「無駄・無意味な仕事」をやらされていると考える66人に「今後この問題は改善されると思いますか?」と尋ねたところ、「思わない」が38人で、57.58%に達しました。6割近くがこれからも「無駄・無意味な仕事」をやらされ続けるだろうと回答したのです。(図表5)
 改善される兆しもなく、やる気を失う
 一方、「今後この問題は改善されると思いますか?」との質問に対して「はい」と答えた人は10人で、15.15%に過ぎませんでした。経営陣や上司は、社員が「無駄・無意味だ」と思っている仕事を、必要で意味がある仕事だと考えているのでしょうか。それとも「無駄・無意味だ」とは考えていても、「これまでやってきたから」などの理由で続けているのでしょうか。
 いずれにしても改善される予感を抱いている社員は少数派です。無駄で無意味な仕事のまん延がどれほど社員のやる気を失わせているのか、想像に難くありません。無駄で無意味な仕事は、つまるところ誰のためにもならない仕事です。
 本人の成長にも、会社の業績向上にもつながらず、顧客や消費者に利益をもたらすわけでもありません。やらされる社員にとっては苦役に等しい仕事であり、納得感のかけらも得られません。そんな仕事を前向きにこなせる社員はきっとどこにもいないでしょう。それどころか無駄で無意味な仕事を毎日毎日、1時間から2時間も押し付けられていたら、だれだって意欲を蝕まれ、やる気を失っていきます。
 「無意味な仕事」がまん延した根本原因
 加えて無駄で無意味な仕事は、本来やるべき仕事の能率を著しく下げ、成果を損ないます。成果が上がらなければ、人件費の削減を目的とする「成果主義賃金制度」によって、賃金を据え置かれるか、減らされてしまうでしょう。そうなればやる気はいっそうくじかれてしまいます。
 さらに言えば、無駄で無意味な仕事が常態化している会社や職場では、日々の仕事に幸福や楽しさを感じることもないでしょう。これもまた日本企業の活力を削ぎ、社員のやる気を失わせる一因になっています。
 ではなぜ社員のやる気をくじくような「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」がここまで日本企業にまん延してしまったのでしょうか。なぜかくも改善の兆しが見えないのでしょうか。この問いについても、結論を先に言いましょう。原因はマネジメントに問題があるからです。「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」のまん延は、経営陣や上司の属人的な欠陥や無能ぶりに起因するのではなく、誤ったマネジメントに深く根差しているのです。
 「マイクロマネジメント」の問題点
 では誤ったマネジメントとは何でしょうか。
 それは経営陣や上司が、社員に対してやることなすことに報告を求め、細かい指示を出す、過剰な社員管理です。マイクロマネジメントとも言います。大企業を中心に、多くの日本企業ではこれが組織的に行われているので、社員は些末な仕事の予定調和的な実行を指図され、行動を監視され、上司への確認や報告に忙殺されているのです。
 私の取材ノートにはマイクロマネジメントの事例もいくつか記されています。消費財メーカーに勤める30代の社員は、商品の販促イベントを企画・展開するプロジェクトに加わった際、プロジェクトリーダーがことあるごとに上司から報告を求められ、企画についてダメ出しされたり、「こうしろ」「ああしろ」と細かく指示されたりするのをはたで見ていて暗い気持ちになったと話してくれました。
 「プロジェクトリーダーは毎日のように部長に報告を求められ、会議室で1時間ほど部長との面談の時間を費やさせられていました。面談が終わるとプロジェクトリーダーは私たちを集めて、例えば『イベントを告知するチラシやポスターの文字色の赤みを少し強めろと言われた』などと部長の指示を伝達するんです。何のためのプロジェクトリーダーなのかわかりません。任せられないのなら、部長がすべて仕切ればいいと思うんですが、具体的な作業はあくまでプロジェクトリーダーにやらせるんですよね」
 「指示待ち族」を生んでしまう
 先ほど、「毎週、会議でどのように報告するかを検討するための会議を開いている」という大手出版社の事例を紹介しました。話をしてくれた営業担当者はさらに、地方へ出張する際には訪問先や目的、交渉内容などについて営業担当役員に報告し、追加の訪問先や交渉内容などについて指示を受けると教えてくれました。
 「子どものお使いのような話でしょう? でもそれで終わりではないんです。出張から戻ったら訪問先や交渉の内容、結果について営業担当役員に報告しなければならないんです。箸の上げ下ろしまで指示されていると仕事の流れが遅くなるだけでなく、仕事自体がだんだん嫌になってきますね」
 営業担当者が言うようにマイクロマネジメントは無駄で無意味な仕事を増やし、本来やるべき仕事の能率を下げ、社員のやる気を蝕んでいきます。マイクロマネジメントの弊害はそれだけではありません。社員の行動を監視し、箸の上げ下ろしにまで指示を出すような過剰な管理は、社員の自主性を損ない、受け身にしてしまいます。
 上司から細かく指示を出され、干渉されていると、部下はどうしても上司の顔色を窺いながら仕事をするようになります。それどころかやがて自分で考えることをやめて、上司の指示を待つようになってしまいます。自分たちからはアイデアを出さない、動こうとしない、言われたことしかやらない、やるべきことがわかっていても指示を待つ。そんな自主性、主体性を欠いた指示待ち族の誕生です。
 失敗はしないが成功もしない社員が増えるだけ
 加えて上司の指示通りに仕事をしていると、大きな失敗を避けられるかもしれませんが、成功体験も得られないので、成長の機会を奪われてしまいます。自主性、主体性を欠いた指示待ち族は、独創的な機能や魅力的なデザイン、効果的なブランディングを生み出す社員とは正反対の存在です。指示待ち族の増加は日本企業の国際競争力をさらに損なってしまうでしょう。
 この指摘に対して「経営陣や上司の指示が正しければ、指示待ち族でも独創的な機能や魅力的なデザイン、効果的なブランディングを打ち出せるのではないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。経営陣や上司は、管理のための管理で日々忙しく、常日ごろから顧客や消費者に接しているわけではありません。彼らが顧客や消費者に接していたのは昔の話です。彼らが知っている顧客や消費者のニーズは過去のものです。このため彼らの指示は、今の顧客や消費者のニーズとずれてしまいがちです。
 やる気と能力のある社員はそんな指示を出す経営陣や上司に反発するでしょう。しかし反発しているうちはまだましです。やがて反発する気力も薄れ、経営陣や上司の的外れな指示に唯々諾々と従い、当然の帰結として成果が上がらなくなってしまう。そんな事例は枚挙に暇がありません。

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 12月6日 MicrosoftStartニュース 文春オンライン「「社員のやる気はますます失われていった」“コストダウンがうまい人間”ばかりを重宝した日本企業の大失敗
 渋谷 和宏
 〈 「30年間賃金が上がっていないだけ」日本人がハワイの「1杯2000円のラーメン」に驚く“残念な理由” 〉から続く
 1997年の金融危機以降、コストダウンで実績をあげた人物ばかりを出世させた日本の大企業。しかし、それが招いた“思わぬ悪影響”とは……。経済ジャーナリストの渋谷和宏氏の新刊『 日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか 』(平凡社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編 を読む)
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 “コストカッター”経営者を重宝した企業の失敗とは……。写真はイメージ ©getty
 © 文春オンライン
 ◆ ◆ ◆ 
 金融危機以降増加した“コストカッター”経営者
 金融危機が起きた1997年、私は他の部署から『日経ビジネス』編集部に復帰し、「新社長登場」などいくつかの連載コラムのデスク業務を担当しました。
 「新社長登場」という連載は標題通り、就任したばかりの大企業の新社長に記者がインタビューして、社内で頭角を現したきっかけや、社長として重視する経営課題などについて紹介するコラムです。記事の書き直しを記者に指示したり、読みやすくするために赤字を入れたりするのがデスクとしての私の仕事でした。
 その時、強く感じたのは「思い切った人員削減や経費節減で頭角を現し、コストダウンを最優先の経営課題に掲げる新社長が増えたな」という印象でした。
 「新社長登場」は私が若手時代の1980年代にはすでにあるコラムでした。1980年代には多くの新社長が新規事業の立ち上げや新製品開発、海外市場の開拓で頭角を現し、優先課題として多角化を掲げていた記憶があったのです。
 そこで本稿を執筆するにあたり、私は新聞・雑誌記事データベースを検索して、「新社長登場」に登場した新社長のキャリアや掲げる課題を分析してみました。
 具体的には「コスト」「経費」「構造改革」「リストラ」「合理化」「削減」という語を含む「新社長登場」の記事を抽出して、思い切った人員削減や経費節減で頭角を現したり、コストダウンを最優先の経営課題に掲げたりした新社長の数を数えてみたのです。
 記憶に間違いはありませんでした。金融危機の前後から、大企業でコストカッターの経営者が増えている傾向が読み取れました。
 日本の電機産業が世界随一の競争力を持ち、バブル景気の最中でもあった1987年、当時、隔週刊(2週間に1回の発行)だった『日経ビジネス』では「新社長登場」のコラムで28人の新社長を紹介しました。
  その中で「コスト」という語を含む記事は電力会社の新社長を紹介した1本だけでした。「経費」「構造改革」「リストラ」「合理化」「削減」の語を含む記事は1本もありませんでした。「コスト」を含む記事にしても、「コスト意識の徹底が当面の課題としているが、『目先のことに一喜一憂する会社にしたくない』と言う」と、目先の利益を得るためにコスト削減に前のめりになってしまう経営を新社長が戒める文脈で用いられています。
 これが金融危機に見舞われた1997年になると様変わりします。週刊誌となった『日経ビジネス』はこの年、「新社長登場」のコラムで48人の新社長を紹介しました。
 同様に「コスト」「経費」「構造改革」「リストラ」「合理化」「削減」という語を含む「新社長登場」の記事を抽出し、人員削減や経費節減で頭角を現したり、コスト削減を優先課題に掲げたりする新社長の数を数えてみたところ、9人にのぼりました。業種は建設機械、重工業、工作機械、自動車、光学機器の各メーカーなど大手メーカーがほとんどです。
 みんなで大家さん
 何人か紹介してみましょう。
 1997年6月に就任した建設機械メーカーの新社長は、親会社の工場資材部に在籍した若手時代、「米国の大手メーカーが開発した製品の品質を落とさず生産コストを引き下げるコスト管理手法『バリューエンジニアリング』をいち早く導入し、他の工場の指導にも回り」ました。建設機械メーカーに移ってからは、「工場を閉鎖して、別工場に一本化するリストラの旗振り役を務め」、頭角を現しました。
 同年同月に就任した重工業メーカーの新社長も「社歴の大半を赤字部門の立て直しに費やし」ました。彼は「資材を安く調達するといった従来のコスト削減の方法では、過当競争による価格破壊に追いつかない。赤字を出しても給料が出るという甘えを断ち切り、会社の体質自体を改める」と抜本的なコスト削減を経営課題に掲げました。
 さらに自動車メーカーの新社長も「開発・生産体制から徹底的に見直し、コスト削減と小型車事業の拡大を狙う」と宣言しています。
 不況が深刻化していった1998年にはこうした傾向がさらに強まります。人員削減や経費節減で頭角を現したり、コストダウンを優先課題に掲げたりする新社長は、この年、「新社長登場」で紹介した50人中、10人にのぼります。業種も鉄鋼や素材などのメーカーから製薬、不動産、エアラインなどへと広がっていきました。
 こちらも何人か紹介してみましょう。
 1998年4月に就任した鉄鋼メーカーの新社長は「合理化の徹底」を最優先の経営課題に掲げました。1兆4000億円を超える有利子負債の圧縮などに手をつける時期が来たと見て、「期間損益を黒字にするためのコスト削減から、財務体質の強化のためのリストラに着手する」と宣言しています。
 同年6月、前経営陣による抜擢で就任した不動産会社の新社長は、1970年代半ばに千葉市内の住宅開発を担当したとき、家の各部をあらかじめ作り、それらを現場で組み合わせるユニット工法で建設コストを削り、社内で注目されました。「有効活用できない資産は、バランスシートから切り離す」とリストラを課題に掲げました。
 製薬会社の新社長は、「1993年に赤字の化成品部門に乗り込み、前任者が手を着けられなかった工場の人員を削減して、わずか1年半で黒字転換を果たした」ことで頭角を現しました。従業員数の削減を重要な経営課題だととらえ、「4700人の従業員を、3年後の2011年には4300人に減らす」目標を掲げました。 
 そしてやる気をなくす社員たち……
 もちろん放漫経営を改めるためのコストダウンは大切です。浪費を押し止めるのは経営陣の重要な仕事の一つでしょう。
 しかし経営者の役割は有用な支出まで抑えてひたすら節約し、お金を蓄えることではありません。お金を有効に使い、企業価値を高め、社員や株主などに報い、経済を活性化して社会を豊かにする――これこそが本来求められるべき経営でしょう。経営者はそのために短期的な利益のみならず、中長期的な観点から有用な投資と無駄な浪費をきちんと峻別しなければなりません。
 残念ながら、金融危機以降、少なからぬ大企業の経営者たちは教育・研修費や研究開発費、設備投資という有用どころか不可欠な支出まで削減してしまいました。コストダウンを自己目的化し、恒常的かつ長期化な経営目標に位置づけました。
 その結果、社員のやる気はますます失われていったのです。
 (渋谷 和宏/Webオリジナル(外部転載))
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