🎻85:─1─経済大国日本の東京がすごかった時代に始まっていた日本の衰退。~No.53 

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 2024年1月2日 YAHOO!JAPANニュース 東洋経済オンライン「「東京がすごかった時代」と既に始まっている衰退 富裕層のための再開発に哀愁が漂う
 人生のほぼすべてを東京で過ごし、50歳を前にして佐賀県唐津市に移住した著述家の中川淳一郎氏。本稿は同氏の著作『日本をダサくした「空気」 怒りと希望の日本人論』より一部抜粋・再構成のうえ、かつて輝いていた東京を振り返りつつ、憂うべき未来について展望します。
 【写真を見る】歌舞伎町シネシティ広場からのぞむ「東急歌舞伎町タワー」(正面)
■当時の東京を示す現象
 いったん地方に住んでみると、東京のすごさはよくわかる。何しろ、中央官庁はすべて揃い、かつて世界で絶大なる存在感を示した名だたる企業の本社が多数存在するのだ。
 一時期世界で圧倒的存在感を示した「経済」の面において、東京は1980年代前半~1990年代前半はニューヨークと並ぶ世界一の都市だったと言っていいだろう。
 1983年に「ビッグコミックスピリッツ」で連載が開始した漫画『美お味いしんぼ』の初期のストーリーを読むと、当時の東京の雰囲気が見えてくる。
 世界の名だたるレストランがこぞって東京に店舗を作り、そこに金持ち日本人が多数訪れる。そこに集う自称・食通はフォアグラがウマいだの「ここにあるもので一番高いものもってこい!」と言う。挙句の果てには「経済大国日本様様ですね」などと言う。
 マドンナやマイケル・ジャクソンが東京ドームでツアーをすれば、連日満席に。当時最強だったボクシングヘビー級のマイク・タイソンの防衛戦まで東京ドームで行われる。
 東京に行けばカネが稼げる、ということでイラン人が大挙して東京に住むようになった。「3K」と呼ばれる「きつい・汚い・危険」な仕事をやるためだ。1990年代前半は偽造テレフォンカードを売る者が現れたりもしたが、それはバブル崩壊の影響もあったことだろう。
 とにかく当時の東京は華やかで、大学生カップルがクリスマスにはフレンチやイタリアンの高級店で食事をし、そのままシティホテルに泊まり、アツい一夜を過ごすなんてこともやっていた。
 著名観光地にしても浅草、皇居、東京タワー、東京スカイツリーといった中核のものがありつつも、多くの駅とその周辺でさえ半日~1日は楽しめるような場所になっているのだ。谷中・根津・千駄木の「谷根千」、そこに上野を合わせれば十分な観光の一日を過ごせる。こんな都市は世界にもあまりない。
 唐津に引っ越してから初期の頃は月1回、2022年からは2カ月に1回、東京で「ABEMA Prime」という報道番組に出るようになった。当然毎度、東京のデカさと人の多さに驚くが、すごいのが駅ごとに見事なまでの特色を持っている点である。海外へ行くと、一つの巨大な街で行くべき場所がガイドブックで紹介されているが、東京は一つひとつの駅の中に行くべき場所がいくつも存在するのだ。
 JR中央線の駅を適当に降りたとしても活気に溢れ、駅前の繁華街は世界中の料理を食べることができる。東京を起点に東京ディズニーリゾート、横浜中華街、江の島、鎌倉、熱海、伊豆などへも良好なアクセスがある。
■人口約420万人を擁する多摩地区
 そして、「東京都下」と格下扱いされつつも、日本9位の福岡県(512万人)と10位の静岡県(約358万人)の間に入るのが、人口約420万人の多摩地区である。観光ガイド本『地球の歩き方』の「多摩地域」版が出た理由も納得できる。
 とにかく世界有数の大都市である東京は1960年代から輝き始め、そして1980年代に星の中でもっとも明るい一等星であるシリウスのごとく燦然と白く輝き、以後衰退を続けて赤き一等星の中の老星・ベテルギウスのようになったのである。
 そして、今も人を惹ひきつける都市ではあるが、正直この街の混雑度合、競争の激しさに精神をやられてしまった人はそこそこいるのではなかろうか。
 もちろん魅力的な都市ではあるが、世界における相対的な魅力でいえば年々そのランクを落としていることだろう。「衰退途上国」とも揶揄される日本において、東京は最後の希望なのかもしれないが、もうイケてる街ではない。ある程度の基盤をこの街で作った後はどこか別のところへ行く方がいいのでは、と50歳を目前にして考えるようになったのだ。
 そして、今、東京が新たな都市開発をしているのを見ると、どことなく哀愁を感じてしまう。
 2023年4月14日にオープンした東急歌舞伎町タワーは、地上225メートルの中に高級ホテル、ライブハウス、劇場が完備されたバブルっぽさと人間のプンプンとした欲望が凝縮されたような施設である。ここで日常的に遊べる人はわずかだろう。もちろん足を踏み入れるだけならばタダだし、海外オタクが好きそうなガチャポンをGETする程度ならばできるが。
■日本人は豊かではない
 もう、日本人は貧乏なのだ。2021年の東京五輪と2023年の野球の世界一決定戦・WBCの時期は、「海外の記者が日本のコンビニスイーツのレベルに感激!」的な記事がネットに多数登場。この手の記事がアクセスを稼ぐことを知った各メディアは、WBC後もJリーグの「スタジアムめし」を外国人が絶賛している様を紹介した。
 その中でも特に哀愁が漂ったのが、カツ丼が1500円(12ドル)であることにアメリカ人が「このクオリティで12ドルは安い!  MLS(米サッカーリーグ)だと37ドルはするぜ!」と書いた。
 この記事に対しては日本の食のおいしさを誇る人もいたが、「Yahoo! ニュース」のコメント欄を見ると「チケット代に加え、交通費もかけてスタジアムに行っているわけで、私には1500円のカツ丼なんて食べられません。事前に食事は済ませてきます」的な嘆きも多数書き込まれていたのだ。
 そして、「東洋経済オンライン」が4月11日に公開した『絶好調の「伊勢丹新宿店」を支える顧客たちの正体 22年度の売上高がバブルの最盛期越える公算』という記事も哀愁が漂う。記事はこのように始まる。
 〈三越伊勢丹ホールディングスが4月3日に発表した3月の売上高(速報値)によると、伊勢丹新宿本店の3月度売上高が前年同月比24.8%増を記録した。
 2022年4月以降は12カ月連続でコロナ禍前の2018年度を上回るペースで推移しており、2022年累計では1991年度の過去最高売上高(3000億円超)を上回る見込みだ。
 2021年度の国内百貨店売上高は4兆4183億円で、1991年度の9兆71
30億円から百貨店市場が大幅に縮小していること、インバウンド需要が本格的に戻ってきたのは今年に入ってからということを考えると、にわかには信じられない好業績である〉
 百貨店業界全体は低迷しているものの、伊勢丹新宿店という旗艦店が絶好調である理由について、記事では資産1億円以上5億円未満の「富裕層」と5億円以上の「超富裕層」が優良顧客となり、彼らへの手厚いサービスにより、好業績である様を報告する。
 かつて百貨店というものは「ちょっと贅ぜい沢たくな休日の家族のレジャー」で、最上階の大食堂で食事をとり、屋上の簡易遊園地で子供達が楽しむ様は「庶民にとってのささやかな贅沢」であったが、完全に富裕層しか行かない場所になるのだろう。
 島根県でも2024年1月14日をもって県内唯一の「一畑百貨店」はなくなる。私のいる佐賀県でも県庁所在地である佐賀市の「玉屋」が唯一の百貨店であり、2023年8月27日をもって7階の飲食店街が閉鎖された。
■富裕層とそうではない人
 それはそれで企業の戦略ではあるが、2000年代中盤まで普通の仕事人が家族に提供できた娯楽をこれからの仕事人は提供できなくなることを意味する。「親父は立派だったのにオレときたら……」なんて嘆く30~50代も出てくることだろう。
 そして、東京はイギリスのごとく階級社会となり、階級ごとに行く店が異なるようになるだろう。東急歌舞伎町タワーにしても、普通の人は華やかに着飾った金持ちが楽しそうにビルに吸い込まれている様を遠くから見るしかなくなる。実に哀愁漂う未来絵図ではないか。
 制服も含め、日本は「皆同じ」という空気感はあった。貧乏人でも節約し、カネを貯めれば高い店にも行くことはできた。しかし、階級ができてしまうと、空気として「入ってはいけない店」が誕生するのである。
 中川 淳一郎 :著述家、コメンテーター
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