💢95:─1─ロシアの侵略に勝った日本とウクライナは何が違うのか。~No.386No.387 

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 歴史的事実として、近代国家日本にとって敵はロシア、中国、朝鮮であった。
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2023-03-15
💢94:─1─何故、「日本は戦ってでも侵略から国を守らなければならない」と言ってはいけないのか。~No.384No.385 
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 2023年12月16日 YAHOO!JAPANニュース 現代ビジネス「ロシアに勝った「日本」と、「ウクライナ」はいったいなにが違うのか
 ロシア・ウクライナ戦争を日露戦争から見る
 写真提供: 現代ビジネス
 ウクライナをめぐる情勢が厳しい。夏から開始した反転攻勢が、目に見えた成果を出せなかった。すでに冬になり、戦局は膠着状態が固まっている。
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 頼りにしている欧米諸国のウクライナ支援の気運がしぼみがちになっている。特に誤算だったのは、アメリカの議会が、なかなか予算を通してくれないことだ。
 さらにガザ危機をめぐって、米国がイスラエルとともに国際世論で孤立している。世界の大多数の諸国はイスラエルに批判的であり、欧米諸国の「二重基準」に不信感を抱いている。ゼレンスキー大統領が親イスラエルの立場のイメージが強いことは、国際世論対策における不安材料だ。
 ロシア政府高官は、戦場で反転攻勢を退け、国際世論で欧米諸国が少数派に転落しているのを見て、優位に立ったかのような発言を始めている。あらためてウクライナの中立・非同盟・非武装を要求し、ロシアの領土併合を認めることも要請している。これらの条件をのんでしまったら、ウクライナ国内の世論の反発が激しくなることは必至だ。また、ロシアの再侵攻を防ぐ手段を放棄してしまったら、再侵攻の可能性も高める。簡単に停戦を語ることもできない。ウクライナとしては非常に苦しい状況である。
 筆者は、そもそも昨年のロシアの全面侵攻開始時から、「軍事評論家の見立ては、ウクライナの敗北は不可避、歴史家の見立ては、ロシアの敗北は不可避」といった言い方で、ロシア・ウクライナ戦争を見てきている。
 独立国家としてのアイデンティティを強固に持ったウクライナの人々を、プーチン大統領が完全に屈服させることはできないだろう。首都キーウ攻略を狙った当初の野心は、挫折が約束されていた。しかし、蓄積された軍事力と、資源や人口の規模などによる長期戦への対応能力を考えると、ウクライナがロシアを圧倒することは、非常に難しい。
 かつてロシアと単独で戦ってきた国で、それなりの成果を上げたのは、日露戦争時の日本だ。日本は、ちょうど18か月の戦いの後、有利な条件で講和条約を結んだ。
 いったい今のウクライナの対ロシア戦争と、当時の日本の対ロシア戦争では、何が異なり、違う結果が出ているのか。
 言うまでもなく、そもそもの前提となる所与の条件が違うため、簡単な比較はできない。仮に比較するとしても、所与の条件を無視して、どちらが優れている云々といった安易な結論は導き出すべきではない。
 だがそれでも、現状の評価を行うために、過去の類似の事例と比較することは、有益な場合がある。現在の戦争の特質を明らかにすることができるからである。
 戦争の行方を決するのは、もちろん戦場の動向だ。これまでもそうだったし、これからもそうだろう。したがって戦争の状況分析の中心になるのが、戦場の分析であることは、言うまでもない。しかし、戦場だけが全てか、と問えば、それは必ずしも、そうではない。
 日露戦争においては、日本海海戦における艦隊決戦主義に持ち込んだ日本が功を奏したことなどが、大きな意味を持った。しかし、長期戦になれば圧倒的に日本が不利である条件が、それによって変わったわけではない。そこで戦場以外の要素も、日論戦争では、大きな意味を持った。
 敵国に対する工作の不発
 第一に、敵国の国内情勢への働きかけの要素がある。長期戦になれば圧倒的に有利であることに間違いはなかったロシアが、日本優位の情勢での和平に応じた背景には、国内情勢の不穏があった。戦争の継続が、仮に戦場での動きについてだけ見れば合理性があったとしても、ロシア皇帝ニコライ2世の統治体制の継続という観点から見ると合理的ではなかったため、和平に応じた。
 日露戦争開始後のロシアでは、革命勢力が活発化し、血の日曜日事件戦艦ポチョムキン反乱事件などの騒乱が相次いだ。その背景に、スウェーデンに拠点を構えて、ロシア国内の様々な抵抗運動組織と連絡を取り、資金や銃火器を渡し、デモやストライキ、鉄道破壊工作などのサボタージュの展開を促進していた明石元二郎らの工作活動があったことは、有名である。明石らの活動は、ロシア国内の反政府活動を支援するだけでなく、満州におけるロシア将兵への檄文等を通じた戦意喪失の工作や、ロシア軍の後方攪乱活動などにも及んだ。明石の活動は、日本が外国において行った最大の諜報工作活動の成功例として知られる。
 翻って現在の様子を見ると、ウクライナは、ロシア国内での政治工作に失敗している。ロシアの全面侵攻当初こそ、ゼレンスキー大統領がロシア語でロシア人に語り掛けるなど、プーチン統治体制とロシア国民を切り分け、ロシア国民の反戦の気運を喚起する工作に関心を持っているように見えた。またロシア人の反政府武装組織の蜂起と、直接は関わらないと述べながら、連動性を保っていこうとする動きも見られた。いずれも現在は霧消している。これらのロシア国内の工作の失敗の明白化は、戦場での成果の停滞と、軌を一にしている。
 現在のウクライナ側の様子は、ミサイル攻撃で相手のどこそこの施設を破壊した云々といった突発的な成果に一喜一憂する余り、相手の政治情勢に影響を与える手段を考える、という視点を、むしろどんどん希薄化させている。プーチン体制の強固さに直面して、政治工作を諦めた結果であるようにも見えるし、ロシア政府の挑発的なプロパガンダに反応して、ロシア国民全体を悪魔化する方向にウクライナの世論が誘導されてしまったようにも見える。
 モスクワやその他のロシア国内での反政府的な動きの欠落だけではない。ロシアが占領している地域における反占領運動やサボタージュ、輸送能力の損傷を狙った破壊活動なども、全く見られない。せめて占領の政治的負荷が大きくなれば、プーチン政権に占領統治の合理性を疑わせる大きな材料になるが、それが全く見られない。
 さらにはロシアから欧米系の企業を撤退させる運動をすることに躍起になり、ロシアと欧州の経済を切り離させることに多大な関心を持っていることが観察できる反面、ロシア国内世論に影響を与えるための経済制裁の効果を向上させる方法を精緻にする議論を深めようとしているようには見えない。
 結局のところ、プーチン大統領に侵略を諦めさせるには、個々の戦場での細かな勝利だけでは不足していることは、自明である。長期戦に持ち込めば総合的に国力で上回るロシアが圧倒的に有利である。それは、当初から織り込み済みの事実である。ウクライナが戦争の行方を有利に運ぶためには、プーチン大統領に、戦争の継続が、自らの政治体制の継続に阻害的な要因になっている、ということを感じさせなければならない。そのためにはロシア国内の政治動向や、少なくとも占領地における政治動向に、モスクワから見て負荷を感じさせるものを作り出さなければならない。ウクライナ側は、これに失敗しただけでなく、もはや関心すら失っているように見える。
 普仏戦争の文脈で用いられた「目的はパリ、目標はフランス軍」という言葉がある。プロイセン軍が、最終的にパリを軍事的に制圧したため、相手の首都の制圧に目的を見定めた軍事作戦を奨励する思想として理解されている。
 念頭に置くべきなのは、個々の戦場の動きに気を取られすぎず、敵の中枢意思決定機能を見失ってはならない、という点でもあるだろう。ロシア・ウクライナ戦争の文脈で言えば、どれだけ個別の戦場での戦闘に勝利しても、プーチン大統領に戦争継続には合理性がない、と感じさせなければ、戦争は終わらない。仮にウクライナ軍がクリミアを含めて領土の全てを軍事的に奪還したとしても、なお戦争は終わらない。
 ウクライナは、欧米諸国の武器供与を懇願するあまり、戦場での具体的な装備品によって戦争の最終的な帰趨が決定される、という思想に拘泥しすぎているように見える。奪われた領土の奪還を至上命題にするあまり、領土を回復することができてもなお、戦争は終わらない、という視点を、軽視してしまっているように見える。
 ザルジニー総司令官が、反転攻勢の停滞を認めるインタビュー記事が公開され、大きな話題を呼んだ。そこでザルジニーが述べたのは、戦場でロシア兵の被害を高めれば、ロシア国内の反戦の気運に影響を与えることができるのではないか、という期待が、空振りに終わった、という観察だった。それはロシアが独裁体制だから、という理由で説明される事情だ。それはそうなのかもしれない。だがいずれにせよ、何らかの国内工作で、その状況を突破しないと、戦局を有利に進めることは、著しく難しい。占領地における政治工作ですら、成果がないことは、大きなポイントである。
 調停者の準備の不足
 第二に、第三者調停による戦争終結の道筋の準備である。日露戦争の場合、ロシアの膨張主義に警戒する他の海洋国家であるイギリスとアメリカが、日本に親和的だった。日本は、イギリスとは日英同盟を結び、明確に同盟国としての支援を依頼する体制を作った。アメリカには、形式的に第三国としての中立的立場を維持してもらいながら、望ましいタイミングで調停に入る役を、実態として期待した。その計算通りに、アメリカの調停で、ポーツマス講和条約が結ばれた。
 この時の調停者としてのアメリカの果たした役割が決定的であったことは、日本の政治外交関係者にとっては、自明であった。ただし陸軍部指導者は、アメリカの役割を認めることに否定的で、その後、満州の権益を始めとして、大陸での影響力を日本で独占することを画策する行動を繰り返した。そして米英の不信を買い、結果として太平洋戦争の惨禍を招いた。
 現在のロシア・ウクライナ戦争をめぐる構図で言うと、日露戦争時のアメリカに最も近い立場にあるのは、トルコだろう。それは穀物輸出合意の際に示された。ウクライナやロシアからの穀物の輸出に大きく依存して食糧需給を賄っている諸国がある。
 2022年7月に成立し、23年7月にロシアが離脱するまでの間、3,200万トンを超える穀物等の黒海沿岸部からの輸出に貢献した。この穀物合意の成立に、調停者としてのトルコは大きな役割を果たした。トルコは、単にウクライナとロシアの双方と一定の関係を維持し続けているだけではない。黒海の南側沿岸を独占する地域大国で、黒海の外海との唯一の接合点であるボスポラス海峡も管理する特別な位置づけを持っている。
 だが現在のウクライナが、トルコとの連携を重視して戦争の帰趨を管理しようとしている様子は見られない。現在のウクライナ外交は、EU加盟・NATO加盟を国家の達成目標にすえ、欧米諸国からの武器支援の質と量を上げることを最重要視して、動いている。もちろん支援国の体制を固めることが何よりも重要であることに疑いの余地はない。しかし、たとえば10月7日のハマスのテロ攻撃後に、感情的なまでのイスラエル支持を打ち出したゼレンスキー大統領の視界に、地中海世界の雄としてガザに多大な思い入れを持ち、一貫してイスラエルを強く非難し続けてきているトルコの立ち位置に対する配慮が働いていたようには見えなかった。
 ゼレンスキー大統領の振る舞いは、地中海世界の情勢であっても、全てをヨーロッパの民族史の観点からのみ理解してているように見えてしまうものだった。それは、広範な国際世論対策の面で、重大な意味を持っている。
 国際世論対策の不足
 この点は、第三の問題としてのウクライナの国際世論対策の姿勢にもつながる論点を含んでいる。日露戦争時の日本は、大国の南下政策に苛まれるアジアの新興国のイメージを徹底し、海洋国家群の支持のみならず、世界の非欧米世界の絶大な信奉を集めた。世界の大多数の人々が、日露戦争を、欧州の帝国主義に抗するアジアの新興国の苦闘、という図式で捉え、日本に好意的な視線を送った。国際世論への働きかけを有利に進めたことは、当時の日本に大きな道義的な力を与え、その権威の向上に役立った。
 ウクライナも、国連総会におけるロシア侵略非難決議(2022年3月・23年2月)で141カ国の賛同を集めるなど、国際世論への働きかけでは、おおむね上手くやってきてはいる。しかし実際には、総会決議の採択前には、決議文の内容をさらにいっそうロシアに厳しいものにしようとするウクライナと、賛同国の数を増やすことを重視する欧米の支援国の間で、ぎりぎりの折衝が繰り広げられたと言われる。
 主要なウクライナ支援国が孤立しているガザ危機をめぐる一連の決議では、ウクライナは一貫して棄権し続けてきて、イスラエルに配慮を見せている。しかしたとえば12月12日のガザ停戦要請決議には、国連加盟国の4分の3以上の151カ国が賛同している。わずか10カ国の反対票を投じた国々の中に、ウクライナ支援の筆頭国であるアメリカが入っている。本来は、イスラエルが占領国で、ガザが被占領地である。ウクライナ占領政策には反対してきた。それにもかかわらず、自国がロシアに侵略された後に、ウクライナが国際社会の大多数が同情しているガザに同情を見せていない、という印象を与えるのは、国際世論対策の観点からは、望ましくない。
 ウクライナ外交においては、本来は自国の安全と発展の手段でしかないはずのNATO加盟とEU加盟が、ほとんど自国目的化して絶対化されているように見える。この外交姿勢は、非欧米世界に対してウクライナが無関心だという印象につながる。
 ゼレンスキー大統領をはじめとするウクライナ政府高官の発言において、ロシアを悪魔化する描写に終始するものが、非常に目立ってきている。侵略対象とされた自国への同情を喚起する意図を持つ発言よりも、欧州を守るために戦う英雄としてウクライナを描写する意図を持つ発言が増えてきているように見える。この姿勢では、ロシアとの敵対関係を持たない非欧米世界の諸国の人々に、ウクライナから距離を取る心理を働かせる。また、欧米諸国の中においても、支援しても支援しても支援の不足の不満を説教調に聞かされる、といった印象を持つ人々を作り出してしまう。
 改善の道筋
 日露戦争時の日本の経験と比せば、ウクライナは、もう少し軍事的勝利至上主義を中和するべきであるように思われる。もっとロシア国内の勢力への工作に力を入れ、有利な調停へとつなげる和平プロセスを構想し、欧米偏重主義に陥らない国際世論対策を行っていくことにも力を注いでいくべきであるように思われる。
 もちろん戦場の流れを有利に進めるための軍事力の強化は、引き続き行っていくべきだし、軍事的成果を出すための工夫の余地も常に探っていくべきだ。だが軍事力の向上だけの方法でロシアを完全に圧倒して追い払い、再侵攻も継続的に防ぎ続ける、というシナリオを描くのは、必ずしも現実的ではない。
 過去1年半でのゼレンスキー大統領の風貌の変化が激しい。欧米諸国の支援疲れを批判的に参照する機会が増えてきているが、ゼレンスキー大統領自らが、戦争による拭い難い疲れの深さを見せてしまっている。最高指導者の仕事は、快活さを失わず、柔軟な姿勢で、大局的観点から政策を判断することだ。不安を覚える。
 篠田 英朗(東京外国語大学教授)
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 12月17日 MicrosoftStartニュース 現代ビジネス「ロシアがウクライナを攻撃し続けるシンプルな理由…プーチンが「本気で思い込んでいるこ
 © 〔PHOTO〕gettyimages
 なぜ戦争が起きるのか? 地理的条件は世界をどう動かしてきたのか?
 「そもそも」「なぜ」から根本的に問いなおす地政学の入門書『戦争の地政学』が重版を重ね、5刷のロングセラーになっている。
 地政学の視点から「戦争の構造」を深く読み解いてわかることとは?
 「プーチンの頭脳」の思想とは
 ロシアのウクライナ侵攻は、なぜ、いまだに続いているのだろうか。
この戦争において、ロシアのプーチン大統領に大きな影響を与えた人物として、アレクサンドル・ドゥーギンが注目された。
 「プーチンの頭脳」とも称されるドゥーギンの思想とは――。
 〈2022年のロシアのウクライナ侵攻後も、ドゥーギンによって代表される「ユーラシア主義」の思想の影響が取りざたされた。ドゥーギンは、過激なウクライナ併合主義者である。
 ユーラシア主義の思想によれば、ユーラシア大陸の中央部に、共通の文化的紐帯を持つ共同体が存在する。ユーラシア大陸の中央に、ロシアを中心とする広域政治共同体が存在する。
 この信念にしたがうと、中央アジア諸国やコーカサス地方の諸国のみならず、ウクライナのような東欧の旧ソ連圏の諸国は、ロシアを盟主とするユーラシア主義の運動に参加しなければならない。あるいは参加するのが本来の自然な姿だ、ということになる。〉(『戦争の地政学』より)
 ウクライナはロシアの一部であるべきだというプーチンの論文が話題になったこともあるが、その背景には何があるのだろうか。
 ロシアに罪深いことをしている?
 冷戦後、ロシアは「生存圏」を失った。だから、取り戻そうとしている。
 そうしたなかで、欧米諸国などがロシアの生存圏/勢力圏の回復を認めないのであれば、不当であるとプーチンやロシア人の多くが考えている。
 簡単にまとめるとこういうことだ。
 〈プーチンは、戦争の原因は欧米諸国側にある、と繰り返し述べている。
 確立された国際秩序に反した世界観を振り回し、その世界観を認めない諸国はロシアに罪深いことをしていると主張するのである。
 それは、確立された国際秩序を維持する側から見れば、身勝手なわがままでしかなく、認めるわけにはいかないものだ。〉(『戦争の地政学』より)
 ロシア・ウクライナ戦争は、これからどうなるのだろうか。
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 12月17日 MicrosoftStartニュースs 乗りものニュース「「ロシア軍が旧式戦車を引っ張り出した!」戦車の“消耗率”驚愕の実態明らかに でもウクライナは喜べない?
 斎藤雅道(ライター/編集者)
 ポンコツとは言い切れない旧式兵器
 2023年12月12日、ロイター通信が機密解除されたアメリカ情報機関の文書について報じました。これはウクライナ侵攻におけるロシア側の損害に関しての報告書で、ロシア軍の戦車は特殊軍事作戦開始時の3100両からすでに約2200両が失われているそうです。しかも、T-90、T-80または、T-72の近代改修型といった比較的新しい車両が失われています。
 【やはり、やられてる…】ウクライナで撃破または鹵獲された旧式戦車T-62(写真)
 撃破されたロシア戦車(画像:ウクライナ参謀本部)。
 © 乗りものニュース 提供
 そのため、新しい車両の生産が間に合わず、損失を埋めるべくロシア軍は、1970年代初頭に製造されたT-62戦車まで出したと報告されています。旧式を出さざるをえないほど、ロシア軍がひっ迫しているともいえます。
 しかしこのT-62戦車、古いことは確かですが、戦果は挙げているようです。特に2023年6月にウクライナ側の攻勢が始まってからは、有効に働いた可能性があります。
 T-62は、2023年からウクライナへ供与され始めたドイツ製の「レオパルト2」やイギリス製の「チャレンジャー2」といった新しい西側戦車を相手にするには力不足ではあります。さらに、歩兵が携行する対戦車ミサイル「ジャベリン」など対戦車兵器にも対策せねばならず、追加の装甲やスラットアーマー(金網のような装備)を装備しなければならず、鈍重な状態で走り回れならければなりません。
 しかし“守る側”であれば、戦力としては十分に活用ができます。斜面や丘、堤防を利用して砲塔以外を隠すことで車体を防御する「ハルダウン」などの戦法で“動く砲台”としているのです。攻める側が生身の人間ならば、重装甲で砲塔を持った車両がいるだけで脅威となります。
 また、現地の情報によると仰角を大きくし、りゅう弾を使用することで簡易的な自走式りゅう弾砲としての運用例もあることから、防戦には十分に機能する車両であると思われます。
 ウクライナの攻勢を持ちこたえ、2023年12月現在の戦線はこう着状態にありますが、ロシアの戦車生産拠点は攻撃を受けたわけではなく、生産能力は衰えていません。T-90増産に加え、T-80の再生産もスタートしています。さらに、ロシアの2024年度の国防費は7割増となるとみられており、西側兵器供与が一時期よりも滞り始めたウクライナにとっては依然として厳しい戦いが続く可能性が高いと予想されています。
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